三人妻ありて(その2)

夕暮れ時、安兵衛は根岸へ出向いた。

生垣に囲まれた、いかにも妾宅といった風情の一軒家の枝折り戸をくぐり、応対に出た若い下女に名を告げると、すぐに奥座敷に通された。

言われるまま下帯も取って丸裸になり、浴衣に着替えて白絹の布団に横になった。

しばらくすると、襷がけをした下女が、洗い桶を持って現れた。

下女は、桶の冷水に浸して固絞りした手拭いで、安兵衛のからだを足の指先から手の指先まで丁寧に拭った。

ここでは、それ以上のことはなく、薄暗くなった座敷の隅の雪洞に灯りを点けると、下女は立ち去った。

それから小半刻ほど寝て待つと、襖がするすると開き、赤い襦袢姿のうら若い女性が現れ、三つ指を突いてお辞儀をした。

年のころは二十歳をやや過ぎたようにも、三十やや手前のようにも見えた。

玄人か素人かといえば、いいところで大事に育てられた生娘のようにも、吉原の高級女郎のようにも見えた。

もっとも、商売一筋で堅く生きて来て、吉原や岡場所など花柳界にはとんと縁のない安兵衛には、どうにも見分けがつかないことだった。

女は、枕元で香を焚き、安兵衛を裸にしてうつ伏せに寝かせ、足からふくらはぎ、腿の裏から腰、背、肩にかけ、柔らかな掌で丹念に指圧を施していった。

安兵衛は枕を抱えて、うっとりと夢見心地になった。

「表になってくだいさいまし」

女に促されて仰向きになった安兵衛の股間のモノは、やや半立ちになっていた。

足元に屈んだ女は、安兵衛のつま先から太腿にかけて、触れるか触れないかのように舌先で舐め上げた。

屹立した股間のモノには目もくれずに、女は両の脇腹から脇の下へと舌の先を伸ばした。

股間にもどった女は、慈しむように両手でふぐりを捧げ持ち、舌の先で小皺の一本一本を舐め上げた。

やがて雄々しくそそり立ったモノに、感動すら覚えた安兵衛は、収まりをつけようとして女を抱き寄せた。

が、その手をかわした女は、安兵衛の股間のモノをおちょぼ口でするりと呑み込み、まるで羽毛に息を吐きかけるように、すぼめた唇をゆっくりと上下させる。

それで、これ以上ないほどさらに膨張した安兵衛のモノは、女の口の奥で空を打つことになった。

「頼む・・・」

耐えがたく苦しくなった安兵衛は、持ち上げた腰を女の唇に押しつけ、哀願した。

心得た女は帯を解いて前をはだけ、重ね餅となり、長く唇を吸ってから、安兵衛の腫れ上がったモノを、股間の蜜壺へと導いた。

たぎった蜜にからめとられた安兵衛は、一気に精を放とうと腰を突き上げるが、女はここでも腰を逃がして焦らしにかかる。

気持ちがよいのと、苦しいのを小半刻も繰り返し、精も根も尽き果てた安兵衛は、強姦でもするように女を組み敷いて腰を打ちつけ、眉根を寄せてむせび泣く女の蜜壺の奥深くに精を放った。

男と女の秘め事を、これほど延々と時間をかけ、かつ盛大にやったのは、安兵衛にとって初めてのことだった。

安兵衛は、難破した船のように女にしがみつき、心地よい疲れと幸せをいつまでも感じていた。

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