第2話 目指せ人の国

 拓海の中では疑問が一杯だった。


「落ち着こう。落ち着こう。ちょっと落ち着こう」


 言い聞かせるように繰り返し、深呼吸をする拓海。既に呼吸が必要ない身体になっているが、習慣とは大したものでそれで少し落ち着く事が出来た。


「無限魔力、虚空検索アカシックレコード、鑑定を貰ったんだよな。で、来てみたら、これ」


 全然全くもって話が繋がらなかった。


「あ、鑑定。っていうか虚空検索アカシックレコードだ」


 こういう時こそ全てが記録されているという虚空検索アカシックレコードの出番だと思いつく拓海。

 どうやって使うんだと思った瞬間だった、いきなり目の前が一瞬暗くなった。


「……?」


 だがすぐに視界は元に戻り、首を傾げる。

 何だったんだと思いつつ、また虚空検索アカシックレコードの使い方を考えた時だった。目の前が一瞬暗くなった。そしてすぐに戻る。


「………うん?」


 もう一度虚空検索アカシックレコードを意識した瞬間、目の前が暗くなり、そして戻る。

 同じ事を繰り返していたのだが、傍から見るとかなり怖い光景が広がっていた。


 拓海が虚空検索アカシックレコードを使用した瞬間、とんでもない負荷に頭蓋骨がパーンと破裂していたのだ。

 脳みそがあればそれもパーンとして惨事になっていたが、幸いにも?リッチだったため、魔力による疑似頭部なので魔力が飛散するだけに留まっている。

 そして(骨しかないが)腐ってもリッチ。即座に復活しており、さらに基本的には精神体が本体であるため痛みも感じない。

 何度も頭蓋骨がパーンとなり復活を繰り返すやばい奴になっていたが、未だ本人は状況が理解出来ず首を捻っていた。


 十回程繰り返したところで拓海は、鑑定の存在を思い出した。

 そうだ。まずは鑑定からやってみようと、心の中で鑑定と念じてみる。

 すると、自分自身のステータスのようなものが確認出来た。


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田中拓海(改名可能)

種族 死霊魔導士リッチ

HP 3285/3303

MP ∞/∞

STR 312

VIT 618

DEX 630

AGI 712

INT 1089

LUK 9

ギフト 無限魔力、虚空検索アカシックレコード、鑑定

スキル 魔力操作 LvMAX

    魔力吸収 LvMAX

    瘴気生成 LvMAX

魔法  死霊術 LvMAX

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 見なかった事にしたかった。


 そういうわけにもいかないかと、拓海は気力を奮い立たせて虚空検索アカシックレコードに対してさらに鑑定を使用した。なるべく種族の部分は視界に入らないようにして。


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虚空検索アカシックレコード

元始から無数の未来にかけてすべての事象、想念、感情が記録されている

接続には最低1万の魔力と魔力強化した接続媒体が必要

接続者の望む情報を与える

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「……接続媒体?」


 何か道具が必要なのだろうかと首を捻る拓海。


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接続媒体

 →思考能力を持った頭部または魔道具または精神核

------


「あぁ、頭って事か。……魔力強化って?」


 精神核が何かはわからなかったが、頭部があれば問題ない事がわかり次の疑問に映る拓海。

 もしここで精神核について詳しく知ってしまえば、不用意に虚空検索アカシックレコードに接続して存在ごとパーンしていた可能性もあったが、ギリギリのところで回避していた。


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魔力強化

 →魔力により強度を高める事

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「なるほどわからん」


 やけっぱち気味にフンと頭に力を入れて見ると、魔力操作LvMAXが仕事をした。本当に頭部に魔力が集中し魔力強化を可能としたのだ。

 ちなみに生まれたばかりでギフト以外にスキルを獲得ししかもLvMAXなのは、拓海が元いた世界から存在値を運んできた時、残り香のようなものが魂に染みついていたからだった。ほんの残り香で生まれたてのリッチを、歴戦のリッチに格上げしていた。


 なんとなく、今ならいけるのでは?と思った拓海は虚空検索アカシックレコードを意識した。


 途端、脳裏に膨大な情報が流れ込んで来た。

 この惑星が誕生する前、宇宙空間が始まり時が流れ始めた瞬間からの記憶が怒涛のように押し寄せてきて早々にパーンした。


 視界が一瞬暗くなり、再びクリアになったところでようやく拓海は気づいた。


(今、もしかして逝っちゃってた?)


 リッチである身体に感謝したいようなしたくないような複雑な気持ちになる拓海。


(今のは知りたいことをハッキリと考えていなかったから全部送られて来たって事かな……)


 気持ちを切り替えて、検証を続ける。先ほどと同じように頭部を魔力強化して虚空検索アカシックレコードに接続。何故自分はリッチなどになっているのかという、その時一番疑問に思っていた事を問いかけた。

 その結果、嫌な回答が得られた。


 無限魔力、虚空検索アカシックレコード。この二つをリスクなしに保有できる種族がそもそも少なく、そのうちの上位種族は軒並み既に規定数存在していたため、残る種族の中で拓海の幸運度によって選択されたのがリッチというわけだった。


(己の所為か……)


 じゃあ一体あの時俺は何を選んでいたら良かったんだと嘆く拓海。

 だが数秒で復活して次の思考に切り替わる。いいのか悪いのか、精神体であるリッチの高い精神耐性で復活が速かった。


(ま。なっちまったものは仕方がない。……あぁでもこれじゃ彼女とか出来ないよな)


 復活はしたが未練はあった。主に煩悩系の方で。


(なんかこう、肉体を得る方法ってないのかな)


 虚空検索アカシックレコードに接続して、次々と情報を得ていく拓海。と、同時に時々曖昧な検索をかけてしまい負荷に負けてパーンしていた。

 パーンしながら得た情報によると、肉体を得るには数万の人間の血を捧げる還魂の呪法があった。拓海は即座に却下した。数万の人間の血とか想像するだけで駄目だった。


 他にないのかと調べると、今度は仮初の肉体を纏う方法があった。

 魔力操作により肉体をイメージして纏うのだ。これなら出来そうだと早速試してみる拓海。とりあえずやってみると、あっさりと普通の腕と手が見えてほっとした。

 見ないようにしていたが、やはり視界をちらつく自分の骨に地味にダメージを受けていた。

 顔も触ってみると自分の顔に出来た気がするが、鏡がないのでよくわからない。目と鼻と口がちゃんと出来ている気がするのでそれで良しにした。


 落ち着いたところで、ここはどこだ?とようやく状況に意識が回る。

 そこで確認して、自分が魔族領と言われる行きたくないと思っていた超脳筋思想の支配領域に居る事を理解した。


「……まじか。どうしよ」


 出来れば穏やかな思想をしていそうな妖精族っぽいところとか、陽気な小人族っぽいところに行きたかった拓実だが、そちらの種族は他種族に対して排他的。リッチである拓海が行ったらどうなるかお察しだ。

 となると、行先はもう一つの女神を信奉している人間が治める国々になるわけで、そちらもそちらで人間に紛れてやっていけるのかという不安があった。

 悩んでいると、するりと拓海の足に巻き付いたものがあった。


「へ?」


 一瞬にして宙づりになり、そしてずらりと鋭い牙の並んだでっかい花の口が目の前に飛び込んできて、あまりの光景に拓海は絶叫した。


「ぎゃーーーーー!!!!!」


 同時に、魔力を思いっきり放出してしまった。


 その日、魔族領の北西部で謎の爆音が響き渡り、迷いの森と言われる深い森が一瞬にして蒸発し広大な更地が出来上がった。


 暫く意識を飛ばしていた拓海はハッと気が付いた。

 なんだかやけに整地された感じの地面に違和感を覚えつつ身体を起こすと、おどろおどろしい森の中にいた筈なのに随分と視界が開けていた。軽く地平線すら見えた。


「……」

 

 何が何やらわからず、しかし何かやらかした気だけはする拓海。

 おそるおそる虚空検索アカシックレコードで確かめ、己のしでかした惨状を把握した。

 そこは植物系の魔族、千年呪木ウリアネスが支配する地域で彼の土地のおよそ半分近くをごっそりと吹き飛ばしていた。


「――逃げよう」


 殺されると思った拓海は、すっくと立ち上がった。

 幸いだったのはウリアネスが植物系の魔族で機動力が他の土地持ち魔族と比べても低い事だった。

 走り続ける事一昼夜。疲れを知らない身体で爆走し、いつの間にか渓谷を二つ三つ超えて魔族領を抜けて人間の土地へと入り込んでいた。

 黒々とした木々ではなく、普通の蒼く茂った木々が見えてちょっと気が緩む拓海。


 だが、不意にその蒼く茂った木々が急速に枯れ始めた。

 何事かと急停止し、辺りを見回す拓海。しかし自分の他には誰もいない。何が起こっているんだとビビりながら虚空検索アカシックレコードで調べて理解して突っ伏した。


 リッチは高位不死者に属し、周囲に多量の瘴気を撒き散らす。

 普通の人間であれば一瞬にして精神汚濁し廃人となり、意志の薄い植物は生命力を手放し枯れ果てる。


(行けない。このまま行ったら、歩く公害どころか歩く災害だ)


 なるほどリッチは人間にとってすげーやべえ奴なのねと突っ伏したまま理解する拓海。

 しかし精神耐性が以下略。すぐさま復活して再度虚空検索アカシックレコードに接続。瘴気を出さない方法を探した。


 その結果、聖結界というものを張ると抑え込めるという事がわかった。

 が、聖結界は聖魔法。拓海が使用した場合はもれなく反発ダメージを受ける。お手上げかと一瞬思う拓海だったが、いやまだだと頭を振る。必死に考えて、その反発ダメージを抑える事が出来ないか調べたが、良さげな答えはなく終いには頭がパーンとなった。

 だが一回パーンしたことで冷静になり、ちょっとアプローチを変える拓海。今やパーンはブレイクタイム代わりだった。


 反発ダメージを抑える事が出来ないなら、何か別のものに肩代わりさせる事は出来ないか。例えばお守りだとか紙の人型だとかそういうものに。それは霊障に対する対応と同じ考えからきた案だった。


 そしてその答えは思ったよりも良いものだった。

 精神体であるリッチの特性としてダメージを魔力で受け止めるというものがあったのだ。

 聖結界の張り方は既に把握済みで、魔力でダメージを受ける止める方法も確認。拓海は己の中でそれを確認し、えいやっと己の身体にそって聖結界を張ってみる。

 軽く己の身体が輝いたかと思ったが、それ以後は特に変化はなかった。ダメージも、無限魔力のせいで魔力が削られているのかわからないが、とりあえず痛いとかそういう事はない。

 それからおそるおそる、まだ生い茂っている木々の方へとそろそろりと足を動かした。そして近くまで行って、ぺたりと木の幹に触れてみる。


「さ、触れる」


 自分で自分を聖結界に閉じ込める謎のリッチの完成だったが、拓海としては非常に満足だった。


 いろいろと気疲れしていた拓海だったが、まだまだ魔族領側に近い。こんなところでは先ほど吹っ飛ばした土地の主殿が怒ってやってくるかもしれないと、そそくさと走り出した。


 ちなみに人の肉体を纏った拓海は、中肉中背、特にこれといって特徴のない黒目黒髪、凡庸な人の姿をしている。そこに重たそうなローブを身につけているので、一見すると冴えない人間の魔導士にも見える。


 山の中を掻き分け、道なき道を進みまくり、なんとなく人が踏み固めたのではないかと思われる道まで出た時には泣きたくなった。あぁようやく、と。

 人の痕跡に触れてこんなに嬉しかった事が人生の中であっただろうかと思い返しつつ、ちょっとその場に座り込む。

 肉体的には疲れていないのだが、気疲れしまくっていた。


「……あー……空が青い」


 この世界も空って青いんだなぁとしみじみする拓海。

 ふと、そういえば自分は転移じゃなくて転生系じゃないのかと思った拓海は、その辺りの事を虚空検索アカシックレコードで調べてみた。


 情報過多でちょっと頭がパーンとしたが、今更そんな事気にならずそれよりも判明した事実に固まる。

 何者かわからなかったアレは、この世界の管理者のような存在で拓海の魂を引っこ抜いたところに向こうの世界の存在値をちょっと拝借して乗っけ、そのままこちらの世界に取り込んで拝借した存在値を有効活用しているらしかった。

 そして引っこ抜かれた拓海の身体は存在を保てなくなり消えていた。


 ギフトが与えられたのは存在値の配達料みたいなものだった。あの時点で既にこちらの世界側に入っていたので、ギフトを拒否してもそもそも戻る器も無かった事になる。

 拓海が選ばれた理由は本当にその時のタイミングで掴まれた魂だったというだけ。本当かよと、もっと深く探ろうとしたらパーンとなったのでそこで止めた。

 

「無茶苦茶だ……」


 やっと絞り出した声は掠れていた。

 さすがに、いきなり殺されるどころか存在事抹消されていた事実に怒りがわいた。

 だが同時に怒りを抱いたところでどうする事も出来ない相手であると理解もしてしまった。存在している位相がそもそも違うので手の出しようが全く無い。


 一体自分はこれまで何のために生きていたのだろうかと怒りが段々と虚脱へと変わっていくのを感じる拓海。

 しかも現在はリッチである。29年生きて来たアイデンティティが足元から崩壊するような感覚であった。

 だが、悲しいかなリッチである。精神耐性以下略のためすぐさま気を取り直してしまった。

 ポイ捨てされたに等しい状況に、もうこの世界で好き勝手にすればいいって事だよなと解釈した。


「どーしよっかなぁー……」


 なにせリッチである。食事不要、睡眠不要のほぼほぼ固定費不要な存在だ。正体を隠し通せれば人間の国はどこでも行き放題だし、どこでも生きていく事が出来る。存在的には不死者だが。


 どこか深い森のなかでひっそりと暮らす事も出来るが、拓海としては人がいるところで暮らしたかった。

 こうなったらファンタジーな生活をしてみたかったし、ファンタジーな出会いにも心惹かれるものがあった。


 となると、人の国の中でどこが暮らしやすいかである。

 どこがいいかなぁと虚空検索アカシックレコードで調べて見ると、今いる魔族領との境界に面しているヒルデリア王国のさらにいくつか国を挟んだ北、グリンモアという小国がよさそうだった。


 ヒルデリアは魔族領に接しているだけあってゴリゴリの軍事国家で、非常に戦力の高い人間が多いところだった。最前線で戦う者が多いため、感覚も鋭くひょっとしたら自分の存在がバレるかもと拓海は思ったのだ。


 それに対してグリンモアという小国は農業国家で、支配階級でさえ畑仕事に精を出すという超絶のんびり国家だった。

 周りの国は豊かなグリンモアを手に入れようとした事もあったが、一度グリンモアの西側にある国が征服した時に国民全員が国外へと逃げ出したのだ。そこで判明したのが、国土が豊なのではなくて、グリンモアの国民が総じて緑の手の持ち主で豊かな実りを支えていたという事だった。緑の手を失った土地で取れる作物の量は限られており、結局西側の国は周辺国を味方につけたグリンモアの王族によって撤退戦を余儀なくされ、最終的にはちょっと領土も取られてしまった。そういう経緯があって、実り豊かな穏やかな国ではあるが、どの国も食糧庫的な意味で手を出してはいけないと認識されている国であった。


(そうそう、こういう穏やかなところがいいんだよ)


 さっそく拓海は進路を確認。意気揚々と歩き出した。


 歩き始めて一週間。鼻歌交じりに昼夜気にせず進んでいくと、深い渓谷のその先に目指す緑の国グリンモアが見えたのだった。

 やっと着いたと浮かれ気味に国境へと近づいた時、リッチとしての本能が足を止めさせた。


 何か、目の前にある。

 危険信号とまではいかないが、感覚に引っかかるようなものがあり調べてみると、なんと聖結界が張られている事がわかった。

 しかもグリンモアの国境をぐるりと一周する形の超巨大な聖結界が施されており、魔族の、とりわけ危険度が高い中位以上の侵入を防ぐ事が目的のようだった。


(ここまで来て入れないとか……)


 頼むよ虚空検索アカシックレコードさんと縋りつく拓海。

 だが中位魔族以上が気づかれずに聖結界をすり抜けるのは、ほぼ不可能だった。

 ほぼ、というのは魔族の中に堕天使という種族があり、彼らであれば昔取った杵柄で聖結界に干渉して侵入可能とあったのだ。


 聖結界への干渉、それやりたいと思う拓海。

 だが拓海はリッチ。出来るのだろうかと不安に思いつつも頼むぜ虚空検索アカシックレコードさんと拝みながら調べると、無情な答えが返ってきた。

 他人が張った聖結界に干渉出来るのは神族、天使族と、堕天使族だけだった。

 

 拓海は崩れ落ちた。

 ここまで来て、駄目なのか。目前まで来ていたので、ちょっぴり涙が(妄想の中で)出そうだった。

 だが拓海は復活した。リッチなので以下略。


 今度は逆に、聖結界は何をもってして中位魔族以上を特定しているのか。そこから攻めた。

 聖結界が特定しているのは、主に魔力の質と瘴気だった。

 この事実に拓海は、勝つる!と思った。

 現在拓海は緊縛プレイさながら、自分を聖結界に閉じ込める謎のリッチだ。普通ならあり得ない事だが、外側に拓海の瘴気は漏れ出ていない。

 あとは魔力を抑えられれば行ける。そう考えたのだ。


 急ぎ虚空検索アカシックレコードさんに魔力を抑える方法を教えてもらい、早速実践する。ここでも仕事をしてくれる魔力操作LvMAX。拓海の意を汲み、漏れ出ている魔力を全て仮初の肉体の中に閉じ込めて一切外に出ないようにした。

 その状態で通過可能か調べると、肯定の結果となり、良しと拳を握る拓海。

 ドキドキしながら拓海は一歩踏み出した。

 大丈夫な事は確認しているが、もし駄目だったら急いで逃げよう、そう思いながら。


 結果は、何事もなく踏み出せた一歩で明らかだった。

 よっしゃーー!!とガッツポーズを取る拓海。

 そして意気揚々と人里目指して駆け出した。気分は山中彷徨ってようやく見つけた山小屋に駆け寄る人のそれだ。


 幸い途中で川を見つけて、ハイテンションがちょっと落ち着いたのでそのまま人里に突撃する事はなかった。


 ここまでひたすら歩きどおしだったのでそこそこ汚れているよなと、そこで水浴びをする事にしたのだ。

 どちらかというとローブを洗おうとしたのだが、そこで拓海はローブが身体の一部である事に気づいた。正確には魔力で出来ており、拓海が手放そうとするとフイっと虚空に溶けて消えてしまったのだが。


 ローブの下には何も着ていなかった拓海は一瞬呆けてしまったが、慌てて虚空検索アカシックレコードでローブの出し方を調べ事なきを得た。まさか露出狂になりかかるとは思ってもみなくて冷や汗(妄想)をかいた。

 だが、ローブの出し方がわかると衣類の出し方も同じ要領でわかったので、下着にTシャツ、ズボンと頼りないローブの中身をちょっと強化した。

 これで杖とか持ってたら完全に魔導士だよなと拓海は思ったが、ふと水面に移る自分の顔に気づいて覗き込んだ。


 そこには見事に自分の顔そのものが映りこんでいた。

 あまり表情が動かないのは、表情筋が細かすぎてまだ制御に慣れていないからだったが、なんか顔が固いなーと、もにもに揉んでみる拓海。

 それからまたじーっと顔を見て、ちょっと魔力を動かした。するとどこにでもいそうな凡庸な青年から、十人に一人はいそうな涼やかな感じの青年に変化した。

 

 なかなかいいのでは? と思っていろいろな角度から確認する拓海。

 所詮十人に一人ぐらいなので、街に何人もいそうなレベルではあるがこれまでの自分よりいいので満足してローブを被る。

 やり過ぎれば違和感が酷くて疲れるのは目に見えていた。実に小心者らしい手加減具合だった。


「さあいっくぞ~」


 ルンルン気分で拓海は長閑な村へとスキップしたのだった。

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