第24話 心の整理
「あんたの役目はその言葉をハコワンに言ってあげれるようになる事さ。……任せたよ?」
「……そうだな。善処しよう」
ヨーダさんとはこ丸、私の事で何か言ってる? 聞き取りにくくなってきたような。
あれ? なんだか……眠く……
不意にその瞬間は訪れた。
ナイトとハーピーの姿が消える。
「う? これは……」
はこ丸が呻く。その様子はヨーダも気付いたが、その理由にも見当がつくのか両者に焦りや動揺は見られない。
「無茶の反動がきたようだね。……これで本当にお別れだよ」
「ああ。そうだな。ゆっくり休んでくれ」
同時にはこ丸の意識も消え部屋には静寂が訪れる。ハコワンの両手はヨーダの左手を握ったまま微動だにしない。
「本当に底の見えない子だよ。でも今はその才能にお礼を言わせておくれ。ありがとう、ハコワン」
ハコワンは深い眠りについていた。精神的な負荷が限界を迎えた為、身体の防衛機能が働いた結果だ。ハコワンの意識と魔力が干渉しないのでナイトとハーピーははこ丸の中に戻され、はこ丸も意識をハコワンの表層に維持する事が出来なくなった。
「ゆっくり休め、か。はこ丸らしいね」
そして静かになった部屋でヨーダは眠るハコワンを暖かい目で見守りながらも全身が砂へと変わりこの世界を旅立つ。
「願わくば……ハコワンの進む道に幸せの……光が……あらん……こと……を……」
(さようなら。ハコワン)
「これで……いいかな」
気が付いた私はナイトにも手伝ってもらい、家の裏手にヨーダさんのお墓をつくった。石と木を組み合わせただけの簡素なものだけどね。この下にヨーダさんが眠っている。
目覚めた時ヨーダさんはすでに全身が砂となっていて形を残していなかった。私はその砂をかき集めローブに包み、家の中で見つけた壷にそれを納めて地面に埋めたのだ。
「そしてこれを供えて、と」
墓前にギルドまんじゅうを置く。
「食べれなかったおまんじゅうですよ」
横にいるナイトが何かを言いたげに私を見ている……ような気がする。
「意地悪していると思う?」
「あ、いえ。そのようなつもりは……」
ナイトは慌てて否定しようとするが
「そうかもしれないね。だって……私のお土産話、聞いてもらう事出来なかったんだ……から。これからも……ずっと。う、うう……ヨーダさぁん」
「マスター……」
ナイトは泣きだした私を見てますます慌てる事になった。
「ごめんね。もう大丈夫」
家の中ではこ丸、ナイト、ハーピーに慰められた私は気を取り直し今後の計画をたてる事にする。
当面は家の整理と本棚の本を読んでいこうとは思うんだけどね。
(外部からの連絡があるまではそれで構わないと思う)
はこ丸も同意してくれた。外部というのは今の私にはギルドとの繋がりしかない。
「落ち着いたらギルドに……ハンソンさんにヨーダさんが亡くなった事を伝えないといけないね」
(そうだな……)
そうだ。疑問に思っていたのにすっかり忘れていた事があるのを思い出した。
(ねぇはこ丸。ヨーダさんは誰のせいでもないって言ってたんだけど)
(うん?)
(人が石になって短時間で風化して亡くなるなんてきいた事ないよ。でもヨーダさんは焦ってる様子とかはなかった。どういう事かあなたは知っているんじゃないの?)
あの状態には魔物とか、魔法とか、呪術とかそういうものが関わったのではないのかしら。
だとしたらこちらも薬や魔法であの石化は解除できたのではないかと思ってしまうのよね。
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