第67話 思いのほか意気投合。それから四人目の魔法訓練

「……それで」


 リッテンマイグスは徐々に瞳孔を元の形状に戻しながらリカルドに聞いた。


「これを私に打たせるのか?」

「はい」


 リカルドが頷くと、リッテンマイグスはしばし思案するように長い指をインゴットの上で滑らせると一度、二度と指で叩いた。


「……世界初の純正の鎧か」


 呟くと、束の間思案するようなそぶりを見せたが徐々に色の悪い薄い唇を酷薄そうに歪め笑った。


「……いいな……いい、面白い」


 くふっくふふと笑い出したリッテンマイグス。

 さっきまではリカルドが見せた魔法による精錬方法に頭がいっていたのだが、仲間内では誰も打った事のない素材を扱えるという現実が染み込んで、どんなものが作れるだろうかと妄想が膨らんだ。が、


「………足りない」


 一転、いきなり眉を下げてどんよりと呟いた。インゴットに乗せていた指もいじけるように円を描き出し、ぬらっとした目をリカルドに向ける。

 リッテンマイグス的には、これだけ?という視線だったのだが、リカルド的には出さないと祟るよ?という視線にしか見えず、内心びくりとして慌てて出した。


「あ、ありますあります」


 横で見ていたラドバウトは、どんどん出てくるヒヒイロカネに何とも言えない気分になっていた。冒険者たちが夢見る金属が、そんなカツアゲされて出てくる小銭のように雑に取り出される光景は見たくなかったなぁ……と。 

 それとは反対にリッテンマイグスは豊富な材料に再びくふくふと笑い出した。頭の中はあらゆる鎧の形でいっぱいだ。叶う事なら片っ端から作ってみたいが、一応依頼者はラドバウト。そこは覚えていたのでラドバウトに顔を向けた。


「……希望は前と同じか?」

「あぁ、耐久と動きやすさとある程度の重さを頼む。装飾は無し」


 隙あらば装飾をつけようとするリッテンマイグスの癖を知っているラドバウトは念のために付け足せば、リッテンマイグスは露骨につまらなそうな顔をした。


「………せっかくの素材なのに」

「頼むからやめてくれ」

「ツノの一本でも」

「無しで」

「…………」


 膨らんでいた妄想の八割が消えて残念がるリッテンマイグスに嘆息するラドバウト。


「あの、少しいいですか?」


 そこで話が終わりそうだったので、リカルドはそっと手を上げた。正直このまま、じゃあこれでと失礼します。と帰りたい気持ちもあったのだが、本日の目的を達成していないので、ここで帰っては来た意味が無い。


「ヒヒイロカネを使うにあたって、こういう処置をしてはどうだろうかと思ったんですが……」


 空間の狭間から紙束を取り出して並べられたインゴットの上に置き、リカルドは自分で描いた設計図を指さした。


「何分素人なのでおかしな事を言っているかもしれませんが……ええと、ヒヒイロカネ自体はそんなに重くないので普通に作ると重さが出ないと思います。逆に重さを出そうとすると他の金属を付け足すかヒヒイロカネ自体を増やすかだと思うんですけど、だったらこういう感じでミスリルを挟んで重力魔法を仕込んではどうかと思いまして、で——」


 ラドバウトが使うのなら、どうせならより良いものにしたい。そう考えてリカルドは虚空検索アカシックレコードでこの世界の鎧についても調べながら考えてきたのだ。決してファンタジー種族と武具談義をちょっとしてみたいとか、ミーハーな気持だけでここに付いて来たわけでは無い。

 リカルドが指をスライドさせて中に仕込む術式を説明しようと視線を上げると、リッテンマイグスもラドバウトも違うところを見ていて、ん?となるリカルド。


「これはリカルドが?」


 リッテンマイグスが示したのは並べた紙の下の方だった。

 それはメモ紙に戯れに描いたイラストで、異世界日本に蔓延るゲームや漫画にあったリカルド的格好いい鎧シリーズだった。鎧の詳細なんてもちろん頭に残っていなかったのだが、そこは虚空検索アカシックレコードから引っ張り出してこんなの恰好いいよな~と気分転換に描いていたのだ。所謂厨二病の後遺症だ。描いている時はノリノリで描いていたリカルドだが、それを他人に引っ張り出されてじっくり見られると、あー……それは……と何とも言えない恥ずかしさに見舞われた。


「私と言えば、私ですが……」


 聖騎士とか暗黒騎士とか、竜騎士とか、中世のシンプルなフルプレートとか、ごついタイプとか、デザイン優先実用度外視のそれをそっと取り戻そうとするリカルド。

 だがリッテンマイグスはリカルドが取り戻す前に取り上げて、薄い笑みを浮かべながらそれを撫でた。


「全く持って使えない形状をしている。が、造形は美しい……なかなかいい趣味をしているじゃないかリカルド」

「は、はぁ……どうも」


 それを想像したのはキャラデザイナーとか漫画家なのだが、それが恰好いいと思ったのは事実なので自分の趣味と言えば自分の趣味か?と首を傾げるリカルド。その横で、リッテンマイグスの視線の先に気づいていたラドバウトが物凄く渋い顔をしていた。


「リッテンマイグス、頼むからゴテゴテさせないでくれよ。動きづらいのはかなわん」

「……わかっている。だが造形自体は面白いだろ。リカルド、こういう形にした場合さっき言っていた重力魔法の付与は出来るのか?」

「はい?」


 後ろの棚からスケッチブックのようなものを取り出してきて、リッテンマイグスはさらさらとそこにフルプレートの全身像を描き出した。

 あっという間に描かれたそのデザインは、リカルドが描いていた暗黒騎士の造形を引き継ぎつつもラドバウトが言うようにトゲトゲやらツンツンやらの装飾は削られていて、それでいて全体の重厚なダークさが失われていなかった。一言で言うと、ものすごくリカルドの好みで恰好よかった。

 何この人、神?と目を瞬かせるリカルド。さっきはお化け屋敷のキャストみたいとか思ってすみませんでしたと内心謝り、すぐさま術式を組めれるのか時を止めて虚空検索アカシックレコードで確認した。確認したというか、もし出来ないという結果が返ってきてもこの形状に合わせて術式を変更する気満々だ。


「出来ます。可能です。やってみせます」

「いい答えだ。よくわかっているじゃないか」


 リッテンマイグスがにやりと笑えば、リカルドはこの実物が見れるならもちろんですと微笑んだ。二人の心ががっちり繋がった瞬間である。

 一人取り残されたのはラドバウトで、まさかこの二人が意気投合するとは完全に予想外だった。何しろリッテンマイグスは武具に関してはザック並みに変人で気まぐれなので、リカルドが苦手とするタイプだと思っていたのだ。


「なぁ、頼むから普通にしてくれよ?」


 と、そう頼む声も二人に届いているのかいないのか、一応「「わかって(い)る」」とハモる二人はしかし、この部分に術式を埋め込むならこの裏のところから魔力補填出来るようにする必要があるとか、だったらそこを増幅紋様で効率化アップとともにデザインとして定着してはどうかとか、こっちの腕輪のデザインは何かと聞かれたリカルドが、変身ヒーローものを土台として考えた換装機能について説明したり、それにリッテンマイグスが大いに刺激されて絶対採用と即決したり――間違いなくラドバウトの考えていたような普通のものにはならなさそうだった。

 ただ、ラドバウトはリッテンマイグスが調子に乗って作る武具の性能が普通に作った時のものよりも数倍は良くなる事を知っていたので、見た目を取るか性能を取るかで悩んでしまい、それ以上二人の暴走を止めれなかった。その辺は堅実なラドバウトらしいと言えばらしかった。

 結局その日だけでは時間が足らず、また翌日も訪問する事を約束してリカルドはラドバウトと随分と暗くなった夕方の道を歩いていた。


「いやぁ楽しみだな~」

「……使うの俺だからな? 頼むから頼むぞ」

「わかってるよ~。ちゃんと派手過ぎないように考えてるって。装飾はなしだろ? 意味のあるものしかつけないって」


 意味を作ってくっつける気じゃないのか。と思ったラドバウトだが、最後に見えたデザインでは確かに変な装飾はついていなかったので、信じるしかないか……と諦めた。

 明日から樹に野宿を教えるのでしばらく戻ってこないのがこの上なくタイミングが悪い。せめて戻って来てから誘うんだったと思ったが、まぁ後の祭りである。




 ルンルン気分のままリカルドは家に戻り、夕食の時もご機嫌で、ハインツにはリッテンマイグスに会って何故ご機嫌に?と謎に思われていたが、それにも気づかず頭の中はずっと鎧に占められていた。

 のだが、夜中に差し掛かりハタと我に返った。

 今夜はルゼを指導する約束だったのだ。


(あっぶな……完全に忘れてた……)


 前回ジュレのクランハウスにお邪魔した後、すぐにラドバウトとは連絡を取って約束の日を決めていたのだが、日数があるからとど忘れしていた薄情なリカルドである。

 ひとまず時を止めてグリンモア版リカルドに姿を変え、ルゼに約束した天使族に勝つためにはどうしたらいいかを虚空検索アカシックレコードで調べた。そしたらリカルドの眷属になるか生体操作を受けるかの二択が出て来て噴いた。

 虚空検索アカシックレコードさん、そうかもしれないけどそうじゃないんだよとリカルドが改めて条件をつけて調べれば、天使族の身体能力を超える魔法技術を身に着ける事が一番確率が高そうな事がわかった。


(まぁその辺が妥当だよな。俺だって戦闘技術ないけど魔法のゴリ押しで抑え込んだんだし)


 リカルドが方針を決めてジュレのクランハウスのルゼの部屋へと転移をして時を戻すと、いきなり影が鋭利な刃となって襲ってきた。その動きを視認した瞬間、魔法障壁と物理結界を同時展開するリカルド。

 闇魔法の影刃に混じって本物の短剣が投げられていたのだが、それも物理結界に阻まれて床に落ちたところで、リカルドはルゼが使った影刃のコントロールを奪って逆にベッドの上で掛布を頭から被っているルゼを引きずり出した。


「なっ…おま、やめろ!」


 右足だけ影で捕まえてぶらんと宙づりにすればリカルドの方を睨みつけるルゼ。恰好が恰好なので様にならないのだが、リカルドは腕を組みながら顎に手を当ててルゼに近づいた。


「ルゼさんはかなり魔力操作が上手ですよね。感知能力も高いですし」

「嫌味か?!」


 攻撃を完全に防がれた上、制御を奪って自分の影刃にしてしまったリカルドに言われても全く褒められたようには感じられないルゼ。

 反発するルゼだがリカルドはあまり気にしていない。経緯が経緯なので攻撃されるのも想定内だし、悪態をついてくるのもまぁそうだろうなと思っていた。何しろ指導をすると約束してから最初の指導日が一週間以上も空いてお預けを喰らっていたのだ。鬱憤も溜まっている事だろうと想像は容易い。


(この子が樹くんやクシュナさんやナクルくんみたいに大人しくあの地道な訓練をするとは思えないし……っていうかこの子、そういえばもう勝手にやってるんだっけ? 見よう見まねで)


 じゃあ他のアプローチからした方がいいか……と段々血が上って顔を赤くしていくルゼを眺めながら候補を上げていくリカルド。


「とりあえずここでは他の方に迷惑なので場所を移動しましょうか」


 と言ってルゼを連れて王都近くの平原へと転移。そこでルゼを解放して影刃を消すと、すかさずルゼは短く詠唱して業炎(直径十メートル程の火の球で火魔法最大の広範囲攻撃魔法)を頭上に生み出しリカルドへと放った。

 リカルドはさすがにこれを放置したら平原がそこそこ焦げるなと思って、けれど水魔法または氷魔法を使ったら水蒸気でえらい事になるしと思いそれをそのまま魔法障壁で囲んで消滅魔法で消し去った。


「――は?」


 溜めの動作も詠唱も無しに一瞬で消されたルゼは、何をされたのかはわかったが、何でそれが一瞬で出来るのかが理解出来なくて固まった。


「ちょっと考えたんですが、ルゼさんの場合天使族に対抗するには攻撃魔法の威力が弱いのと、数を増やさないと当たらないというのが問題だと思います」

「は?」


 何事もなかったように話を始めたリカルドについていけていないルゼ。


「例えばですけれど、今の業炎についてももう少し凝縮するように熱量を一点に集中させて追尾機能を持たせればあの天使族でも負傷すると思います。と言ってもすぐに回復魔法で復活しますから、やっぱり数が必要です。同時に扱える魔法はいくつですか?」

「え……よっつ、だけど……」


 普通は三つ以上の魔法を同時に扱えるのはすごいのだが、ルゼはさすがジュレのメンバーだけあって普通ではなかった。

 だがリカルドは天使族の身体能力を考えて、それだと少ないなと思った。四つ使えるうちの二つは必ず防御の要となる物理結界と魔法障壁に割く必要があり、残る攻撃手段は二つだけとなってしまう。天使族は余裕で手足を犠牲にして突っ込んでくるので二つでは牽制にも出来ないのだ。だからリカルドのようにゴリ押しで抑え込めない場合少なくとも五つ以上の手数が必要で、かつ相手の回避能力の高さを考えればその倍以上の数が必要となり、ハッキリ言って数の暴力でオーバーキルするぐらいの気概が無ければルゼのような魔導士だと即座にやられてしまう。さらに言えば、その数の暴力にも一撃一撃の強さが求められるのだが、数も強さもとなるとさすがに同時には無理なのでまずは数を増やすところから始めようかとリカルドは考えた。


「わかりました。同時に二十程コントロール出来るようにしましょうか」

「……お前何言ってんだ」


 ルゼが知る優れた魔導士でも七つ以上の魔法を同時に扱う者は居ない。十でも人類が到達してない領域なのに二十って……とリカルドの真意を掴みかねるルゼ。

 やっぱり本気で訓練を見るつもりなんかなかったのか?と思ったのだが、


「そう構えなくても既に四つ出来ているのでコツを掴むのは早いと思いますよ。鍵盤を両手で弾くのと一緒です。別々に考えるから出来ないのであって、全て同時に考えてやれば出来ますから」


 微笑み話すリカルドにルゼは悟った。こいつマジで言ってると。

 言っている事は全く理解出来なかったが、だけど本気で言ってるって事は俺でも出来るって事だよな?と自問自答するルゼ。もし本当にそんな人外みたいな事が出来るようになれば確かに天使族人外にも手が届くのかもしれないと思えた。


「わかった……だけど、四つ以上は集中が持たない……」


 それ以上はどうやっても霧散すると首を振るルゼに、リカルドは大丈夫と頷いた。


「まずは物理結界と魔法障壁を張ってください」


 ルゼの手を握り言うリカルドに、ルゼは言われた通り結界と障壁を張った。


「なるほど……属性的に物理結界は苦手みたいですね」


 張られたその結界と障壁を見たリカルドは、魔法障壁はそれなりの強度だけど物理結界の方はそこまで強度が無いなと思った。あと、物理結界の方が張るまでに時間が掛かっている。

 

「仕方がないだろ……」


 闇魔法使いの場合、魔法障壁との相性はいいのだが物理結界との相性は悪く、それでもきちんと発動して使える域にしているルゼはまだ優秀な方だ。


「じゃあまずこの物理結界ですけれど、こうしてください」


 と言ってルゼの魔力を勝手に動かして補強するリカルド。

 ルゼはギョッとしてリカルドを見上げ、それから確かに強まった結界にぞわっと鳥肌が立った。


「お前……これ……」


 他人の魔法に干渉するだけでなく、他人の魔力に干渉するなんて話、聞いた事も見た事も無かったルゼは、次第にリカルドが人知を超えたもののように思えて来た。

 考えてみればその姿を天使族へと変えて、天使族に対して族長だと勘違いさせる事がただの人間に出来るだろうか。そんな人間、本当にいるのだろうかと。ひょっとして目の前の人の姿をしたこれは――と、そう考えた時にそれを裏付けるように大きくのびのびと育った世界樹の姿が思い起こされた。

 世界樹の事を他言しないようにと誓約を掛けられた感触と、天使族に勝手に挑まないよう指導に対しても文句を言わないよう誓約を掛けられた感触が——全く同じだった。

 魔力の質は個人によって差がある。故に全く同じ場合、それは同一人物という事を示す。

 点と点が結びつき、ルゼの中で形が明確になっていった。

 あの時、世界樹は神様と言っていた。

 つまりは、そういう事なのか。


 リカルドは、目をまんまるにして何なら口まで開いて見上げて固まってしまったルゼに、片手を振って見せた。


「ルゼさん? 大丈夫ですか?」

「か……」

「か?」

「な、なんでも、ないです、いや、ない、だ」

「……大丈夫ですか?」


 急にしどろもどろになって視線を彷徨わせるルゼに、いきなり魔力を通して勝手に動かしたのは衝撃的だったかと内心頭を掻くリカルド。最近クシュナとナクルでごく普通にやっていたので当たり前のようにやってしまった。

 せめて何をするのか言ってからするんだったと反省して次に行けるかなと様子を窺うリカルド。

 自分が全く同じ魔力の質でルゼに干渉している事に気づいてもいないし、まさかそれで占い師である自分と冒険者である日本版の自分が同一人物であると見抜かれた事にも気づいていない。


「結界は維持出来そうですか?」

「で、でき、る」


 ルゼの方はひょっとして自分は今、とんでもない僥倖に恵まれているのではないのかと頭の中が忙しく、自分が気づいてしまった事は悟られない方がいいのではないか?と考えて片言になってしまっていた。

 明らかに挙動がおかしいルゼなのだが、リカルドは緊張しているのかな?と呑気に考え、とりあえず本人が出来ると言うので多少補助しながら次に行くことにした。


「では追加で十八の魔法を同時使用しますよ」


 十を飛び越していきなり十八に行くリカルド。リカルドは十が出来たところで十八の難易度が変わらない事を知っているからだが、知らないルゼには鬼畜にしか思えない。それでもルゼは何も言わず頷いた。

 

「別系統の魔法にすると負担が大きいでしょうから同一の魔法にします。火球にしますからイメージをしてください。詠唱はもちろん無しです」


 そう言ってリカルドはルゼがイメージをした瞬間、頭上に十八の火球を浮かべた。

 火球は業炎の下位互換の魔法なのだが、それでもその数が浮かんでいるのは壮観だった。確かに己の魔力を使って生み出されたそれらを、ルゼは本当に出たと口を開けたまま見上げた。


「同時使用はこんな感覚です。増やそうとするのではなく、そもそも最初からその数の魔法を発動させると意識すればより楽ですよ。制御は取れそうですか?」


 ルゼは確信した。こんな事が出来る相手は魔法の神、魔神ぐらいだと。

 奇しくも酒飲み女神と同じ見解に辿り着いたルゼであったが、口を閉じて黙って頷いた。

 どんなに困難な要求をされようとも、文句を言わないと誓約をしたから口を閉ざすのではない。全てものにしてやるという覚悟を決めたからこその無言の頷きだった。

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