散る藤を

散る藤を上枝ほつえうれ高咲たかさけや仰見あふぎみすれどふさは見えずも



◇短歌



 樹下の道を辿る。

 喬木の枝葉覆ひて陽光を斷滅し、陰濕、乾氣を遮る。

 足下、甃砌の表を見れば、陰氣を貫きて紫光あり。

 蹲踞して檢閲するに、藤花の夥しく落下せる也。

 仰瞰して花房の埀下を探索すれど、樹枝鬱蒼として睛眸華影に屆かず。

 萬朶の生は認むること能はずして、落剝の屍にのみ僅かに渠の實存せるを推認す。

 然り。

 吾人の觀ずるは悉皆生に非ずして、惟に死而已矣。

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