か黑の斑


あらたまの年の二日の參道まゐみち黃葉もみち敷かふにひたき


狛犬こまいぬの背に眞榊まさかきは落ちてしき落ち染めつかぐろかも



 ◇短歌




 正月二日、元日に鎭守より賜りし神札をもちて神棚、竈處くど悉く新たに祀れば、ふるき札は宮に納めむとて再びまゐいづ。

 敬禮きやうらい古札こさつの返還を濟ませ、正月なればべちなるやしろをもをろがまむ、昨日まゐいでしやしろとは別宮ことみや良からむとて行けば、銀杏の葉の道を覆ひてふつくに黃に、あしうらやはら也。を踏み行くに、尉鶲じようびたき寄來よりきたりて、火打ひうちの音もしく、前前さき〴〵めぐりてて行く。

 これなも吉事よごととて喜びい行きて、子の神の社に到る。本殿ならびに末社なる稻荷に禮拜らいはいし、更に別所ことゞころなる宮、第六天を祀れる社に向かふ。

 第六天は本朝の神に非ずて、天魔とも他化自在天ともしようせらゆる天竺の神にて、魔をもちて魔を制すべしとてかも神佛習合の信仰のうちに祀らゆると見ゆ。

 此宮このみや、猫の多き宮にあれど、今日は見ず。狛犬の脇に眞榊の大木あり。黑き枝もとをゝ數多あまた結びて、落つるも少なからず、狛犬の背にも頻落しきおちて、はだへをかぐろに染めたり。





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