私の通り名をお忘れ?婚約者破棄なんて死にたいの?

naturalsoft

第1話

なんだろう?これは?

今は王族主催のパーティーの真っ最中である。

私こと、シオン・マーダーは婚約者であるカイン王子に婚約破棄を突き付けられていた。


「お前は俺の婚約者の立場を利用して、このマリアに嫌がらせをしただろう!そんな醜い心の持ち主を国母たる王妃にすることはできない!」

「カイン様、私怖かったです………シクシク」


ポカーン!


あら、嫌だわ。私(わたくし)とした事が、余りの出来事に呆れてしまいましたわ。

まったく何をおっしゃっているのかわかりませんわね?


「失礼ながら、そこにいるマリアさん?でしたか?初対面なのですが?それと、嫌がらせとはなんの事でしょうか?」


シオンの言葉にカイン王子は怒りだした。


「ふざけるな!貴様がマリアに悪質な嫌がらせを行っていた事はマリアから聞いている!初対面などと嘘を付くな!」

「はぁ~だから嫌がらせとは何をされたのですか?」


シオンの落ち着いた様子に、イラつきながらカイン王子は言った。


「貴様がマリアの教科書を破いたり、物を隠したりした事だ!」

「クスッ……なんですかそれは?カイン王子も冗談を言われるのですね。少し好感度が上がりましたよ」


まぁ、底辺からですがね?


「なっ─貴様!ふざけているのか!?」


地団駄を踏みながら怒り狂う王子にシオンは静かに言った。


「いいえ、それより昔から思慮に疎い所がありましたが、いつからそこまでバカになったのでしょうか?」

「バカだと!貴様、王子である私に向かって─」


「黙りなさい」


王子が言いきる前にシオンは静かに、威圧感ある声で響き渡るように言った。


「この王族主催のパーティーで婚約破棄など醜聞を見せつけるかのような愚かな振る舞いは、バカとしか言いようがありません。そして、私が1番嫌いな事を知らない訳ではないでしょう?それとも本当に忘れているのかしら?」


ゴクリッと誰がか喉を鳴らす音が聞こえた。


「そ、それは…………」

「思い出したようですね。そう礼儀を重んじる事をモットーに、相手を軽んじる者が1番嫌いなのです。礼儀で始まり礼儀で終わる。当たり前の事ですわよね?」


カイン王子は何かを思い出したのか冷や汗を出し始めた。


「このような場所で、多少の粗相は見逃しますが、看破できないほどの失態を犯した者を許す訳には参りません」


シオンは静かにカイン王子に近付いて行った。

そこに、状況を理解していないマリアと言う少女も前に出てきた。


「シオン様!私はただ貴女に謝って欲しいだけなんです!」


マリアの言葉を無視してシオンはゆっくりと歩みを止めなかった。


「まず、私は貴女に発言の許可を出しておりません。私は公爵家、あなたはどこの家の者ですか?」

「酷い!私が男爵家の者だからってバカにするのですね!」


シオンは軽く目を瞑り何かを考えるようにしてから発言した。


「まず、下位の家の者が上の位(くらい)の者に自分から話し掛けてはいけないと言う常識を知らないのかしら?私は下位の家の者でも、礼には礼を持って対応するわ」


「またそうやって私をバカにするのね!」


シオンはふぅ~とため息を付いた。


「会話が成立しないのね。もういいわ。貴女は準王族である公爵家を貶めて侮辱した。再三に渡る警告も無視をした。本当にもういいわ………」

「お、おい!落ち着けシオン!?」


カイン王子が震えながら言った。


「これで侮辱罪が成立したわ。証人はここにいる皆様よ。そして、その罪は極刑にあたいします」

「な、なによ!貴女にそんなこと決めれる訳ないでしょう!」


流石のマリアも怯え初めていた。


「マリアさん、最後に言っておくわ。私は下らない子供の嫌がらせなんてしないわ」

「そ、そんなの嘘よ!現に私は貴女に嫌がらせ─」


マリアは最後まで言えなかった。それは─


「だって、そんな事をするまでもなく、気に入らなければ殺すもの♪」


シオンはいつの間にか魔力で作り出した剣で、マリアの腕を飛ばしていた。


一拍子置いて─


「うぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」



腕から血が吹き出し、痛みにマリアは床に転がった。


「ひぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!」


カイン王子は腰を抜かしその場で尻餅を着いた。そしてシオンはマリアを足で押さえていった。


「わかったかしら?私が手を出せば嫌がらせではすまないということが?」


マリアは声を出せずヒーヒーと呻いている。


「いい加減目障りよ。消えなさい?」


シオンは迷いなくマリアの首をハネた。吹き出した血がシオンを赤く染めた。


「ひ、人をころ………ころし………た?」


カイン王子は状況を理解できなく呆然としていた。


「何を呆けているのかしら?次は貴方の番よ?」

「えっ!?」


シオンは剣を持ってカイン王子の元へ歩いて行った。


「この私をくだらない罪で吊し上げた御礼をしないとね……」

「うわぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」


カイン王子は腰を抜かしながらも、全力で逃げて行った。


「ふっ、流石の私も王族は勝手には殺せないわ」


シオンは魔力で作った剣を消すと、後はよろしくと大混乱しているパーティー会場を後にするのだった。



あの虐殺のパーティーから数日後─


「シオンよ。嫌な役目を負わせてすまなかったな」


国王がシオンに頭を下げていた。


「いいえ、とても楽しかったですわ♪」

「そ、そうであったか………」


さて、ネタを明かすとあのマリアは王妃の座を狙って隣国の支援を受けて、カイン王子を色気で落とそうとしたみたいだが、その企みは筒抜けだったのだ。そして、あの場にいた他の国の諜報員や他国に通じている裏切り者への警告であった。


あの王族主催のパーティーは元々、そういう関係者ばかり集められたのだ。まぁ、疑わしいだけで無関係の者も居たのだが。


そして私は公爵令嬢であるが、この国の騎士であり軍人である。隣国との戦争では赤いドレスアーマーを着て戦う事から虐殺姫(マーダープリンセス)の通り名で呼ばれていた。


だからこそ、頭の悪いカイン王子を逆に利用したのだ。国王には他にも王子がいるのでカイン王子が居なくなっても問題ないのだ。問題ばかり起こし過ぎて見放されていたのもある。

いい加減、私も婚約破棄したいと思っていたので国王様の案に乗ったのだ。


「これで我が国にちょっかいを出す国が減ればいいですね」

「まったくだ。肥沃な大地と高品質な鉱石が採れる我が国はいつも他国に狙われる。どこかの『婚約者のいない』ステキな令嬢が、ワシの第一王子である『王太子』と婚約してくれるとありがたいのだがな?」


チラッと王様が私に視線を投げてきます。

どうやら私の平穏はしばらくは訪れなさそうです。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

※カイン王子は第4王子です。バカ過ぎて自分が王になると思い込んでいたバカでした。シオンが婚約者となり、まともな王子になるように期待していたのですが無理でした。




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