第3話 はこ丸が語る真実
「アイテムボックスが......人を食べる!?」
ますます信じられない話を聞かされた。それもアイテムボックス自身から! ……まぁ、話してるのはどう見てもヨーダさんなんだけど。
「で、でもそれが事実なら問題になってない訳ないと思うし、誰も契約なんてしないよね?」
「奴等は『基本』人間そのものは食べない。喰うのはその人間の生命力だ」
「生命力?」
「そうだ。人がアイテムを出し入れする際、代償としてその人間の生命力を喰らっているのだよ。だから契約なんてものがある」
「あ......」
「だが人間にその事実は伝えられない。契約したからといって奴等と人間が話す事もない。人間は何も知らぬまま便利な道具感覚で奴等を利用し生命力を喰われ、その結果は寿命と言う形で表面化しその生涯を閉じる」
「寿命?」
「ああ。人間は寿命だから仕方ないと思っているようだが、荷物を大量に扱う人間や商人などは他者と比べて早死にしている者が多いはずだ」
言われてドキッとした。確かにそういう話は聞いたことがある。だがそこにアイテムボックスが原因などと持ち出される事は微塵もない。仕事の内容がきつくて過労が祟ったのだろうと結論付けされるか、不運の一言で片付けられるかだ。決して重大な問題として挙げられる事はない。
「これはあくまでも基本の話だ。ごく稀にではあるが人間そのものを貪るアイテムボックスも存在はする」
「ちょっ! 大問題じゃない!」
「そう。公になればな」
「どうして国は公表しないの? 危険じゃない!」
「できないのさ」
「どうして!」
「国に莫大な利益を産み出させているからだよ。アイテムボックスがね。すでに秘密裏に行われている国家事業さ」
「だ、だからって皆に内緒でそんな......」
あれ? アイテムボックスの狙いが人間の生命力なら、なんで私は契約できなかったんだろう? つまり誰でもいい訳でしょ?
「じゃあなんで私は契約できなかったの?」
それが気になったので聞いてみる。
「生命力の波長だよ」
「波長?」
「アイテムボックスにも嗜好があってね。ごく稀に奴等が毛嫌いする波長の生命力を持った人間が誕生するのさ」
「それが......私?」
「そうだ。......そしてヨーダもな」
「そうなんだ。......あれ? それってつまり......アイテムボックスから見て私とヨーダさんは不味いから契約してもらえなかったっていうのが正解なの!?」
「正解だ」
「なんなのそれ!」
なんだか別のショックが私を襲った。
「ちなみに人間とアイテムボックスの関係性を知っているこの国の王や重鎮などは当然契約などはしていない。そしてその事実を国民には伏せている」
「もしばれたら......?」
「各地で反乱が起きるきっかけになり下手をすれば国が滅びるだろう」
「......」
事は私が考えるよりずっと深刻なのかもしれない。
「でもそれじゃあ人間の弱味を握っているアイテムボックス達のやりたい放題になるはずじゃ......」
「ハコワン。君が他者から『異端』と見られたように、アイテムボックスの中にも異端と呼ばれる存在がいる。それがこの私だ」
「あなたがアイテムボックスの中での異端......?」
「最初に人間と手を組み、我々が隆盛するきっかけとなった存在を『エックス』と呼んでいるのだが、非常に知能が高い魔物だったと聞いている」
「魔物......」
人間と手を組む必要性を考える魔物って......
「そのエックスは人間と魔物との倒し倒される関係から、お互い『共生』できる関係を構築するべく奔走したが、いずれ人間側にもエックスと同族の魔物......つまり『我々側』にも共生するふりをしながら『寄生』する存在は必ず出てくるだろうと考えていた」
「寄生......人間の方にもその事を懸念する声は?」
「当然あった。そこで我々の異端と人間の異端を『組ませて』寄生に走る存在を人知れず『狩る』存在を誕生させた」
アイテムボックスにそんな歴史があったなんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます