長閑にもがもな

春の日の長閑のどにもがもな人草ひとくさいくさ地震なゐに花ならね散る



◇短歌



 戰禍まず。

 惡疫あくえき猖獗しやうけつも、早二歲はやふたとせを過ぐ。

 あまりさへ、近頃、大地震おほなゐ頻搖しきよる。幾人いくたりか失せにし人もありとぞ。

 起りは如月きさらぎ半ば、深更しんかう磐州邊ばんしうわたり一日ひとひきてこれ更闌かうたけたる奧州邊あうしうわたり

 辛卯かのとう如月の大地震おほなゐより十歲餘とゝせあまり其忌日そのきにちを過ぐるにはつ數日すじつ


 苦界くがいなる人とは沒交涉ぼつかうせうに、星辰せいしんの運行、天然のいとなみは、定まれるまゝ進陟しんちよくすめり。

 寒中、凍つべき日もことに多くありしかど、現下、漸〻やく〳〵梅も散りて櫻ふゝみけり。

 さるを、再び寒に戾れるが如く、雪積ゆきつ氷凝ひこゞれる所もありとや。


 白河院の、河水、骰子さいし法師ほふし不如意ふによいらせたまへりしかど、心の求むるまゝにえ行かぬ事ども、あに此三このみつに限るべしやは。

 數多眞砂あまたまさごなす、世に滿てり。


 



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