第14話 受付嬢ポメラ=ニアン

「え……冒険者として登録をされるんですかぁ?」

「はい」


 目の前の受付の女性は私を見て戸惑っているみたい。


「ま、まぁここは誰にでも平等に開かれていますしー、実はとっても強い方かも知れませんしねぇ」


 あ、仕事柄なのかすぐに動揺を隠して通常の業務に戻ろうとしている。さすがプロね。


(私にはまるで自分に言い聞かせているように見えるが……?)

(はこ丸は黙って)


 その先は考えないようにしてるんだから。


「ではまず……戦闘経験はおありですかぁ?」

「いいえ。全く」

「……じ、じゃあ何かすごい物を採取したり採集したりした事がおありなんですねぇ?」

「すごい物……子供の頃だれも登れない木の上になってる果実を私がとってみんなで食べた事があります。けど、その後私も食べたみんなも身体がすごくだるくなっちゃって……」


 あ、受付の人目が点になってる。……どうやら質問の意図が違ったみたいね。


(く……き、気にするな。『旅の恥はかき捨て』という言葉もある)

(へ、変なフォローはいらないわよ! それいい意味じゃないじゃない!)


 額のサークレット(はこ丸)が微妙に震えてる気がする。笑いたいのを我慢してるわね? と、考えた次の瞬間


「ぎゃはははっ」


 ええ!? はこ丸が堂々と笑い出した?

 のかと思ったのだけどそれは違った。


 笑い声は私の隣、シスリさんが言っていたハナキンとかいう冒険者が私の話を聞いて発したものだった。


「レ、レーアちゃん聞いた? 木に登って実を食べたらしいよ!? これはすごい冒険者がきたもんだ。は、はははっ!」

「ハナキン様は相変わらず失礼な方ですね」


 ムッとしたけどこのハナキンって奴に対応している職員さんが毒を吐いてくれているのを見て少し落ち着く。


「こりゃあ期待の新人さんだ。ポメラちゃん、しっかり説明しておいてね。下手にパーティ組まされて俺様の足を引っ張られるとかまじ勘弁だから」


 うわ! 本人目の前にして好き放題な物言い。 なんなのコイツ! さらに私をダシにしてまたレーアって職員さんにちょっかいをかけ始めた。はいクズ決定。


「じゃあハナキンさんは無視して話を続けますねー。大丈夫ですよぉ。ギルドは一度目の冒険で命を散らしちゃう人にも何度も死線をくぐり抜けベテランと呼ばれる人にも平等ですからぁ。決して変な人が来ちゃったなぁとか私思ってません」


(思ったってことね。しかも私は前者扱い)

(そうだな……)


 このポメラって人も何気にひどいわね。プロだなって思ったのに訂正。もうとっとと用件をすませてしまいたいわ。


「何も知らなくてすみません。召喚調教師(しょうかんテイマー)としてギルドで登録してくるようにと言われただけなので」

「え? ……しょう、かんてい、ま?? ですかぁ? 聞いたことないですけどぉ……小、鑑定魔かなぁ? ! ああ、つまり鑑定士さん見習いの方なんですねー? じゃあ戦闘経験がないのもおかしくないですよぉ」


 あ、あれ? 話が通じてない......?

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