君は不思議そうな顔をしていた。

@mohoumono

第1話 君は不思議そうな顔をしていた

僕は、夏に一人でお墓参りに来ていた。

宿に帰ろうと思っていたら、

触覚が生えた、

全身が白い人型の生き物と出逢った。

僕は何故かその生物に話しかけてしまった。


「君は?」

その生物は、首を傾げながら何かを呟く

僕は、それを聞いても理解できなかった。

明らかにこの世の言語じゃなかったからだ。


「どこだ!」と男の怒声が聞こえる。

その声を聞いた生物は、触覚で僕を掴み

うるうるとした目を見せる。


僕は、その生物を抱え岩陰に隠れた。

怒声の男は山の方へと向かっていった。

僕は、それを見てひとまず安心した。

とりあえず家に帰ろう。


僕は一人暮らしだしかも持ち家なので、

変な生物を連れ込んでも

誰にも文句を言われない。


はぁなんでこんなことしたんだ、

途端に後悔が僕を襲う。

まあいいか、どうせ終わった人生だし

僕は開き直った。


とは言っても、こいつ何を食べるんだ?

取り敢えずりんごを渡してみた。

そいつは、首を傾げ、

色々な方向からそれを見る。

僕は、その生物からリンゴを奪い取り、

こうすんだよと言いながら齧る。


その生物は、

触手を蠢かせながらリンゴを要求する。

とても喜んでいるように見えた。

生物は、それを齧り目を大きく見開く。


「それな、美味しいっていうんだよ。」

「オ、いし、イ?」

辿々しかったが美味しいと聞こえた。

生物の目は、とても輝いていた。

僕は何故だけとても楽しかった。


その後も、

僕はその生物に色々なものを食べさせた。

そして、色々なものを見せた。

その度にその生物は、首を傾げていた。

そして、その生物と花火を見に来た。

とは言っても、バレたらまずいので

森の中からこっそりと見た。

パン、パンと花火が打ち上がる。

「君は不思議そうな顔をしている。」

僕は、いつもの決まり文句を生物にいう。


再度パン、パンと音が鳴る。

僕は、地面に仰向けに倒れる。

君は、僕を覗き込む。

「君は不思議そうな顔をしていた。」

はははとその顔を見て笑い、君の顔を触る。

君の白い顔は赤くなった。

突然体が宙に浮く。

僕は、信じられないことが起こり、

死を受け入れた。

そして君は、

「キミのカお、ヲイツも、

 わタ、シオイ、し、いトオもつ、た

 デもそ、んナ、カおハじ、めテミタ。」

「僕は、君のその顔が好きだ。」

君は、首を傾げた。





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