第36話 第五の事件! 神代アリス

◾エース


 Bの鉄骨骨組み



 ジャックの元にドローンが集結し始める。

 ジャックは天に浮かぶ三日月のように口角を釣り上げ金色の髪の毛を風になびかせ金色の瞳で私たちを俯瞰する。

 ドローンは銃弾とミサイルを雨のごとく発射してきた。

 鉄骨の上で身動きが制限されている私たちは逃げることができない。

 でも隆臣は私の脳にアクセスして無数の銃弾を防ぐ最善手を確認。それ実行。

 一つの銃弾を指で弾きその他の銃弾と衝突させることでたくさんの銃弾の軌道をらす。

 その銃弾がまた別の銃弾や小型ミサイルと接触することで次々と軌道が逸れていく。

 それでも対処しきれないものは、ジョーカーのガイスト能力――万有引力操作を利用して被弾を防いだ。

 直後、ジャックのところに左肩を負傷したエミールが額に汗を浮かべながら戻ってきた。



「エミール、その傷……」


「気にするな。それよりさっさとこいつらを片付けるぞ」



 エミールはジャックにそう言って足元の鉄骨を踵で軽く蹴った。



 ――ゴーン!



 低い音が響き鉄骨全体に微かな振動が伝わる。

 私は第九感で高速演算を開始する。結果は1秒もかからずに算出された。

 ジャックのガイスト能力は振動を衝撃波に変える能力。今のこの状況……避けられないっ!

 すなわち鉄骨全体から空気に振動が伝播しそれを衝撃波に変えることであらゆる角度からの攻撃が可能というわけだ。

 エミールは最初からこれを狙って工事現場を選んでいたのだ。

 そして陽炎かげろうのような衝撃波が私たちを襲う。

 私たち衝撃波をモロに食らい、吹き飛ばされて地面に真っ逆さま。

 このままだと隆臣たちが……っ!



「ジョーカーっ!」



 凛の決死の叫びを聞いたジョーカーが凛、隆臣、ナディアと上方の鉄骨との間の万有引力を強めることで3人は激突することなく地面に到達した。

 ふぅ、ほんとうにどうなるかと思ったよ。さっすがジョーカー、本当に頼りになる。私は胸を撫で下ろした。ペッタンコじゃないもんっ!



「みんな無事か?」


「はい」


「なんとかね」


 隆臣の問いかけに凛とナディアは衝撃波攻撃による負傷の痛みに顔を歪めながら答えた。



「チッ! まだ生きてんのか」



 舌打ちしてエミールはジャックと共に地面に降り立った。

 ジャックはそのときの地面の振動を衝撃波に変えて私たちを追撃。

 ナディアのロザリオを持っていたジョーカーが前に出て衝撃波を防いでくれる。

 エミールは前髪を掻き上げ、



「1つ忠告してやろう。俺らごときに手こずってるようじゃあ命がいくつあってもボスには勝てねぇ。強力なガイストに加えて強力な第八感あるいは第九感を保有しているか、それとも真祖か眷属の極一部が唯一まともに戦うことができるだろう。それほどボスは強い。お前たちみたいなザコがいくら集まろうと、あのローヤル・ストレート・フラッシュにとってはそこらへんでクソして回る犬ころ同然なんだよ」



 少し間を開け、最後に、



「ボスはプトレマイオスだ」



 と言った。

 その言葉に私たちは驚愕した。

 プトレマイオスとは能力者や魔術師に能力や魔法を使った暴力行為や略奪行為などの犯罪行為をさせない抑止力として魔法院が定めた48人の能力者や魔術師のことである。当然強力な能力や魔術を保有していなければ選出されない。



「ジャックトドメを――」


「――そこまでよ!」




 エミールの声に被って突然聞き覚えのない声が工事現場入口付近から響いてきた。



「気にするな。やれ」



 スカイ・ワンダーによる弾幕が張られるその直前、辺りがパッと明るくなった。

 途端にスカイ・ワンダーのプロペラの動きが停止し次々と落下していく。何が起きてるの?



「どうしたスカイ・ワンダー!」


「Ich verstehe nicht!」



 エミールとジャックだけでなく私たちも混乱していた。

 するとジョーカーは故障したいくつかのドローンを万有引力操作を応用してエミールとジャックに向かって放った。

 ジャックは指を鳴らして空気を振動させガイスト能力で衝撃波に変換しドローンを破壊して命中を防ぐ。



「乱入者の仕業か? スカイ・ワンダーは封じられたが……いや、むしろこれは俺たちにとってプラスに作用する。ジャック今度こそトドメだ!」


「Ja(ヤー)」



 プラスに作用する……? まさか!

 私がそれに気づいたときにはすでにジャックは地面に落下したドローンの衝撃を増大させ衝撃波を発生させる寸前だった。

 360度からの攻撃……これはナディアのロザリオでは防ぎきれない。こんど衝撃波を食らったら確実に身体中の骨が砕き折られるっ!

 絶望的状況……だけどそれに絶望しちゃダメだよ! 最後の最後まで打開策を考えるんだっ!

 私が分割高速演算思考を開始しようとしたそのとき、ジャックの左胸から血が吹き出し、



「Oh Gott!」



 ジョーカーが能力を駆使して鉄骨のナットを緩めて外し、そのナットとジャックとの間にはたらく万有引力を強化することでジャックに攻撃をしたのだ。

 さらにジョーカーはボルトも外してジャックに放つ。ボルトはナットが入り込んだ傷穴に突き刺さった。

 ジャックは白い光となってエミールの体内に戻っていった。ナットとボルトが地面に落ちる。



「勝負あったな」



 隆臣は安堵混じりの声で言った。



「今のはジョーカーだな?」



 エミールが静かに尋ねる。



「ええ。万有引力操作にまだ慣れてないからナットを緩めるのに一苦労だったけどね」


「そうか……」



 エミールはAの鉄骨の方を見て、



「どうやらエミリーとクイーンも負けたようだな。俺たちの完全敗北だ」



 素直に敗北を認めた。



◾隆臣


 俺たちは集まり颯爽と現れてスカイ・ワンダーを無力化した少女の自己紹介を聞いていた。



「手早く自己紹介させてもらおう。私は神代かみしろアリス。和也に依頼されて今日は来た」


「まさかよりによってあんたが来るとはね。でもあんただけ? 他のメンバーは?」



 ナディアがアリスに尋ねると、



「吸血鬼事件とミンチ事件で手一杯なの。あたしはたまたま手が空いていたからこの依頼を受けたのよ」



 アリスという少女はそう答え、



「ナディアも和也に呼ばれたんでしょ?」


「そうよ」



 そんなナディアとアリスに俺は、



「2人は知り合いだったのか?」



 と尋ねた。

 するとエースが、


「アリスは世界でたった8人しかいない弾丸を加工して様々な効果を付与させることができる職人の1人なんだよ。その中でも格別な技術を持った天才中の天才でバレット・スミスっていう二つ名を持ってるんだよ。ロザリオ・スミスとバレット・スミス。職人同士で幼い頃から2人は親友なんだよ」



 と、腰に手を当てペッタンコな胸をぐぐいと張って説明してくれた。華奢な体が愛おしいくらいかわいい。



「やけにくわしいな」


「私は隠れファンなんだよ」



 隠れファンだったのか。

 この子……アリスも職人だったのか。すごいな。どうやらナディアと面識もあるみたいだし。

 そしてなんといってもその美貌だ。西洋人らしく鼻筋がしっかり通っていて目はクリクリ。薄い唇はしっかり潤っていて輪郭も幼くてとにかくかわいらしい。



「説明ありがとう。今日はもう支部に戻るけど一連の出来事が終わるまでみんなのサポートをするから明日からよろしくね!」



 アリスはそう言って俺たちに微笑んだ。ちくしょう! めっちゃんこかわいいじゃねーか!



 To be continued!⇒

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【15万PV突破】異世界転生してハーレムがつくりたい? こちとら現実世界でロリっ子ハーレム作ってるんやが? 矢田あい @yadaai

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