第17話 ギルドマスター、ハンソン

「まずは色々と不愉快な思いをさせた事をお詫びさせていただきます」


 私は冒険者ギルドのマスター、ハンソンさんの部屋にいた。


 ハンソンさんが私の前に来た直後、ポメラさんはレーアさんに言い渡された処遇への不満を訴えようとし、ハナキンは自分を売り込もうとアピールしようとしたのだけど……


「ポメラくん。君自身が何の罪にあたるかを分かっていて、その上で不満があると言うのなら、その時話を聞こうではないか。まずは自らの罪状を知りたまえ」


 と、一蹴し、ハナキンに対しては


「君は……すまん、誰だったかな? そうなのか。それは期待させてもらおう。もういいかね? 私は急いでいるのだが」


 まさに社交辞令。適当に返すのみで興味がなく相手にしていない感じがありありと出ていた。ざまぁみなさい。


 ハナキンは悔しそうに私を睨んだ後、無言で足音荒くギルドを出ていった。でもこれは私のせいにされても困るわよね? シスリさんとアルツさんは普通にギルドマスターに挨拶し、ギルドマスターもそれに応えていた。


 ただ、ギルドの責任者がわざわざ出向く事には驚きを隠せてはいなかったみたい。まぁ、私はシスリさんやポメラさんにも依頼者だと思われてたくらいだからね。


「それで、あなたがこのギルドへ来た経緯は……」


 ハンソンさんが丁寧に対応してくれるので、私はここまでの経緯をかいつまんで話す。


「そうでしたか。ヨーダさんも近くにいたのなら顔くらいみせてくれれば良かったのに全く」

「あはは。伝えておきます。……あれ?」


 私、ヨーダさんの名前出してないよね。 その部分はフォースという偽名で説明したはずだけど……


「あの……私その名前出しましたっけ?」

「え? ああ。私の方が思わず出してしまいましたか。ヨーダ氏の名前はギルドでトップの立場の者ならほとんどが存じ上げてますよ。功績多い方でしたからね」


 また違和感。


「でした……ですか?」

「前回お会いしたのはおそらく五、六年程前だったかと。その後は全くの音信不通になっていたんですよ」


(意思を継ぐ者を探そうとしていた時期だな)

(そ、そんなに探してたの!?)

(適性のある者が簡単に見つかる訳ないだろう。ギルドに期待させる訳にもいかないから当然何も言ってない)


 何も言わずに突然姿を消した形になってるのか。それもどうかと思うけど一言謝っておこう。


「あ、あはは……なんかすみません」

「いえ。リノさんも大変でしたね」

「私は宿を出て声をかけられてそれからいきなり三日ほど経過してましたから……? あ……ああーっ!」


 私は突然大声をあげて立ち上がる!


「ど、どうされました?」

(どうしたんだリノ!?)


 ハンソンさんとはこ丸が驚く。


「私……仕事探すつもりで宿を出てヨーダさんの家に連れていかれたからその間の宿代払ってない……」

(……)

「それは……下手すれば失踪扱いですね」


 仕事探しに出たまま三日間戻って来なければそうなるよね! 宿のご主人は事情知らない訳だし。


「ど……どうしましょう? いきなり料金踏み倒しで犯罪者とか嫌なんですけど」

(……なにかすまない)


 私は冷や汗をだらだら流す。はこ丸も動揺しているみたいで謝罪の言葉を口にしている。


「利用されている宿の名前はわかりますか?」

「え、えーっと確か日溜まり亭だったかと」


 ハンソンさんはレーアさんを呼び事情を説明してくれて、そのままレーアさんは出ていったんだけど……


「分かりました。血溜まり亭ですね?」

「ああ。血溜まり亭の方だ」


 このやり取りがすっごく気になった。

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