春彼岸詣三社於久里濱

八幡神社にて詠める


久里濱くりはま八幡やはたの宮のつきの木の賑〻にぎ〳〵宿る寄生ほよまりはも



天神社にて詠める


梅飛ぶや天滿宮そらみつみや大牛おほうしは目に見えね長閑のどしたゞ



住吉神社にて詠める


憂き世にも名妙なぐはしくもよ住吉の宮に花芽のふゝまくしも



◇短歌



 春彼岸、さいと共に久里濱くりはまおとなひて三社さんじやまうづ。

 すなはち、八幡はちまん天神てんじん住吉すみよし三宮さんぐう是也これなり


 づは、鐵道驛てつだうえき近く八幡神社。

 緣起えんぎは古く養老やうらう年閒ねんかん

  譽田別命ほむたわけのみことに、天照皇大御神あまてらすおほみかみ素戔嗚尊すさのをのみこと大物主大神おほものぬしのおほかみ大山祇大神おほやまつみのおほかみ菅家くわんけ合祀がふしせらる。

 豐太閤ほうたいかう北條ほうでうを攻むるに米三石こめさんごく寄進きしんしけり。のち歷代れきだい德川公方くばうこれならひ、武具など奉納ほうなふし三石の天領てんりやうしきとなむ。


 次に港へつゞける道を進み、天神社。

 萬治まんぢ三年の緣起也えんぎなり

 社史しやしいはく、内川新田開發うちかはしんでんかいはつみぎり砂村すなむら新左衞門しんざゑもんかね崇敬すうけいせる攝津せつゝ西成にしなり上福島かみふくしま村なる上之天神かみのてんじんより御分靈ごぶんれい勸請くわんじやうせりと。

 菅丞相くわんしようじやうの他、天照皇大御神ならびに素戔嗚尊まつらる。

 華表とりゐの下、大いなる騎牛きゞう天神の銅像あり。


 更にしばらく進みて港に到り、住吉神社。

 緣起は不詳ふしやうなれど、東鑑あづまかゞみ所載しよさい古社こしやにて、かつ栗濱明神くりはまみやうじんしようありとぞ。

 中筒男命なかつゝのをのみことに、金山毘古神かなやまびこのかみ、天照皇大御神、表筒之男命うはつゝのをのみこと、素戔嗚尊をあはまつれり。

 三浦一族の尊崇そんすう厚きのみならず、文治ぶんぢ元年ぐわんねん正月、源二位げんにゐ御臺所みだいどころともな參詣さんけいせしよしつたはる。





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