詣日向阿波岐原江田宮詠謌一首幷短謌

日向ひむか阿波岐原あはぎはら江田えだみやまゐでゝ詠める謌一首あはせて短謌


雲居なる高天原たかまのはら

隨神かむながら神留かむづま

かけまくもあやにかしこ

神漏岐かむろぎみこともち

神漏美かむろみの詔を以て

伊邪那岐いざなぎ伊邪那美いざなみの神

御執みとらしのあめ沼矛ぬぼこ

埀下したゞりに島を凝らしめ

天降あもりまし國をし產ませ

言はまくもあなにゆゝしも

諸〻もろ〳〵の事しもありて

皇御祖すめみおや神伊邪那岐かむいざなぎ

大神おほかみ御杖みつゑ御嚢みふくろ

御冠みかゞふり御衣みけし御褌みはかま

御手纏みたまきを投げたま

中つ瀨にみそぎをせさせ

隨神かむながらはらへをせさせ

目と鼻ゆれましけむは

かしこしや兄弟皇神えおとすめかみ

古來いにしへつたへにけらし

たちばな阿波岐あはぎの原は

何處いづくとはは知らねども

こゝかとて人の言へるを

ぎ覓ぎて訪ねし行けば

神池かむいけみそぎの池は

叢雲むらくもの影しもりて

水面みなもはも空を敷くなす

さゝなみに映り耀かゞよ

科戸風しなとかぜさやに通ひて

かぐはしきもりをし行けば

あり立てる木木きゞ悉皆こと〴〵

莫莫くろ〴〵と枝もとをゝ

諸鳥もろとり上枝下枝ほつえしづえ

頻啼しきなきてこち〴〵渡り

諸花もろはな木木きゞ根方ねかた

頻咲しきさきて風にあよきて

賑賑にぎ〳〵いや榮ゆるを

目に耳に鼻に覺えて

大宮おほみや御前みまへをろが

うら〳〵と心うらぐる江田の宮はも


散る花をさくらかゞふりと共に笑まふも樂し江田の宮はも



◇長歌幷短歌




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