かくして至るのは
シロガネマヨイ
第一篇
絵を描く。そう形容する事以外出来ない行為であるが、これは実に難儀であった。
自身の中心に存在する確固たる心象が、脈々と血流を辿って指先へと縺れ、解け、溶融して溢れ出る。そのまま霧散しそうになる写像を必死に掻き集めながら、世界から隔絶されている、真っ新な矩形平面へと映し出す。およそ一言で片づけるには惜しく、講釈を垂れ流すのは些か無粋である。
自身の夢の中で藻掻くような、溺れるようなその様は、傍から見ていればさぞ滑稽であろうか。しかし、客観的な目を持つには、真に時を逃していた。方向感覚すら朧げになるような、頭の中で沸騰している倒錯した享楽は、最早苦痛と相違無い感情を伴い、眉間の皴となって自身に深く刻まれている。
其処に至り私は思ったのだ。只、それで良い。私は、絵を、描くことが、出来る。集積し、混線した感情を乗せ、押し付けるように最後の一色をカンバスへと描き入れた。
かくして至るのは シロガネマヨイ @shirogane_mayoi
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