第30話 ヒロインはやっぱり鬼門
夜道を歩きながらリカルドはぼんやり星が瞬く空を見上げた。月は地球と同じく青白い光を放っている。
遅い時間なので泊まっていくかとラドバウトには言われたが、あんなところで休める気が全くしなかったので即答で帰ると辞してきたところだ。
「濃かったなー……」
魔導士って極めると濃くなるんだろうかと、
ザックが知れば邪法に手を染めた者と一緒にするなと憤慨するところだが、リカルドにとっては方向性が違うだけで変人の括りに入っていた。ただ、極めた魔道士としてはその
ふと、遠くから聞こえる何かが弾けるような音とぱっぱっと光る何かの灯りに、リカルドは首を傾げた。
「祭り?」
(そんなのあったっけ? 収穫祭だとかそういうものが行われるのはもう少し先の筈だよな?)
ちょっと考えてみたものの、あんまり詳しくないリカルドは早々に思考を戻した。
明日はハインツと樹くんの顔合わせになるから朝のうちに樹くんに伝えておかないとなぁと考えながら家に戻ったリカルドは、玄関の前に佇むシルキーに異変を感じ取った。
「シルキー?」
すぐに駆け寄れば、シルキーは心配そうな顔で敷地の外に目を向けていた。
〝リカルド様、イツキさんがまだお帰りになっていません〟
「樹くんが?」
夕方ごろには樹は確かに家に居た。そして外出する話も聞いていなかったので、リカルドは嫌な予感がした。
〝実は家の前を走っているお嬢さんを見かけられた後、様子がおかしいと仰られてそのまま……〟
すぐに
そしてとんでもない事になっている事に気づき、咄嗟に時間を止めた。
「おいおいおい……」
家の前を走っていたお嬢さんというのはクシュナだった。そしてクシュナが走っていた理由は街に出てきていたところを幼馴染に迫られ追いかけられていたからだった。例の乙女ゲーの相手役の一人、ストーカーのジャンニだ。
やつは幼馴染だからそういうものかと気にしないでいたクシュナに増長して、クシュナが使ったものを収集したりクシュナの予定を教会の関係者から聞き出して先回りしたり、教会の警備計画を盗み見て侵入経路を探したりさらなるストーカーへと進化していた。
そして今日、顔見知りになった護衛の教会騎士に賄賂を渡して遠ざけ、偶然を装ってクシュナに近づきそのまま駆け落ちしようとして失敗、逃げるクシュナを追いかけるという流れだった。
偶々それを目撃した樹は、クシュナの様子がおかしいと気づいて助けに入ったのだ。
樹は冷静に一人でどうにかしようとはせず、まずクシュナを抱えて逃げて、クシュナに家の場所を聞いた。
彼女を父親に託せば、憲兵なりなんなり呼んでもらって安全が確保できると考えての事だったのだが、クシュナは教会の位置を伝えたため、樹は教会で不審者として包囲されてしまった。
もちろんクシュナは樹が不審者などではなく、助けてくれた相手だと庇ったのだが、そのタイミングでジャンニが追いついて、クシュナを樹が連れ去ろうとしていたと証言。クシュナの護衛についていた騎士もサボっていた事がバレるのを恐れてその証言に加わった。
ちなみにクシュナは一貫してジャンニに追いかけ回されていたところを助けて貰ったと話していたのだが、何故か黙殺されていた。
まあ話がここで終わって、樹が捕まった程度ならまだ良かったのだが、樹を捕まえようと手を出した教会騎士が逆に吹っ飛ばされて事態がやばい方向に転がった。
樹は一切手を出していない。
だが、樹の腕には鈍く輝く例の腕輪があった。可能な限りの防護を施したあの腕輪が。
(やっべぇ……反射つけるんじゃ無かった……)
何が起きたのか樹自身わかっておらず、何もしていませんというアピールのためホールドアップしたが、それが教会騎士には伝わらず本格的な捕物が始まってしまったのだ。
聖魔法によるバインド、風魔法による牽制、剣による直接的な攻撃、それら全てを棒立ちのまま弾き飛ばす樹に、彼らはプライドを刺激されたのか殺気立ち、ますます攻撃は過激なものへとシフトした。そのせいで弾かれた魔法が周囲へと被害を拡大させ、建物が瓦礫と化しているところすらあった。
「どうすんだこれ……穏便にって時期を過ぎちゃってるぞ」
そうは言ってもとにかくあの場から樹を回収しなければと頭を働かせるリカルド。
幸い樹は何もしていないという事を示すため、ずっと手を上げたまま動いていない。剣を向けてきたり、魔法を放ってくる相手に対してずっとそうやっているのだ。
(どんだけ肝が据わってるんだよ樹くん……)
とはいえ、正面からの暴力に顔は青褪めている。
対処の方法は全く思いつかないが、その場に置いておく事は出来ないとリカルドは転移して樹を回収、家の庭に戻った。
「ウリドール、出てこれるか?」
〝はいはーい、なんですか? って、あれ? その子の前に出ちゃっていいんですか? もう出ちゃいましたけど〟
じゃあ聞くなよと思うリカルドだが、こんなのでもここでは時を止めた空間で意思疎通が出来る唯一の相手だ。樹を任せる事が出来そうなのがウリドールしかいなかった。
〝ん? 動かない? あぁ、時を止めていたんですか〟
「ウリドール、樹くんに家から出ないように伝えてくれ。何も心配要らないから寝ているようにって」
〝構いませんけど……この子、初めて見る私の話聞いてくれますか?〟
「一応樹くんにはお前が話せる事は伝えてあるけど、ダメならシルキーに伝えてくれ。シルキーがウリドールの言葉を信じれば納得してくれると思う」
〝はーい。わかりました〟
念のため敷地の周りに強固な結界を作ってから教会へとリカルドは戻った。
「さて………どうしたもんか」
樹が立っていたところに胡座をかいて座り、頬杖をつくリカルド。
殺気だった騎士達の顔を眺めながら、どうしてこうもこいつらはやる気満々なのだろうかとため息が出た。
樹は見た目にもまだ子供だ。この世界では十分働く歳に達してはいるが、それでも大人になりきっていないのは見た目にも明らか。なのに躊躇いもせず殺す勢いで攻撃を加える騎士達の精神を恐ろしく思うリカルド。
クシュナが樹を庇っていたのにそれを黙殺してまでする理由がリカルドには理解出来ず、
少し前にヴァンパイアの真祖カミラがこのグリンモアに現れた件、これが絡んでいた。
リカルドはすっかり失念していたがこれ自体がおかしな話だった。なぜならこのグリンモアには中位以上の魔族を阻む聖結界があるからだ。無理に入ろうとすればそれはすぐに知れ渡る。
にもかかわらず、カミラは誰にも気づかれずに入ってきた。その理由が、聖女の誘拐にあったのだ。
ちょうどカミラがグリンモアに入る直前、教会から聖結界を張っている聖女の一人がいなくなり、彼女が担当している地域の結界が消えていた。そのせいで穴の空いたところを通過する事ができたのだ。
聖女を誘拐したのは女神信仰とは違う別の宗教団体が関与しており、そちらは既に王太子が手を回して制裁を加えていた。
なんだよこの宗教団体はとリカルドが思えば何のことはない、吸血鬼が自分の気にいる人間を狩るための情報網にしている組織だった。聖結界にひっかからない下っ端吸血鬼がその団体の幹部で、確かにカミラが接触していた顔がそこにはあった。
聖女の誘拐は彼らが子供を使って誘き出し、その子供を助けなければと思わせる幻覚を見せて連れ出していたのだ。
だからこそ、子供の域を出ない樹に対してむしろ容赦がなく、クシュナの話も惑わされているとして無視されてしまっていた。
「……見落としてたか」
あの時ラドバウトが帰ってこないと聞いて、死にかけているところを見て、それなりに慌てていた自覚はあるリカルド。調査不足に項垂れた。
だがその宗教団体をいきなり全部潰したら上の吸血鬼を刺激する事になりかねないので、それはそれで良かったのかもなとも思った。
幸いにも王太子がその宗教団体を国外追放として徹底的に追い出したのでしばらくは問題ない、問題は目の前の怒り立つ騎士達だ。
こっちも教会上層部から聖女を守れなかったとして処罰を受けており、その後のこの事件だ。
符合する状況の上、聖女見習いを攫おうとしていたという単語がまぁ見事に彼らの逆鱗というか、今一番過敏になっているところにクリーンヒットして冷静さを欠いている。
手っ取り早いのはこちらの身元を有力者に保証してもらう事なのだが、リカルドがすぐに思いつくコネは王太子だとか土地と家の権利書を作ってくれた侯爵だとかその辺だった。
彼らに助力を求めた場合を調べてみると、身元は保証してもらえるものの、公に関係性を認める事になりなにやら面倒な事が起きそうだった。王太子の懐刀と呼ばれたり、侯爵の切り札と呼ばれたり。場合によっては樹の素性も知れてしまうケースもあった。
出来れば静かに暮らしたいリカルド。他に何か手は無いかと地道に探していると、つい最近出来た縁で協力してくれそうな相手を見つけた。
「クレイモンド伯爵……そうか、神官に娘さん見てもらってたな。知り合いがいるのか」
人脈を確認すれば、この教会の神官長補佐の一人と懇意にしている事がわかった。
どう話を持っていけば協力して貰えるだろうかと、細かいパターン分けが必要な作業に毎度のことながら気が遠くなるリカルド。
だけど事前にわかるのだから文句なんて言ってる場合じゃないなと自分に言い聞かせ、ひとまず正攻法、正面からのお願いをする場合で確認すればすんなりそれで聞き届けて貰える事がわかり拍子抜けした。
呪殺のあの一件はリカルドとしては仕事の一環として対応したという認識だが、伯爵の方は占いを本業と話す相手に無理を押して聞いてもらったという念が強く、どれだけの報酬を積めばいいのだろうかと思案しているところだったのだ。
当たり前のように報酬が300ルクで終わると思っていたのはリカルドだけである。
「伯爵、厳ついけどいい人だな」
ありがたやありがたやと誰に向かってか手を合わせ、さっそく樹のデコイを作ってその場に立たせ、物理障壁と魔法障壁を張って伯爵の執務室へと転移した。
そこでグリンモア版リカルドになり時を戻した。
娘に呪いをかけた相手を調べるため各所からの報告書を読んでいた伯爵は、突然目の前に現れたリカルドに一瞬腰を浮かせてから、ため息をつくように息を吐き出した。
「君か……驚いたぞ」
「夜分に申し訳ありません。どうしても急ぎ伯爵のお力を借りたいことが発生しまして」
「私の?」
凄腕の魔導士が自分を頼るという構図がいまいち分からず伯爵は怪訝な顔でリカルドを見上げた。リカルド程の実力があればもっと上の貴族と繋がる事も造作もないと考えていた伯爵だが、逆にその上の貴族だと不都合があるとはさすがに考えが及ばなかった。
「実は知り合いの子が誤解されて教会騎士に包囲されてしまっているのです」
「教会騎士に?」
リカルドは「はい」と頷いて、懐から出したと思わせて空間の狭間から水晶を取り出した。
「その子に預けていた魔道具の記録です」
透明な水晶が内側から白く濁ると、そこに人影が写りすぐにクリアな映像へと変わった。
そこには樹がクシュナに声をかけ、怯えている彼女と追いかけてくる男を見比べて抱き抱えて逃げ始めるところから、樹に対して汚い言葉で罵る男と、あんな人じゃなかったのにと涙ぐむクシュナ。それから、グリンモアを捨てて他の国で一緒に暮らそうと持ちかけられたのだと話す様子。教会に着いてからも樹とクシュナの話が聞き入れられる事がなく拘束されそうになるところ。そこから始まる騎士達の攻撃に、ずっと蒼い顔で微動だにしない姿。もろもろが映し出されていた。
余す事なく流れた映像に伯爵はずっと口元に手を当てて険しい顔をしていた。
「それから、こちらは私が個人的に調べた結果です」
続けて見せたのは、騎士を買収しているジャンニの姿と、教会内部の警備計画を盗み見ている同じくジャンニの姿。
「先程、聖女見習いを拐かそうとしたと証言した騎士達です。こちらの男も、前々から聖女見習いを攫おうと計画していたようです」
伯爵は目を伏せてため息をつくと立ち上がり、外套掛けに掛けてあった外套を取って羽織った。
「移動はそなたの魔法で良いか?」
「感謝いたします」
リカルドは頭を下げて、狐面を取り出した。
「それを使うのか?」
「顔は出来れば見られたくないのです。警戒されるとは分かっているのですが、顔に火傷をしているという事にしていただけませんか?」
「……なら、もう少しましな仮面はないのか」
指摘されて、マシな仮面……と考えるリカルド。出してみたのはファントムマスク。記憶にあるのは鼻から上の左側を隠すものだが、出したのは鼻から上全部を隠すものだ。
「………まぁ、マシだろう」
微妙な反応だったが、許可は貰えたのでリカルドはすぐに転移を行った。
場所は教会の裏門だ。
そこは夜中にもかかわらず篝火が焚かれた厳戒態勢で奥からは多くの人が騒ぐ声や何かが壊れるような音が続いていた。
「こちらです」
案内するリカルドに従って伯爵も敷地に足を踏み入れ、すぐに気づいた教会の人間が止めようとして、伯爵の顔を見て動きを止めた。
「悪いがダグラス神官を呼んできてくれないか。この騒ぎについて確認したい事がある」
伯爵の頼みに慌てたように駆け戻っていく姿に、本当に教会に顔がきくんだなと呑気に考えるリカルド。既に樹を避難させているので随分と精神的に余裕が出てきていた。
「教会側に被害が出ている状況だ。ある程度こちらも非を被る事になる可能性があるが……」
走りながら確認してくる伯爵に、リカルドは頷く。
「被害に関しては全て修復します。怪我人も残しません」
「普通なら大言をと笑うところだが、そなたであれば可能なのだろうな」
「出来ない事は申しません。
子供の姿を確認したら話を聞いてもらうため、強制的に全員の動きを封じます」
「わかった。そこからは引き受けよう」
さらに奥へとリカルドは進み、樹(デコイ)を取り囲む教会騎士達の姿を認めた瞬間、全員をバインドで縛って動きを封じた。
「これは一体何事だね?」
唐突に生まれた静寂の中、伯爵の声がよく通った。
リカルドは視線が伯爵に集中している間に樹(デコイ)に近づいて、樹(デコイ)が気絶したように見せかけて腕に抱いた。
そこにゆったりと、伯爵が騎士の間を縫うように歩いてきて口を開いた。
「この子供は私の知り合いの子だが、これほどの騎士達に囲まれるような事をしたのかね?」
首を緩く傾げて確認するように周囲を見渡す伯爵。その姿と言葉に、伯爵の知り合い? と、動揺が広がったようにリカルドには見えた。
だがすぐに反発するように一人の騎士が声を上げた。
「聖女見習いを攫おうとしていたのです! 捕らえようとしたところ激しく抵抗したため已む無くこのような事になっているのです! 教会内部での事、干渉はお控えいただきたい!」
己の言葉に嘘偽りない事を信じている目で縛られたまま訴える騎士に、伯爵はつと視線を樹(デコイ)へと向けた。
「批判しているのではない。私は尋ねただけだ。
まぁ、私には両手を上げて怯えていたように見えたのだがね」
「なっ……この惨状を見てそのような事をおっしゃるのですか!?」
「惨状は――たしかに惨状ではあるが」
リカルドは伯爵の視線を受けて、説明のために口を開いた。
「抵抗、という部分に関しては謝罪いたします。親が子の心配をするあまり、敵意ある行為を全て弾く護符を持たせていたのです。
過剰な護符を持たせた親を責める事は受け入れますが、抵抗の意志も無かったこの子にその責を負わせるのはお許しください」
「そのような強力な護符があるものか! 面妖なものを被った怪しい奴めが! まずはその面を取ってからものを言ったらどうだ!」
気が昂っている一人がバインドされたまま唾を飛ばし叫ぶので、リカルドは片膝を地面について樹(デコイ)を支えながら片手で面を取った。
伯爵は良いのか?と思ったが、すぐにその面の下の顔が焼け爛れているのを見て、納得した。器用なことをするものだと少し感心して。
「このような顔をしておりますので、ご不快でしょうがお許しください」
顔全体が引き攣れた醜い姿に、唾を飛ばし叫んだ騎士もぎょっとして一瞬場が呑まれた。
その隙にリカルドは面を戻して立ち上がると、周辺の瓦礫と化した建物を元通りに修復し、焦げて穴の開いた地面も修復し、怪我を負った騎士達の傷を癒して最後にバインドを解いた。
何事もなかったかのように元通りに戻った庭と建物の姿に唖然とする騎士達。自分の怪我が治っている事にも気づかず、剣を構える事も忘れて立ち尽くしていた。
「私からすれば彼は誠意を見せていると思うのだが、これでもまだ冷静な話し合いが出来ない相手だと言うのかね?」
伯爵の問いかけに、答えられる騎士は居なかった。
そこへ神官服姿の男が現れ伯爵に駆け寄った。
「伯爵!」
「ダグラス殿、先日ぶりだな」
「何故あなたがここに?」
ここまで走ってきたのか柳色の優しげな風貌の神官は息を切らせたまま訪ねた。
「知り合いの子が騎士に囲まれて怯えていると聞いたので確認に来たのだよ。
どうやら騎士達とこちらの言い分が違うようだからダグラス殿も共に聞いてもらえるか?」
神官は放心している騎士達と、樹を抱えたリカルドを見て頷いた。
「承知いたしました。こちらへどうぞ」
建物の中へと案内されたリカルドは、横を歩く伯爵に「証拠の絵は見せれるのか?」と小声で聞かれた。もちろんとリカルドが頷き、三人の神官と先程集まっていた騎士とは違う騎士数名が見守る中映像を見せる事になった。
結局、映像をその場で信じてもらう事は出来なかったが、逆に偽物であるとも断じられる事はなく、そのままジャンニの家を確認する事になった。結果は黒で、クシュナの予定が書き込まれた手帳や教会騎士の配備計画の写し、クシュナがこれまで使っていた私物が収集されていた箱が見つかり、その行き過ぎた行為と、浄化を受けたクシュナが泣きながら証言した事が決めてとなりお縄となった。
樹が暮らしているリカルドの家も同じく調べられる事になったが、一度時を止めて帰宅し、庭でウリドールによって植物の根っこや蔦でぐるぐる巻きになった樹(時間停止が解かれ、ウリドールにリカルドが教会にいると聞いた瞬間行こうとしたので止められた)を眠らせて地下の仕事部屋に移動し、その部屋を地下への階段ごと土魔法で塞ぎ、ついでに作りかけの魔道具とか不味いものは全部空間の狭間に隠してから、何食わぬ顔で受け入れた。
準備万端なので何か出るはずもなく、唯一庭を調べられていたらとても不味いものがあったが、一番調べられたのは樹の部屋だったので事なきを得た。
そうして最終的に教会側から謝罪を受けてリカルドは家に戻ることが出来た。
教会はこれから嘘をついた騎士や事実確認を疎かにして過剰な攻撃を加えた騎士達の処遇について検討しなければならないが、そこから先はリカルドにとってどうでもいいし、穏便に事を済ませて帰れただけで御の字だった。
最後まで付き合ってくれた伯爵には、渡す予定だったお守りを渡して感謝を伝え屋敷に送り届けた。
それから樹を地下から部屋に戻しそのまま寝かせた。
そうしてやっとソファに座って一息つけたのだが、外は既に白じみ夜があけていた。
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