第2話 ハコワン、はこ丸と出会う

「あの......何を言っているか意味が分からないんですけど?」

「やぁ、おまたせハコワン。それじゃ話の続きといこうか」

「いや、続きというか説明を......!? え、ここどこ!?」

「私の家さ。殺風景で何もない部屋だが勘弁しておくれ」


 いやいや殺風景以前に、なんで路地裏が家の中になってるの? 確かにヨーダさんが言うように、家の中にはベッドとテーブルと本棚がひとつとテーブルのそばにイスがふたつあるだけだけど。


「勘違いしているようだから教えておくけど、ここは路地裏じゃないよ」

「え? だって私は一歩も動いてな......あ! まさか転」

「ちなみに転移魔法でもない。私はそんな大魔法は使えないからね」


 転移魔法と言いかけたけど違ったようだ。


「じゃあここにはどうやって......」

「歩いてに決まってるじゃないか。......あそこからね」


 ヨーダさんが窓の外を見るので私も目でその目線を追う。ここから見る限りでも随分大きそうな街がある。


「あの街は......なんだか見覚えが......」

「何言ってるんだい。王都に決まってるじゃないか。ちゃんと城もあるだろう?」

「いや、決まってるって、え? あれ王都?」


 私の頭では理解できない事が立て続けに起こっている。こういう時は......静観だ!


「おや、急に静かになったね。まぁ驚くのも無理はない話だけど、ちゃんと説明してあげるからきいておくれ」


 ヨーダさんに対して私は頷く。


「まず私とハコワンが路地裏で出会ってから時間的に三日経過しているんだよ。で、その間ハコワンがどこに居たかと言うと......私のアイテムボックスの中さ。この中では時間が経過しないから、ハコワンの言動は移動する直前。つまり三日前のものだったって訳なんだよ」


 とんでもない説明をいきなりされた。アイテムボックスに人間を収納!? そんな話は見たことも聞いたこともない!


「色々聞きたい事もあるだろうけど、ここからは『はこ丸』に説明してもらうから質問は『彼』にするといい。はこ丸、頼んだよ」


 ヨーダさんはそう言ってゆっくり目を閉じて再び目を開く。


「やぁはじめまして。私はアイテムボックスの型番三六○。ヨーダからははこ丸と呼ばれているので君もそう呼んでくれて構わない」

「......はい?」


 ヨーダさんは私をからかっているの? 何? アイテムボックスが私と話しているってこと? 今?


「質問は後から受け付けるから今は私の話を聞いてほしい。君を騙そうとしたりからかっているのではないのは本当だ」

「と、とりあえず......分かったわ」

「まず最初に君の常識を覆させてもらう事になるが、アイテムボックスは道具ではない。意思を持つ立派な『生物』なんだ。君の知る言葉で言えば『魔物』そのものと認識してくれて構わない」

「ア、アイテムボックスが......魔物?」

「そう。そして生物である以上生命を維持する為のエネルギーは必要だ」

「まさか、中に入れたアイテムを食べちゃうとか?」


 そんな事されたら数が合わなくて大変じゃない! 価値のあるアイテム食べられたりしたらショック大きそう! ......あれ? でもそう言った話は聞いたことないよ? 普通問題になるよね?


「『奴等』はアイテムには手をつけない。なぜなら『喰う』のは人間だから」


 はこ丸......さんからはもっと大問題な発言が飛び出した!

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