第4話 ヨーダとはこ丸の関係
「アイテムボックスを......狩る存在......」
ちゃんと危険を排除する方法も用意はしていたのね。異端と異端の組み合わせか。......あれ? それってつまり?
「それが......あなたとヨーダさん?」
「正解だ」
「私に話し掛けたのは別のアイテムボックスと契約させてあなたとヨーダさんのような存在にするため......?」
「それは半分正解で半分不正解だ」
うん? 同じような存在にする気はないってことなのかしら?
「『別の』ではない。君には私自身と契約してもらうつもりなのだから」
「え、えええ!? そっち!?」
「? なにがそっちなのか意味がわからないが......」
「気にしないで。でも同じアイテムボックスは同時に複数の人間とは契約できないってきいてたけど違ったの?」
「いや、正解だ。その認識で正しい」
「じゃあなんでヨーダさんと契約しているあなたが......」
私のその問いに、はこ丸さん(容姿はヨーダ)は少し目を伏せる仕草を見せたが、私に向き直って言った。
「彼女......ヨーダは見ての通り老齢でね。引退の必要性を考えていたのだよ。引退すれば『箱』は別の者に引き継がれる」
「引退......?」
「そう。ヨーダはそう考えた時からあの路地裏で自分と同じ存在が現れるのをじっと待っていた。雨の日も風の日も、ただ無言で『その者』を待ち続けたのだ。……都の住人から変わり者呼ばわりされるようになっても同じ日々を繰り返した」
「そして私と出会った......」
「そうだ。ヨーダは運命だと言っていたがね」
それは運命? 偶然でも片付いてしまわない? だってアイテムボックスからすれば契約する相手が基本的に誰でもいいように、この人達からすれば『そうじゃなかった』人間なら誰でもいいって事になる訳でしょ?
「それは出会うのが私じゃなかった可能性だってあったはずで、別に誰でも良かったんじゃ......」
私はそれを口に出す。言うつもりはなかったのに思わず言ってしまったのだ。
「君は勘違いをしている。『箱を狩る者』は誰でもいい訳ではない。人間性は重要視するのだよ」
「え、そうなの?」
「ヨーダは君と話した後、君と出会えた事を喜んでいたよ。......君は私の中に居たから知らないだろうが」
「そ、そうなの?」
なんか最後の言い回しがひっかかって素直には喜べない。
「過去を紐解けば、その人間性により問題を起こされる事も少なくなかったものでね。ヨーダは君の事を優しく前向きで、好奇心の強い
そう言って私に見せる笑顔はヨーダさんの顔な訳で、直接言われているみたいで照れてしまう。このはこ丸さんからもヨーダさんを信頼している感じが伝わってきて私はなんだか胸が熱く
「私は少し単純すぎやしないかね? と言ったのだが」
「な、なんですって!?」
ちょっと感動しかけたのなし!
「ヨーダにはそれを単純ではなく素直なのさと訂正された。長年すごした故郷に失望して飛び出してきたにも関わらずそこの人達への恨み言は口にしなかった。これはまだ性格が歪んでいない証拠。私の胡散臭い話を聞いてくれた事。これは優しさと状況を前向きに変えようとする気持ちを好奇心が後押しした結果の表れ。すがるのではなく自発的に聞いてくれた点も芯の強さを感じさせる。と」
「ほ、ほぇー」
今度は私の口から変な声が出てしまった。だって普段自己分析なんてしないもの。自分ですら把握してないのに、そんな風に他人から見られてるって思ったら恥ずかしいじゃない!
「あの娘が成人したばかりだと言うならまだ十六歳。未熟な部分もあって当然。もし単純だと思うなら、そこはアンタが導いてやればいい。あの娘の決断次第だけど、私は期待できると思うけどね。......そうまで言われてはヨーダに何も言う事はできなかった」
「私の......決断......」
そして真剣な表情をしたヨーダさんが私をみつめ頭を下げた。意識ははこ丸というアイテムボックスなのでややこしいけど、これははこ丸さんの気持ちという事になるのだろう。
「どうか私と契約して彼女の立場を受け継いではもらえないだろうか」
強要ではない。ここまで説明してくれても、最後まで私の意思を尊重してくれている。私に向けられるヨーダさんとはこ丸さんの願い。そして私の存在意義もこれによりはっきりするのだろうか?
故郷の村の人達からはすでに向けられる事のなくなった感情に少し戸惑いながらも私は決断する。
「私......やってみます!」
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