第15話 ギルド職員レーア
「ちょうど良かったぁ。鑑定士さんなら見てもらいたいものがあったんですよー。これ、彼にプレゼントされた指輪なんですけどぉ」
そう言ってポメラさんは指につけている指輪を見せる。
「価値によってはぁ、私がどのくらい彼に愛されてるかが分かるんでぇ。安物だったら別れちゃおうかなぁとかぁ……きゃっ!」
最低だ。鑑定なんてできないけどそれ以前に人としてどうなの?
って突っ込む前に別の場所からパーンという音とともに突っ込みが入った。
「いったぁーい。レーア先輩いきなり何するんですかぁ!」
ポメラさんが頭をおさえて涙目でレーアさんに文句を言う。そこには本を丸めて振り抜いた姿勢のレーアさんが。
「ポメラ。あなたここ何年目?」
「と、突然なんですかぁ?」
「いいから答えなさい」
「さ、三年目ですけどぉ」
レーアさんは深いため息をついた後ポメラさんに告げる。
「ポメラ、そこ私と代わって。こっちは数が多くて手間がかかる案件が後数件あるだけだからあなたでも出来るでしょ」
「え? ちょっ、そりゃないでしょレーアちゃーん!」
「すみません。ハナキン様が(私と話す時間を確保する為に)受注した大量の案件の処理よりも重要度の高い仕事が発生しましたので(むしろ貴方から解放されて助かります)」
レーアさんは文句を言うハナキン(クズと認定したので呼び捨て)をまるで相手にせず、無理矢理ポメラさんをどかして私の前に来た。
(流れが変わったな)
はこ丸が意味深な事を言う。
(どういう事?)
(ここからが本題になるぞ)
「受付の者が大変失礼をいたしました。ここからはこのレーアが担当させていただきます」
「あ、はい」
「ご確認させていただきたいのですが、ご職業は召喚調教師。お名前はリノ様でお間違いありませんか?」
あ、すごい。さっきまでがさっきまでだっただけにすごく手際がいい。
「はい。間違いないです」
「……そのご職業ですが……どなたからの推挙か教えていただいても?」
わ、なんだかこのレーアさんという人からすごい重圧を感じる。推挙?
(リノ。フォースの名前をだせ)
「え、あ、フォースです」
「え?」
あ、呼び捨てはまずかったかしら。咄嗟だったから思わずはこ丸の口調で言ってしまったわ。
「い、いえ、フォース様? その……フォースさんです」
(……リノは正統な後継者なのだが、今ので一気に胡散臭くなったな)
(し、仕方ないでしょ! 言いなれてないんだもの)
「……ふう」
私を値踏みするように見ていたレーアさんが息をひとつついた。だ、大丈夫だったのかしら?
「すみません。このまま少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「それは構いませんけど……」
「ありがとうございます」
そしてレーアさんは踵を返し……
「ポメラ。あなたはギルド職員規約の読み直し。特に特記事項の部分は百回読んで、その後反省文十枚提出ね」
と、言って叩くのに使った丸めた本を彼女に渡し部屋から足早に出ていった。
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