その十二 猫
※ 本作は、「現代仮名遣い・常用漢字的字体」のものと、「歷史的假名遣ひ・康煕字典的字體」を用いたものと、二つのパターンを用意しここに併載した。双方をお比べになるもよし、どちらか、お好みの方をお読みになるもよし。
【現代仮名遣い・常用漢字的字体版】
今日はお昼からお天道さまはじくじくとくすぶって
まあ、あの方あの晩が初めてでいらしったの?
それがなんだか
だから用心せんと
だから
なあに? ああ、それは昔のこと……
もうすっかり忘れちまったわ。
生まれがどうだとか、山の手の――だとか、
ええ、ええ、そんなことは、これっぱかしも
なれの果てがこんな職業婦人じゃあね……
つまらないわ―― 今となっては、
ええ、それは仕方がないわ……
え? なんですって? またそのお話?
いやあね――
でも、そうなんですって。あの方そう
なんでもまだ世間の
それも――、ああ、
今夜みたように月が赤く
――あら、そうですの? 猫じゃあなくって?
いやあね。うそでしょう? なんだか余計に
まあ、そんなことを
え? どうか為すったの? それは、なにを為さっているの?……
<了>
【歷史的假名遣ひ・康煕字典的字體版】
けふはお
まあ、あの方あの晩が初めてゞいらしつたの?
それがなんだか
だから用心せんと
だから
なあに? あゝ、それは昔のこと……
もうすつかり忘れちまつたわ。
生まれがどうだとか、山の手の――だとか、
えゝ〳〵、そんなことは、これつぱかしも
なれの果てがこんな職業婦人ぢやあね……
つまらないわ―― 今となつては、
えゝ、それは仕方がないわ……
え? なんですつて? またそのお話?
いやあね――
でも、さうなんですつて。あの方さう
なんでもまだ
それも――、あゝ、
今夜みたやうに月が赤く
――あら、さうですの? 猫ぢやあなくつて?
いやあね。うそでせう? なんだか
まあ、そんなことを
え? どうか
<了>
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