第125話 何とかなった! たぶん!
着弾と同時に結界を張って爆風や叩きつけるような礫を防いだリカルドは、その噴き出た白い炎にギョッとし時を止めた。
(こんな場所で火?!)
あの双子(一瞬聞こえた声で断定)なにやってくれてんだ!?と焦るリカルド。
一般的に洞窟内などの換気が悪いところで火を焚かないのは常識である。一酸化炭素または二酸化炭素が溜まって、中毒になりかねないので。
但しそれは普通に火を起こした場合の話だ。魔力等の物質に頼らない火の場合には、酸素が消費されないので当てはまらない。
ではこの白い炎はどうなのかというと、普通の燃焼では中々お目に掛かる事がない色をしているので、まぁそういう事である。
(——あ。いや、そうか。違うわ。平気だこれ)
リカルドも途中で気づき、ストンと冷静になった。
冷静になると無駄に焦った自分がちょっと恥ずかしい。誤魔化し紛れに、まったく何だよ白い炎って厨二病な……凄かったりするの?何度なの?そんな大した事ないでしょと茶化すように調べてみたりして、六千度と返ってきて吹いた。
(六千!?)
一酸化炭素とか二酸化窒素とか気にしている場合ではなかった。
慌てて魔法障壁と物理結界で炎をまるっと封じ込めたリカルド。
だが既に放出された熱エネルギーは周囲の温度を上げており、結界内を除く周囲の温度は人が耐えられるそれを超えていた。
(これ、下手したら温度下げた途端に熱膨張からの崩落とかもあり得るんじゃ……)
地面がちょっと溶けているのを見てリカルドは内心冷や汗を垂らし、こういう場合どうしたらいいの!?と
結果、幾つか返ってきた手法の中から一番被害の少なそうな地盤を支えながらの冷却方法を選び、
〝ねえ、これお兄さんでしょ?〟
〝何で止めるの?〟
聞こえない筈の声に固まった。
そして次の瞬間、魔法障壁と物理結界が軋み白い炎に喰い破られた。
「っ!?」
咄嗟の事とはいえ、手を抜いたつもりはリカルドには無い。
何より、止まった時の中で何故動けるのか。動けない筈ではなかったのか。そんな疑問が頭を占め、目の前の現象を理解する事が出来なかった。
〝
〝あとちょっとでこの壁蹴破れそうだからさ〟
〝そうそう、このままだと時間掛かっちゃう〟
続けて軽い調子で話す双子の声に――というかその内容に、
「それダメ! ストップ! ちょっと待って!」
反射的に叫んで、すぐに下を確認。予想通りの結果に
お察しの通り、
お前精霊の居場所調べたんじゃなかったの?と問われたら、座標でしか位置確認してなかったんです!里の地下空間複雑過ぎて!と弁明していたであろうリカルド。
だが今は細かい事を考える余裕もない。
蠢く大地の精霊は酒作りを邪魔したら敵対する。
それがこんな誰がどう見たって喧嘩売りに行くスタイルで邪魔したらキレるだろうと思われ、先程とは違う意味でリカルドは頭が
〝なんで?〟
〝
「後で話しましょう! 後で! ちゃんと話すので!」
何をどう話すかも決めていないが、返答を待たずに見えない双子の位置(白い炎が噴き出るクレーターの底だった)を確認して、全力の魔法障壁と物理結界、破邪結界——は効果対象が違うと空間魔法を応用して障壁&結界ごと周囲の空間から切り離し、念のため可燃性のものが周りにない環境へと飛ばした。
その間、実時間でコンマ数秒。
すぐさまケイオスのところへと転移したリカルドが目にしたのは、ケイオスと
(…………)
身構えるようにして乗り込んだものの、状況が飲み込めなくて転移した姿勢のまま止まるリカルド。
ちなみに精霊は人間サイズのミミズのような形(ゲル状)で、下部を折り畳んで正座っぽくしており、止まった時の中で一匹(?)だけ上部を小さく左右に揺らしている。
(…………え、と?)
激怒している。という光景には見えず、そして酒作りをしているような光景にも見えない。
酒が仕込まれていそうな樽っぽいものは全て壁際に並べられており、彼らはバスケットコート程度の平坦な空間の真ん中に居る。
見直してみても、どういう状況?と意味がわからず
(ケイオスさん何してんの?!)
何をしていたのかというと、ケイオスは
『どれほど作っても望む酒は出来ないのではないか?』と。
てっきり一緒に酒を作っているものだと思っていたリカルドは、まさかそんな精霊を怒らせかねない事をしているとは夢にも思わず、なんでそんな展開に?!と続けて調べ、あー……と理解した。
ざっくり言うと、ケイオスの性格と以前リカルドが見せた映像作品の知識が合わさりそうなった。という事なのだが、経緯は次の通りだ。
ケイオスはリカルドに送られてすぐ、そこに行方不明と言われている筈の
が、
自分に対して興味が薄いと感じたケイオスだったが、それならそれでと
しかし
この返答にケイオスは、精霊の要請ならば人は受け入れるべきなのか……?と暫し悩み、いやしかし、このように多くの者が困る形は良いとは言い難いのではないか、それに彼らがやろうとしている事は神酒を作る者として在り様がずれているのではないかと考え『どれほど作ろうとも望む神酒が完成する事はないのではないか?』と、下手すれば神経を逆撫でしそうな事を言ったのだ。
その結果、
酒は澄んだ空気に清らかな水、里山に支えられた豊かな実り、冬の厳しい寒さなど自然から与えられたそれら全てに感謝して、良い酒になるようにと願いながら大切に作られるもの。決して形ばかりを追い求めて作るものではなく、そこには職人の魂が込められている。よって二つとして同じ物は出来ず、常に最良のものを作ろうと尽くすからこそ供え物として神に捧げられ、人を穢れから守る特別な力を得るのだと。
滔々と語っているが、神酒(神の如き力を宿す酒)と
これはリカルドが御神酒の事を神酒と訳したので仕方のない部分もあるのだが、何はともあれこの話に興味を示した
それを聞いた
(まぁ確かに……ケイオスさんの性格なら『よしそれじゃあ一緒に酒作ろう!』とはならないか……)
自分の都合のいいように考えてしまっていたな……と、反省するように己の頭を掻くリカルド。
(だけどこれ、同じ酒は作れないと思うって意見したのは想像の斜め上だし、その
苦笑を零し、でも奇跡みたいな状況だなとリカルドは思った。
何しろ上から双子が
これがもしリカルドが計画していた通り酒を作っていたら、キレて双子と戦闘になっていた可能性が高かった。
しかもこのままいけば精霊に神酒を作る事を断念させ、さらに人の礼儀や道徳的な事まで酒作りを通して僅かではあるが伝えられそうであった。
ここまで来ると同じ知識を持つ自分と一体何が違うんだろうか?と疑問になるリカルドだが、その答えは調べるまでもなく自ずと出た。
(LUKか……)
黄昏た。
ちなみに実際のところはLUKの影響だけではない。
いろいろと要因はあるが、一番大きいのはケイオスがあの映像作品の内容を本当の事だと信じ切り、本心から意見していたからだ。
精霊は人の心を理解する事は出来ないがその動きには敏く、同じ知識どころかそれ以上を持っていたとしても、そういう考え方があるという認識しかしていないリカルドでは酒作りに執着している精霊を感化させる事が出来ないのだ。
頭でっかちなだけでは、人(精霊だが)は動かせないという例である。
(えー……と。精霊はこのままケイオスさんに任せれば大丈夫そうだから、俺は上の後始末をしてればいいかな?)
リカルドは揺れる精霊を見て、あまり長く時を止めて一匹(?)で考え込ませるのも良くないだろうと、フェードアウトするようにそのまま元の位置に戻って時を戻した。
その途端残っていた礫が結界にぶつかり、それが止むと辺りは静かになった。
爆風によって照明用の魔道具も吹き飛ばされたため視界は暗く、クレーター付近の地面だけが熱され浮かび上がるように赤く色づいている。
(早く冷やさないとな)
「ニーベルグルティとエレナールティか」
「ニーベルグルティとエレナールティだな」
「ニーベルグルティとエレナールティめ」
早速冷却をと思ったところで、後ろから犯人を断定する声が聞こえ、明かりを作っていたリカルドが振り返ると、お一人様の塹壕のような穴(
うわモグラ叩きみたい。と思うリカルド(失礼)。
「代理人よ、感謝する」
「あ、いえ。あの、結界の外は――」
「わかっている。高温過ぎてこのままでは焼け死ぬのだろ?
温度を下げ次第総員で補強を行う。レーヴァルティン、クアイラット」
「過去最大にやってくれたな。メルディルス、ラーディリンクス、維持に回れ。崩れる」
「
目には見えないが、魔力の流れでそれぞれが分担するように温度を下げ、周囲の壁や天井に干渉して崩れないように支えているのを感じたリカルド。すごく慣れてらっしゃる……と思いつつ、俺もやろと視線を周囲に巡らせて、けれど彼らの作業を邪魔しないように(魔法の相互干渉による制御ミスを防ぐため)手が回っていないところから魔力を流して支え、温度を直接奪う魔法を発動させた。
「リカルドさん!」
「よく助かったな……」
「こりゃまた、何が起きたんだ?」
一番後ろに無意識に配置していた樹達が穴を飛び越えながらリカルドに駆け寄り、地面が溶けたような様相を晒している惨状に口元を覆った。
「えっと、私もよくは……嫌な予感がしたので退避したらこうなったというか。
とりあえず熱を取らないとどうにもならないですね」
何もわかりませんという風を装って適当に言うと、前に出ていたメルディルスが振り返った。
「リカルドさん、冷やすなら水も氷も使わないでください。爆発するかもしれないので」
「あ、はい。了解です」
既にその通りやっているのだが、焦った様子で物凄く真剣に言われたので思わず頷くリカルド。
「あの、俺も何か手伝いましょうか」
「あぁ大丈夫。樹くんは魔法の遠隔操作まだ難しいでしょ?」
今は結界を挟んだ向こう側に魔法を発現させないといけないのでリカルドがそう言えば、樹は「遠隔……」と呟いて肩を落とした。
リカルドがその様子に苦笑して、帰ったら練習する?と聞くと樹はすぐに復活。わかりやすい反応に見ていたバートとニケルスも苦笑した。
そんな師弟のやり取りをしている間にも洞窟内の温度はどんどん下がり、あちこちからピシピシと音が鳴り始めた。
「温度は?」
「耐えられる程度にはなったかと」
様子を見ていた
「ですが、また火を出されると持たないかもしれません。エレナとベルが何を考えているのかがわからないので――」
底の見えないクレーターを見据えながら男の言葉に付け加えたメルディルスに、あ。とリカルドは手を上げた。
「襲撃者は火ごと結界で封じて外に移しました」
「なに?」
「外とはどこだ?」
「あれがそう簡単に封じられるわけがないだろ」
紺色ワカメ、
「ええと……砂漠に」
「サバク?」
「……どこだ?」
視線を交わす
柘榴おさげは不信感丸出しで、適当な事を……と視線を外し、そこに居るのだろとクレーターの方を見た。
「なぁリカルドさん、砂漠ってエブフンバラの先にあるところじゃ……」
「え。バートさん知ってるんですか?」
こそっと聞いてきたバートに、驚いてこちらも小声で聞き返すリカルド。
砂漠があるのはここから遥か西、
「とりあえず、わかった」
そして空いている方の手を前に出して、余計な事を話さないよう制止。顔を
「
「はい。それは」
大丈夫ですと頷けば、
「原因が除去されているなら話は早い。この結界を外してくれ」
「わかりました」
紺色ワカメの言葉で(柘榴おさげの反論が出る前に)リカルドが結界を解いた瞬間、まだ熱を持った空気が押し寄せ、「「行け」」と指示を出された
リカルドもそのゲル状のナニカに膝下まで包まれゾワッと鳥肌(妄想)を立てたが、それとは対象的に
誰も言葉を発する事が出来ず、静寂が場を支配する中で巨大ミミズは身じろぎし、その身の内側からケイオスと
〝酒、小さいの、作ってみたかった。ごめん……?〟
疑問系で巨大ミミズは謝ると、そのまま周囲の壁や天井、地面へと染み込むようにして消えていった。
(あ、直してる)
リカルドは精霊が通過していくのと同時に、熱膨張や衝撃によって入った亀裂が修復されていくのを感じた。
その変化は自然で滑らかで絶対的で。魔法とは違う影響の及ぼし方に、精霊ってやっぱちょっと普通ではない存在なんだなと畏怖を感じさせるものがあった。
(……敵対しなくて本当に良かった)
リカルドが心の底からそう思いながら少し緊張した息を吐いていると、周りの
「じ、地母神が……」
「我らを助けっ……」
「
「慈悲深いお言葉を……」
「なんて美しい姿だ……」
その場に膝を付き祈り出す者まで現れ、というか柘榴おさげが真っ先に祈り始め感染するようにそれが広がっていた。
一体彼らには何が見えて何が聞こえたんだろうかとリカルドは思ったが、まぁいいやと時を止めた。精霊の酒問題が解決したのなら、あとはもう時を止めても支障はない。
(さて)
視線を上げて気持ちを切り替える。
残っている未処理案件は双子のみだ。
(帰ったらシルキーにおやつ作って貰おう)
今日一日だけで色々考えて、計画して、大体計画から外れて、予定外や予想外の事が多くて焦ってビビって混乱して(精神的)に疲れたが、ご褒美を自分にぶらさげてこれが(たぶん)最後だと踏ん張るリカルド。
(まず。何で動けたのかだな)
目下最大の謎を最初に上げるリカルド。
以前双子を調べた時には、時の停止を察知する事は出来ても見聞きする事は出来ないと結果が出ていた。だからこそあの停止した時の中で声を掛けられ、結界と障壁を壊されて、何で動けるんだと動揺し硬直してしまったのだ。
(……精霊化?)
リカルドは返ってきた見知らぬ答えに内心眉を
その結果、精霊化というのは高位神族(神族の中でも同化している精霊の存在が大きい者)が行使可能な半精霊状態に変化する技だという事が判明した。
この半精霊状態になると存在の性質が人から精霊へと変化し、ほとんど精霊と変わらなくなるらしい。
本来ならば双子は高位神族ではないので精霊化も出来ないのだが、双子特有の同調力を利用して互いの足りない力を補い無理矢理実現していた。このため、限りなく精霊に近い
ただかなり無理をしてやっているので身体を動かすところまでは干渉出来ず、自分の中に同化している火の精霊の力を揮うのが限界のようだった。
(なるほど……。理屈はわかったけど……でも何でこれが前回調べた時に出なかったんだ?)
全然わからん。と再度確認して、でもやっぱりわからなくてを繰り返していくうちに、何となく理解した。
(要するに、神族の場合は通常時と変身時が世界に別個体認定されているから、どちらか一方だけ意識して確認するとそっちの状態の結果しか出せないって事?)
是。と返ってきて、何その隠れ仕様……とリカルドは額を押さえた。
他にもこういうケースってあるの?と確認すると、位相が変わる時、つまり酒飲み女神が人から神になった時などを示された。
ははぁ、位相。なるほどポイントはそこかと納得したリカルドは、とりあえず愚痴は後日にして、双子にどう話をつけるかに思考をシフトした。気力の残量が少ないので省エネモードだ。
(どう話すかの前に、時を止めたのがバレてるってのがなぁ……)
まぁバラされても知らぬ振りは出来るし種族まではバレてないからセーフだけど……とリカルドは腕を組み、でも面倒だから頼んだら黙っててくれたりしないかなー……と楽な方に思考が流れた。
(鑑定の件だって黙っててくれてるし、案外いけんじゃない?)
なんて安易に調べたら、あっさりと黙っていてくれる事がわかって、え。まじで?となるリカルド。
今後話してしまう可能性があるか、精霊化した場合でもそのような可能性はあるか、しっかり何度も確認したが、それでも確かだった。話す可能性はリカルドが良しと言った場合のみ、という頑固一徹ぶりである。
もしかして事の真相とか話しても全部黙っててくれる?とさらに調べれば、やはりこちらも頼めば黙っていてくれた。
(何だ、いい奴らじゃん)
落ち着け。洞窟内でいきなり六千度の炎を出す奴がいい奴なわけがないだろ。と突っ込む者は——以下略。
ついさっきケイオスの件で反省した癖に、自分に都合のいい思考に傾いているお疲れ気味の
「お待たせしました」
周囲から断絶させた結界&障壁内に入り声を掛けたリカルド。が、反応がない。
あれ?と見れば、二人とも肌着姿で完全に固まっていた。
(あ。げっ)
瞬間的に精霊化を解いているという事と、六千度という炎に纏っていた衣類が耐えられなかった事を悟ったリカルド。
素っ裸じゃなくて良かった……と空間の狭間から布を取り出して二人に掛けて、少し迷ったが双子を時を止めている中に引きこんだ。
「ええと、聞こえますか?」
引き込んだ途端、ぱちりと瞬きをした二人。
リカルドが出来るだけ離れた位置で、大丈夫ですか?と手を振れば、二人とも面白そうに自分の手や、周りの黒い壁(空間魔法によって周囲から分断されているためそう見える)に目を向けた。
「わお。すごいねこれ。止まってる?」
「面白いね。ここだけ流してる感じ?」
「ええまぁ。いきなり閉じ込めてすみませんでした。ちょっといろいろと事情がありまして」
双子は興味津々という様子でリカルドに視線を向けた。
「これどうやってるの??」
「母さん達もこんな事出来ないよ??」
いやその前に、君ら自分の恰好を気にしてくれませんかね……とずれ落ちた布を見て思うリカルド。
異世界日本の基準で考えると大した露出でもないし、部屋着と言えない事もない生成りのシャツと
「えー……時魔法を訓練すれば可能です」
そう言いながら近づいてそっと肩からズレ落ちた布を拾い、その端を視線を伏せたまま差し出すリカルド。
「あぁ、これ以外は全部燃えちゃうんだよね」
「もうみんな気にしないから忘れてた」
「母さん達は燃やす燃やさないって選べるんだけどね」
「私たちそこまで出来ないんだ」
「だからこれ貰ったんだけど」
「人の中で暮らすなら必要よって」
軽い調子で布を受け取って、ぴらりと生成りのシャツを摘まんで見せる双子。
全く恥じらいのない双子に、これは気にするだけ無駄だなとリカルドは諦めた。
「でもそっか。時魔法かぁ……魔法は苦手だしなぁ」
「ごちゃごちゃしてるんだよねぇ、魔法って」
お宅らさっき六千度の火を出してましたよね?と突っ込みたくなるリカルドだが、突っ込むと脇道に大きく逸れそうな気がして、咳払いして話を軌道修正した。
「それよりも祭儀の間を突き破ろうとしていた事についてですが――」
「あぁうん、あの下に
「お兄さんに頼まれてからいろんな人の話を聞いて、それでいなくなった場所がどの辺か調べてそこに行ったの」
「そしたら土のが居た気配があったからさ」
「あぁこれ土のが連れてったんだってすぐにわかったんだ」
「だからあの下に必ず居るよ」
「あそこが土のの住処だから」
「ちょっと固いから二人で全力で蹴ったんだ」
「ちょうどお兄さん居たし今だと思って」
「居なきゃ崩れて無理だもん」
「タイミングいいよね」
「さすがお兄さん」
「待て待て待て!」
口を挟む間もなく話す双子に無理矢理割って入るリカルド。
何?と首を傾げる双子にリカルドはこめかみを押さえた。
双子が行方不明の犯人を自力で特定し、居場所まで突き止めたのは素直に凄いと思う。というか、こいつらにあんな事頼まなきゃ良かったとリカルドは思ったが、それも置いといて。
(お前ら確信犯か……)
危険だとわかった上でやっている双子に恐ろしいものを感じるリカルド。
「下手したら死人が出てましたよ?」
一応注意するつもりで言えば、双子は笑って手を振った。
「「ないない」」
「お兄さんディを殺さないって言ったから」
「だから絶対大丈夫だって思ったんだよ」
『だから』の意味がわからないリカルド。
「それよりもさ、お兄さんがここに来たって事はお兄さんが壁を破ったの?」
「
「……」
いろいろ言いたい事はあるが、話せば話す程疲れる気がしてリカルドはやめた。
「……これから話す事は、ここだけにして黙っていて欲しいのですが」
「いいよ」
「黙ってる」
即答で軽く言う双子に、リカルドは何とも言えない気持ちになった。
「実は以前、あなた方が言う
そうしてリカルドは、己が以前
双子は黙って話を聞いていたが、リカルドが話し終えると視線を交わして首を傾げ聞いた。
「お兄さんってさ」
「人じゃないよね? 魔族?」
前置きの無い、直球かつ当たりの問いにリカルドは反応が遅れた。
「……それは、えー……人に見えないという事ですか?」
反応が遅れた時点でもうバレてるようなものだが、足掻くリカルドを双子はじっと透き通る水色とオレンジの目で見つめた。
その目に、あぁ……これ無理だな……とリカルドは悟った。
「……人、であったらなと思います」
希望を込めた自白に、双子は破顔した。
「そっか」
「うん。納得」
「でもあれだよ、お兄さんすごく人だよ」
「だから私たちもよくわかんなかったんだ」
「すごく人……?」
何だかよくわからないが、人でなくてもオッケーそうな空気に戸惑うリカルド。
しかし双子はリカルドの戸惑いなどお構いなしに、上機嫌でリカルドを挟むように横に移動した。
「あれだよね。お兄さんが話してくれたって事は、私たちの事を信用してくれたって事だよね?」
「私たちならお兄さんの秘密を誰にも話さないって」
「え? あー……ええまぁ、そうかな、と思いまして?」
信用したというか
「私たちもお兄さんの事は信用したし、これでお相子になったね」
「こういうの友達って言うんでしょ?」
「私たちの初めての友達だね」
「よろしくね。リカちゃん」
「……リカちゃん」
友達認定の前に、何故ちゃん付け……とリカルドは困惑した。
双子は「母さんが友達はちゃん付けして呼ぶんだよ」って言ってたからと答え、それは女友達に対してでは?と思うリカルド。とりあえずちゃん付けは拒否して
何があったかは長いので割愛するが、これでもリカルドは頑張ったとだけ記しておく。
とりあえずお友達になって口裏を合わせ(と言っても、双子が地母神のところに
そこからは双子が
尚、今回のMVPのケイオスは、
結果はもちろん
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