第16話 レア度Aランクアイテム
「ええー!? なんで私がそんな目に会わなきゃいけないんですかぁ! 指輪の鑑定頼んだだけなのに横暴ですよぅ!」
「お、おいおいレーアちゃん。俺を放っておいてこんなちんちくりんを優先するとかおかしいだろ! ギルドのスター候補だよ、俺」
なにがスター候補よ。いっそそのまま本当の星になってしまえ。というかちんちくりん扱い。こんな単語聞いたの久しぶりだわ。
「大体お前はなんなんだ!」
「大体あなたはなんなんですかぁ!」
あ、二人の矛先がこっちに向いた。私がどう答えようか考え込むと私の背後から人の手が伸びてきて私を抱きしめる。
うおう。全く気配を感じなかったけどそれはシスリさんだった。
「私のお気に入りの子に難癖つけないでいただけます?」
シスリさんの横にはアルツさんもいる。そしてシスリさんからはお酒のにおいが。とはいえこの二人が来てくれたおかげで矛先を向けてきた方々は押し黙ったようだ。
「ねえ、リノちゃん。でいいのかしら? 気になったんだけど、さっき言っていた木の実、どんな名前とかだったかわかったりしない?」
「あ、はい。その後詳しい人から聞いた話では確か『ダルーンの実』じゃないかって教えられましたけど……」
「「「「ダルーンの実!」」」」
え? 何事? 私は周囲の反応に驚いた。
「ダ、ダルーンの実って確かレア度Aクラスの品目だったはずですよぉ」
「ウソだろ……俺も加工前の実物は見たことがないってのに。なんでこんなちんちくりんが……」
まだ言うか。しかしあの実ってそんなに価値あるのかしら?
「やっぱりかぁ。話を聞いてそうじゃないかとは思ったんだけどね」
「別に美味しくもなかったですし、身体はだるくなるわでいい事なかったですよ? 次に見た時には全体が枯れてましたし、そっちの方が驚きました」
「枯れた、か。間違いないな」
「ああ、なんともったいないー!」
さっきからなんなの一体。
「あの実から抽出されるダルーンのエキス、ダルーンの粉末っていうアイテムがね、冒険者の間では高値で取引されるのよ。効果はそれを取り込んだ対象を疲弊させるの」
「そうみたいですね。命に別状はないって言われて安心した記憶があります」
「普通に生活している人ならまず役に立つものではないんだけど、私達冒険者は強い魔物と戦う事もあるでしょ? その強敵を最初から疲弊させられれば勝率はグッとあがるって訳。噂ではドラゴンクラスにも効果があるとかでね」
「保険的な……補助アイテムとして需要がある」
なるほど……まぁ普通に考えて誰でも命は惜しいでしょうからね。シスリさんとアルツさんの説明は納得できる。
「でもぉ、実がなるのは百年に一度とか言われている上に、実がなった木はその後すぐ枯れてしまうらしいのでぇ、遭遇して実を入手するにはかなりの運が必要って言われているんですぅ」
「だから当然数も出回らないのよ。採集の依頼系では高難度に設定されているわ。ダルーンの木についても解明されていない点が多いの」
そんな中でもまだハナキンだけは色々と不満を言っていたけど(すでに難癖)、それを無視して話をしているとレーアさんが男の人を連れて戻ってきた。誰だろう。
「お、おいあれ……」
「え、なんでぇ」
私以外がざわついている中、その男性は受付カウンターを迂回して私の前まで来てこう言った。
「はじめまして。私はこのギルドのマスター、ハンソンです。いきなりで申し訳ありませんが、私の部屋でお話を伺わせていただいてもよろしいでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます