エルフの「王女様」だって、英雄に憧憬れてもイイじゃない! 2
『それに……最終難敵《ラス・ボス》なんですもの……その最期らしく、無様に藻掻き続けるがいいわ、足掻き続けるがいいわ―――そして、やがては……』
特別編
『それに……最終難敵《ラス・ボス》なんですもの……その最期らしく、無様に藻掻き続けるがいいわ、足掻き続けるがいいわ―――そして、やがては……』
魔王カルブンクリスやシェラザード、ササラや竜吉公主達がラプラスの都グリザイヤで激闘を繰り広げている
ラプラス達の思想上・宗教上の象徴ともなっている『大神殿』……それもその『最奥部』では―――
* * * * * * * * * * *
「どうも、こんにちは。 お邪魔させてもらうわね。」
{む?何奴だ、ここへはあの『賢者』しか入れんハズ―――}
「それが入れちゃう……そこんところが、オレ達『悪党』の成せる業―――てやつさ。」
「そぉーーーれにしても、正体判っちゃうと、意外に冴えないオッサンですねえ。」
「いくら邪神といえど、その肩書が無ければ『無職』『ニート』と同じ事のようですね。」
「むさいですわね―――こんなおやぢを慕う女って、趣味を疑ってしまいますわ?」
「とは言え、他人の好みをとやかく言うつもりはない。 それに……弱そうだしなあ。」
自分が手籠めにした『賢者』以外、入る事は叶わないハズなのに、自分の目の前には6人の素性不明の者が立っている。
その事に邪神アンゴルモアは、まず疑問に思うのですが……
うぬうう?どう言う事だ? この区画に入る許可を与えているのは、ワシが手籠めにしたあの女でしかないハズ……なのに。
なぜこの者共はワシの封印の場に現れている? 第一あの女自身が死んだとしても、“
そう―――アンゴルモアが思っている通り、その場所こそはアンゴルモアが認めた者しか立ち入ることを赦されていませんでした。
なのに、許可すらしていない……いや、この「教会」に務めている者ですらないこの6人が、この場所に立ち入るいわれが?
なぜ―――なぜだ?何故お前達の様な者がここにいる?
{なぜ―――なぜだ?何故お前達の様な者がここにいる?}
「あれあれ、このおっちゃん可哀想に~。 恐らく今のセリフ、気が動転して頭ン中で思っちゃってることそのまま口に出ちゃったんでしょうねぇ。」(ケラケラ)
「それにしても、なんとも捻りのない言葉。 思っていたより邪神とはこの程度なのですかね??」
「『なぜ―――なぜだ?何故お前達の様な者がここにいる?』それは愛―――!それこそが愛……わたくしとわたくしの愛おしい旦那様との愛がそうさせたのです!」
「お・い、おまいは喋るとややこしくなるから、もう何も言うな。」
「
「何か仰いましたか……『静御前』んんん!」
「やれやれ、一応ひとつの世界の神を相手とすると言うからきてやったが、つまらん……この私を苦しめ―――」
「仕方なく来てやったってんなら仕様がないなあ。 おう、もう帰っていいぞーーー」
「なっ??お、おい!い、今のは言葉の綾と言うものでな……」(オロオロ)
「あんたたち姉妹は揃いも揃って本性隠せないタイプですからねえ~~」(ケラケラ)
{く……このぉ―――このワシを虚仮にしおってぇ!}
頭で思っている事でさえ、つい口にして出てしまう。 今のアンゴルモアには有り得ない事ばかりが満載としていて、頭の中は相当混乱していました。
自分は神であるはずなのに……“
「ごめんなさいね? この人達、色々とこじらせちゃってるから。」
先程から、好き勝手な事をのたまう無礼者達とはまた違う感じをして自分の事を見つめる存在がいました。
髪と瞳の色は淡い蒼、肌色白く匂わせる色香も極上モノ……“清純”を現わす純白のドレスを好んで着ていそうな、エルフの女性……
……………………エルフの女性?
―――そんなバカな?エルフ如きがワシを封印するこの地にどうして??
{―――そんなバカな?エルフ如きがワシを封印するこの地にどうして??}
「封印……そう言う事だったのね、「教会」と言うのは宗教上の理由で偶像を崇める一方、「悪」なる者に対抗する唯一の手段。
なのに、そんな聖らかな場所にどうしてか邪悪な存在がいる。 そしてその邪悪な存在が正義を蝕んで、自分の言いなりにしている……」
そう、この地こそは「封印の地」―――遥か昔邪悪なる神を封じ込めた、由緒ある場所……だった―――はずなのでしたが、ならばどうして「教会」が、『三聖者』が、邪悪なる神を崇め、その者の言い成りに成り下がってしまっているのか。
この女エルフ―――何者だ? 一瞬でこのワシの企みに気付きおるとは……。
ええい、それにしても『賢者』はなにをしておる! 絶対不可侵であるこの場所が侵されているというのに!!
「言っておきますけど、私……あなたが何をしようが―――そんなことに興味はないの。 好きな事を、やりたい事を、自分勝手にすればいい―――」
{何を言っている?そう言うのだったら貴様らの行動は矛盾しておらんか??!}
「まあ聞きなさいな。 好きな事を好きなだけ、やりたい事をやりたいだけする―――と言うのは、今の私にも通ずること。
だからあなたが何をしようが、私には関心がないの。 それに、私がこうなってしまったのも、彼らのお蔭よ―――そう、『悪党』と称する皆さん方のね。」
「おいおいおい、ちょっと待てよ……今のお前の言動、それってアレか?元はおまいも清純派で、穢れを知らない乙女のような存在だとぉお?」
「言ってくれますよねえ?? まあ私達が『混沌にして悪』と言うのは敢えて否定はしませんが……」
「元々のあなた、好き勝手放題ヤラカシたから魔王の座から引きずり下ろされただけでなく、牢獄に繋がれていたそうじゃないの。」
「そんな方に『わたくしどもの所為』―――などとは、言われたくありませんわねええ~?」
「口は禍の元なり―――…」
「う、うるっさいわよっ!そこぉっ! ま、まあ“ちょっと”は話しを盛っちゃったけどぉ……」
「ま、いちおこいつもハンセーしたって事だし、オレに免じて許してやってくれよ。」
「もぉ……兄ちゃんたら彼女にだけ特別なんですからぁーーー」
「団長様の愛は、
「いいえ、旦那様からの愛は是非ともこのわたくしのみに゛!!」(ふんスカ!ふんスカ!)
「鼻息が荒いですぞ……近くにいる
また―――まただ……またぞろ、この者達は自分を差し置き、好き勝手な事を口々にしている。
それはまるで、一種のお
{き―――貴様……貴様達は一体何がしたいのだ!?}
「あら、ごめんなさいね? この人達の所為ですっかりと本来の目的を忘れちゃうところだったわ。」
{なに…?貴様本来の目的だと?}
「この世界の邪悪なる者にして神なる存在―――アンゴルモアよ……この私こそは『イラストリアス』。 この私の世界では「エルフの魔王」として君臨していた者。
その私があなたの世界にいる理由なんて、判り切った事でしょう?」
この者も……『魔王』?だ、と?? いやしかし
アンゴルモアも、魔王カルブンクリスが治める魔界には「魔王は一人しかいない」と言う事を知ってました。
それに、相対的に戦力だけをみていても自分の
それに、今では邪神である己が身を“封印”する地も、「教会」の“
自分は
なのに―――…
どうして―――…
「ねえ―――あなた、コレに見覚えはない?」
{(??)それは―――? あの『グリマー』……エルフの王女がしていたモノと同じ、『エヴァグリムの誇り』ではないか?}
「うふふ―――ご名答。」
{いや……しかし待て?何故それをお前が持っている? その装飾具はあの世界の……}
「ねえ―――どうしてだと思う?」
その言葉を聞いて、アンゴルモアはそら恐ろしさを感じざるを得ませんでした。
そう、どうしてその世界とは違う世界の者が、その世界では『
「そう―――あれはいつの頃だったかしら……私達の世界にあの人がひょっこり現れてね、あの人があの人の世界に帰るまでの間、私達は共に過ごしたの。
帰るまでの時間、共に喜び、怒り、哀しみ、楽しむ……その中でも一緒に冒険をしたのがこの私の中に深く刻まれている……。
そしてあの人が帰る間際に、それまで培った友誼の証しとして、あの人の意志でこの私に
だけどね……最近になってあの人から
なぜ、別の世界の「エルフの魔王」とやらが、『グリマー』として敵視しているあのエルフの王女の装飾具と同じ物を身に着けているか、理由は知れました。
それに薄々ながら、この世界に来ていると言う理由も―――
{い、いやちょっと待ってくれ。 『グリマー』であるあのエルフの王女と魔界の魔王との戦争は、我々の間での問題だ。 そこを関係のない第三者でもある貴様らからの介入を受ける謂れなど―――…}
「でぇ~すよねぇ~~。 関係ない―――っちゃあ、ない……ですけどお~?」(ニヤニヤ)
「フッ―――喜ぶがよい、アンゴルモアとやら……お前はどうやら気に入られてしまったようだ。 故に観念した方が好いぞ。」
「うふふふふふふふふ、しーーーかし笑っちゃいますよねぇ? だってあなた、あなたも別世界である魔界を侵略しようとしているじゃありませんか。 それを、ただ「第三者だから」という理由のみで、私達を否定しますか?」
「
「おいおい、それをお前が言っちゃあオシメエダヨ。」
この「エルフの魔王」『イラストリアス』とやらの仲間も、この者の今回の行動に関しては反対だった?? いやしかし、ならばどうして恭順な態度を示し、同じくついてきているのだ??
アンゴルモアにとっては、それこそがまさに不可解―――そのものでした。
けれども?
「この私ってね、割かし昔から気儘なの、自分勝手なの、自分の想い通りにならないと気が済まないの! だから追われてしまった……「エルフの魔王」としての
今の私は『混沌にして悪』―――そう……この私の事を長年に亘って好いて、愛してくれる『人中の魔王』の庇護の下、「エルフの魔王」と言う肩書だけを背負っている邪悪の使徒。
ねえ、「悪」って何か知っている? それは…やりたいことをする、とても“自由”なことなのよ。 つまり、“
そう、あなたも「悪」なら私も「悪」、そして私の愛する人もその仲間達も「悪」……「悪」が「悪」を駆逐してどこが悪いと言うの? 私は私の気が赴くまま、私の数少ない友人をその手にかけようとしているお前が憎い―――だとて、この私の手で殺してしまっては、お前達やあの人達の歴史を「
〖我が権能の一つである『
この者も「悪」……そして自分も「悪」。 けれど「悪」という理念を正しく理解していた者の方がより「純悪」だった。
そしてなによりの不可解な技、ただその魔王は旋風のようなものを起こしただけでした。 そう……「起こした」だけで、特に何もなかった―――?
外傷はおろか、
「一つだけ、言っておいてあげるわ、これは大サービスよ?
私は、お前を殺さない。 お前を殺す役目は、この私と新たなる友誼を結んだ『熾緋の君』と、私の友人の役目だから。
だけど、何の下準備もないままでは彼女達が勝つことは難しい、だから―――この私がお前の全能力を“弱化”させてあげたの。
とは言っても、今のところは何の変化もないはずよ。 けれど異変は徐々に襲い来る、迫り来る―――残念だけれど、私はお前が弱まってあの人達から嬲り尽くされて死に絶える様を見れないのだけれど……まあ、無駄だとは思うけれど精々抵抗してみなさいな。」
その権能の効力は「風化」、堅い岩が砂に移ろい変わるかの如くに崩れ去り逝き、やがては記憶すらも残されなくなると言う、ある種の“呪い”―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
不可解な言葉だけを残し、「エルフの魔王」『イラストリアス』とその一行たちはこの世界から消えて行きました。
そしてこの後、その者の“予言”よろしく的中してしまう。 『大神殿』にて『大司教』―――次いで『勇者』『賢者』を下したシェラザード達は、この『大神殿』の『最奥部』まで辿り着き…そこで魔王カルブンクリス、シェラザード合力の下に撃退出来た―――けれども、直接戦った2人も、また見ていた者達も感じてしまった事。
なんだか……徐々に能力が弱くなっている様な?
それでいて、抵抗も儘ならぬと言った様に、瓦解をしている…様な??
だからと言って情けはかけられない、何しろこの
だから―――射抜く、「光」を纏った“
エルフの「王女様」だって、英雄に憧憬れてもイイじゃない! 2 はじかみ @nirvana_2020
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