第25話 ヨーダの人生

「え……今なんて……」


 心当たりはある。だけど対処法はない。そう聞こえた。そして


(ヨーダは人としての限界を既に超えている)


 どういう事? 私の質問には質問で返される。


(ヨーダの年齢について聞きたい。何歳位だと思っていた?)


 え? 七十歳~八十歳位だと思ってたけど、もっと若かったのかしら?


(……四百は超えている)

「……はい?」


 それは衝撃の事実だった。ただの人がどうやったって四百年以上も生きられる訳がない。


(そうなった理由は恐らく私にある)


 はこ丸の説明によると、大半のアイテムボックスは契約者の生命力を食べる。それが自身の存在を維持する為だから。


 だが、異端であるはこ丸はそれが出来ない。彼は自分の中にいる魔物達の生命力を糧としており、さらにその余剰分の生命力は契約者に還元されるというのだ。


 魔物は種類にもよるが、人間より総じて長命な存在が多い。召喚調教師であるヨーダはその職業的特性からたくさんの魔物を連れていた。その為還元される多量の生命力の影響で、老化現象が普通の人間に比べて遥かに緩やかに行われる様になったらしい。


『不老不死の女』『叡智を極めた賢者』『人類最高の錬金術師』などと呼ばれおこぼれにあずかりたい人々に追い回されたり、『悪魔の化身』と不気味がられてやはり追い回されたりした事もあるんだって。そして身を隠すヨーダさん。うーん、これはどちらの気持ちもなんとなくわからなくもないような。


 だがこれらは全てヨーダと契約してから初めて判明していった事だとはこ丸は言った。


「じゃあ私も同じ様に?」

(それは正直情報が少なすぎてわからない。 だが、可能性としては……)


 十分ありえるって事ね。契約者がヨーダさんしかいないのなら、断言できないのは仕方ないわよね。


「じゃあヨーダさんの石化の原因も……」

(ああ。なんでこうなったかは分からない。だが、人としての理から外れてしまった以上、何が起きても受け入れる覚悟はあるとヨーダは言っていた。今だから言うが……予兆というか、症状はハコワンと出会う少し前からあったのだ)


 なるほど……それで後継者を探せる時間が残り少ない事を悟った、と。勿論育成する時間に関しては期待なんて持てなかっただろう。


「だからナイトやハーピーが協力的に動いて私に色々経験させてくれたのかぁ。二人も事情を知ってたんだね」


 私がそう言うと頭の中に響くはこ丸の声のトーンが下がった気がした。


(その……色々ショックだったり失望したりしないのか?)


 え? ……そう言われてみればそんな感情が自分に全然ない事に驚いた。


「ないよ。でも多分それは……みんなが私を大事にしてくれているのがたくさん伝わってきてたのと……」


 もうひとつは……


「私自身が物事をあまり深く考えないせいかな?」


 私は笑った。やるって決めたのは私なんだ。


「あ、そうだ。ヨーダさんってはこ丸と出会った時からお婆さんだったの?」

(いや、若かった。確か二十数歳だったはずだからな)

「えー! 見てみたかったー!」


 私ははこ丸からヨーダさんとの思い出話を聞かせて貰ったが、どうせならとナイトとハーピーも召喚する事に。


 二人も付き合ってくれて、その日も落ち込む事なく過ごす事が出来た。私はヨーダさんの想いも受け継いたんだ。本当だったらずっと孤独だったかもしれない。


 これからどんな未来が待っているかなんて分からないけどこれだけは確か。


 私はみんなと一緒に明日へと進みたい。


 これは余談だけど、ベッドの下にも隠してある部屋がある事をナイトから聞いた。明日以降に調査してみる事にしようかな。為になる本も探して読まないといけないしね。

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