やっぱり、餅は餅屋ですね~


 店内に入ると、お年寄りが増えていて、何故だか、さっきのおじいさんがカウンターに居た。


「いやー、琳ちゃん、すまんすまん。


 みさきさんたちが来て、今、琳ちゃん忙しいんなら、あんたが淹れてくれたんでいいとか言うから」


 すると、窓際のテーブルでさっきのおばあさんと話していたおばあさんが、チラとこちらを見ると、ひひひひ、と笑って言う。


「琳ちゃんが、いつもカウンターに座ってる男前と出て行ったって言うから、邪魔しちゃ悪いと思ってねえ」


 ……いや、余計な子どもたちもひっついて来てたんですが、と将生が思っている間に、琳は、おじいさんが淹れた珈琲を飲んでみていた。


「美味しいっ。

 どうやって淹れるんですかっ?」


 ……おい、店主、と思っていると、琳はおじいさんを手で示し、

喜三郎きさぶろうさんは昔、カフェをやってらしたんですよ。

 この辺りでは、まだ珍しかった頃から」

と言う。


 もう一口飲んでみて、うん、と笑顔で頷き、

「やっぱり、餅は餅屋ですね」

と笑う琳に、


 待て。

 お前は、なに屋だ……と思ったとき、


「雨宮さん、こんにち……」

とものすごい笑顔で佐久間がやってきた。


 こちらを見て挨拶を止める。


「なんで居るんですか、宝生さん」


「居ちゃ悪いのか。

 おい、雨宮。


 客だぞ。

 珈琲の飲めない佐久間が……」


 わーっ、と佐久間が慌てて口をふさごうとする。


「佐久間。

 林から死体を見つけてきたら、雨宮がお前の言うことをなんでも聞いて――」


「わかりましたっ。

 死体を見つけてくればいいんですねっ」

と叫ぶなり、佐久間は走って出て行ってしまった。


「――なんでも聞いて、好きな飲み物作ってくれるそうだぞ」


 あっという間に雑木林に消えていく佐久間を見ながら、


「あれ、なんか違う死体でも見つけてくるか。

 なかったら、新たな死体を作り出してきそうだな」

と呟く。


 ふう、やれやれ、とカウンターに腰を落ち着け、

「動いたら、喉渇いたな。

 雨宮、珈琲、アイスで」

と言うと、琳は、


「今、めっちゃ動いてるの、佐久間さんですよね~」

とガラス張りの店内から、林の方を振り返りながら言っていた。




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