鎭魂

奉斃於戰陣之兵鎭魂謌いくさにたふれしつはものにたてまつれるたましづめのうた一首幷短謌いつしゆあはせてたんか


蜻蛉島あきづしま 豐葦原とよあしはらの 中國なかつくに 瑞穗八洲みづほやしまは 八千戈やちほこの 神の御世みよより 隨神かむながら 言擧ことあげせぬ國 しかれども 言擧ことあげそ吾がする

わくらばに いくさ無き代の 八十年やそとせを すぐせりしかど 國外とつくには 常にもさやぐ 往昔いにしへの 祖先みおやしか

御佩刀みはかしを つるぎ手挾たばさみ 御執みとらしを 檀弓執持まゆみとりもち 靫懸ゆきかけて 高鞆たかとも手纏たまき 大伴おほともの 言立ことだてごと 海行かば 水漬みづかばね 山行かば 草生くさむかばね かへりみは せじとちかひて 祖國みくにの しこ御盾みたてと 堅磐かたしはの 心も固く 大船おほぶねに 眞楫繁貫まかじゝゞぬき 鯨魚取いさなとり 荒海あるみわたり を山を 徒歩かち又馬に き征きて あたにしはゞ 五百虎いほとらの 咆哮たけびたけぶ 霹靂かむとけの 千五百ちいほか落つる 海原うなはらは 悉動こと〴〵ゝよみみ 天地あめつちは ふつくあよき ともがらも あたいくさも 劔柄握たかみとり 矛弄ほこゆ矢刺やさし おのがじゝ 伐ちて伐たえて 諸共もろともに たふたふれて 水底みなそこに 沈む身體むくろは 八十蟹やそがにの 群がり穿うかち に山に ゆる身體むくろは 軍馬いくさうま 蹴散くゑはららかす あづきなき すさびのきはみ 戰亂たゝかひは くこそありしか

今の代の 人こそ知らね 言喧ことさへく 外國人とつくにびとも 往昔いにしへの 祖先みおやうべな 兵器つはものを 手にたまふ 武人ものゝふは 固くおぼさく 父母と 妻子めこるべし ちてし止まむと


わくらばにいくさひてたふれてし益荒武男ますらたけをへばかしこ



◇長歌幷短歌



 太平の逸民たる吾が乞ひまく

 祖靈みおや敵靈あたも或るはたふれてし烏克蘭人うくらいなびと魯西亞人をろしやびとやすいませと



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