第35話 第五の事件! ダイヤの奇策

■尚子


 Aの鉄骨骨組みの下



 私、ハート、クリス、ダイヤは突如現れたドローンに驚愕していた。



「撃ってくるぞ!」



 クリスが慌てた様子で言った。

 ドローン下部から銃弾が放たれる。

 ダイヤは氷の障壁を重ねて被弾を防ぎハートは小型爆弾を投擲してドローンを破壊する。



「ハハハハハハハ! 無駄な足掻きね!」



 クイーンは高笑いして周囲にあるドローンに電気信号を送りドローンを集結させ始めた。まずいな。



「尚子、お前ならこの状況、どうする?」


「あっちが数で押してくるならこっちもそれに対抗するまでだ」



  私は大量のドローンの奥で目を光らせてたたずむエミリーとクイーンを睨みつけた。

 私の横顔を見てクリスとダイヤは、



「ああ、俺も覚悟を決めた」


「……ん!」



 と。

 ドローンの群から無数の銃弾と小型ミサイルによる弾幕が放たれるその直前、ハートは宙に爆薬を撒き爆発させる。



 ――ドドドーン!



 誘爆してその周りのドローンも次々に爆発しドローンは一掃された。

 しかしドローンはすぐに集結してしまう。

 ハートは再びドローンを爆撃。ドローンが集結。爆撃。集結。

 ポシェットに手を突っ込んだままハートは呆然としている。どうやら小型爆弾も爆薬もすべて使い切ってしまったらしい。残るは爆破性能のない火薬のみ。

 ドローンは工事現場の外から際限なく飛んできている。ドローンさえ殲滅できれば活路を見い出せると思っていたがなるほどこれは詰んだくさいな。

 と諦めかけていたが、



「……問題ない」



 ダイヤは一歩前に出た。



「ハート、周りに……炎を、いっぱい」


「え? うん」



 ダイヤの指示でハートは手持ちの全ての火薬玉を周囲にばらまいて火薬玉の温度を上昇させて火をつけた。私達の周りに大きな炎の壁が形成される。

 ドローンの索敵方法が熱感知なら炎で壁を張れば真上以外は索敵されることはない。

 だがドローンを操作しているのはクイーンだ。クイーンが炎の壁に向かって掃射してきたら私達は文字通り袋のネズミだ。

 ダイヤまったく慌てることなく空気中から水分を集めそれを炎にぶっかけた。

 ダイヤは一体何がしたいんだ? ヤケになったか?

 炎と水は互いに消え大量の水蒸気が発生した。



『?』



 エミリーやクイーン、私やハート、そして使い手たるクリスにもダイヤが何をしたいのか理解できなかった。



 ――キチカチカチキチチ



 そんな音とともにドローンが次々と落下していく。

 ダイヤを除く誰もが混乱する。

 しかし数秒経って少しずつ状況を飲み込むことができた。

 ドローンを見ると表面が凍りついていたのだ。



「まさかダイヤ水蒸気を凍らせて……」



 クリスの言う通りダイヤは水蒸気を凍らせることでドローン内部のプロペラ機構を凍らせてしまったのだ。



「そんな……こんな酷いこと……」


「くっ……!」



 そのとき、



「そこまでよ!」



 聞き覚えのない声が突然工事現場に響き渡った。

 声の方向を見るとそこにはタイトで動きやすそうな服装で背中にMMOの文字と平和の象徴たるハトとオリーブのマークが刺繍されたの着た中学生くらいの女の子が立っていた。

 両太もものところに拳銃のホルスターがありベルトにはいくつかのマガジンが取り付けられている。

 少女はエミリーとクイーンに拳銃を向け、



「エミリー、クイーン! ただちに戦闘をやめなさい!」



 と叫んだ。



「MMO……チッ! また、めんどうなのが増えた」


「今日はどうしたの? 殺されに来たの? まさかそのためにわざわざ日本まで来てくれたってわけ!? かんど〜うっ!」



 と、エミリーとクイーン。

 少女は淡々と、



「朱雀の宿主として玄武の霊核の回収任務を受けただけ。そのついでにアンタたちも逮捕しに来たのよ」


 と答える。

 IMMO――International Magic Management Organization――国際魔法管理機関。

 魔導魔術、魔導具、上級感覚、ガイスト、吸血鬼、魔獣、神霊に関しての国際組織の1つで魔法院と呼ばれる総本部はイギリスのロンドンに設置されている。

 そしてこの少女は、IMMOの支部組織であるMMO東京支部から派遣されて来たのだろう。



「ふーん。ま、どうでもいいわ。クイーン、まとめてやっちゃって」



 エミリーの言葉でクイーンはダイヤの能力効果範囲に入らないようにドローンを操作し私たちと謎の少女に攻撃しようとする。

 するとMMOの少女は空に銃口を向けそして引き金を引いた。

 瞬間、辺りがパッと明るくなり、次々とドローンが落下する。



「なッ!」


「どうして……」



 目を見開くエミリーとクイーン。

 2人は一旦距離を取るために後方の鉄骨の上に跳び乗ろうとした。

 しかしクイーンの体は仰向け状態で宙に浮かんでいた。



「え?」



 エミリーとクイーンがMMOの少女に気を取られていた隙にダイヤがクイーンの足元に氷を張っていて、クイーンはそれに足を滑らせたのだ。



「……取ったっ!」



 ダイヤは叫ぶ。

 地面から飛び出した巨大なつららがクイーンの肩や脚背中に突き刺さった。



「う……くッ!」


「クイーン!」



 エミリーはジャンプに失敗して尻もちをついていた。



 To be continued!⇒

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