第3話 でも、攻撃力9999ってどんなだ……?
さて、ひとまず世界樹を抹茶にして飲み続けたからこそ、全ステータスがあんなふうにデタラメになったのだと理解した。
でなければ、あんなステータスにはならないだろう。
「でも、攻撃力9999ってどんなだ……?」
ゲームをやっていれば、誰もがカンストステータスを持つキャラの攻撃力は気になるし、試したくなるだろう。
今の俺の心境は、端的に言えばそんな感じだった。
その辺の大木の前に立ち、拳を構えて思い切り放つ……すると。
「……なっ!?」
拳が炸裂した途端、大木がへし折れ、その後ろにあった木々に激突して次々になぎ倒していく。
同時にその余波で周囲の木々もなぎ倒してしまい、へし折れた大木が天高く飛び上がった。
強力な台風でさえこうはならないだろうと言う惨状を目にして、俺は一言。
「森の奥でよかった、人のいる場所だったらとんでもないぞ……」
これが異世界のレベル9999の力、明らかに並みの茶道部員……どころか人間を超越している。
ともかく、さっきまで腹が減らない体になったとかで悩んでいたが、もうその程度の悩みなどどうでもよくなってしまうほどの衝撃だった。
「それに木を殴ったのに拳も痛まないし、皮すら剥けていない。……世界樹の抹茶、恐ろしいな……」
他の異世界人の力がどれほどか分からないが、この力は隠しておくに越したことはないだろう。
悪目立ちするくらいなら、のんびり暮らした方が自分の性に合っているし。
……そう心に誓っていると、突然周囲に暴風が吹き荒れた。
巨大な影にすっぽりと覆われたと思った瞬間、空から声が降ってきた。
『あんただね? あたしの縄張りを荒らしたのはっ!』
その声は鈴の音のようで、少女らしさがあった。
けれどその声音は怒りを孕み、なおかつ吹き荒れる暴風が俺を歓迎しているとは思えなかった。
何事かと顔を上げ……思わず固まってしまった。
全身を覆う赤い鱗に、空を掴むような巨大な翼、トカゲ似だが小山ほどの体躯。
「ドラゴン……!」
流石は異世界、魔物がいる時点で何となく察してはいたものの、まさかこんなところにドラゴンが現れるとは。
「如何にも。あたしは炎邪龍のアイナリア。この辺に住んでるご近所さんってところだけど……縄張りを荒らされちゃあ、黙ってらんないねっ!」
アイナリアと名乗ったドラゴンは、口から炎を散らしながら怒り心頭といった雰囲気だった。
……ドラゴンが喋った!? とか突っ込む間も無く、俺は弁明した。
「荒らすって……いや誤解だ、あの木はたまたま……!」
力試しで木をぶん殴ったら、大惨事になってしまっただけなのです。
特段悪意があった訳では……!
「ふーんだ! たまたま森がハチャメチャになったって? そんなの信じられないよっ!」
「で、ですよねー……」
苦笑しながらアイナリアをどうにかなだめようとするが、アイナリアは「ふんっ!」と口から爆炎を放った。
ファンタジー世界のお約束、ドラゴンの必殺技であるブレスだ。
「ちょっ、待っ……!?」
火炎放射器なんて鼻で笑う勢いのブレスが放たれ、俺の体を包み込む。
そうして端から焼かれ、完全に炭になってしまった……!
……俺の服が。
流石はレベル9999、あんなブレスを食らっても熱くも痛くもない。
「んなっ、服しか燃えてない!? だったら直接吹っ飛ばすんだからっ!」
アイナリアはそう言いつつ、こちらへ突進するように飛行して来た。
「おいおい、だから話を聞けって……!」
と、腕を前に突き出したところ。
「ぎゃふんっ!?」
俺の前に出した両手にぶち当たったアイナリアの巨大な体が、木っ端のように後方に浮き上がり、そのまま木々をなぎ倒してすっ飛んでしまった。
最後にはドスン! と頭から倒れこみ、アイナリアは気絶してしまったらしかった。
「マ、マジかよ……!?」
小山ほどの大きさのあるドラゴンを、たったの一撃で倒してしまった。
やはり明らかに人外の力だ……まあ、だけれども。
「異世界だったら、こんなこともあるか」
自分の身を守る程度の力があると分かったのは朗報だ。
これでまた魔物に襲われても、どうにか切り抜けられるだろうし、これだけの力があればのんびりとした生活にも日曜大工的な方向で役立てられるかもしれない。
「……しかしこのドラゴン、放っておけないよなぁ……」
突っかかって来たとは言え、その原因は一応俺にあるのだ。
起きるまで、他の魔物に襲われないよう面倒くらいは見てやろうと、俺は気絶したアイナリアに近寄っていった。
……燃えた服をどうするか考えながら。
異世界茶道部〜世界樹のお茶でレベル9999になったので、全力でスローライフに活かします〜 八茶橋らっく @YASAHASHI
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界茶道部〜世界樹のお茶でレベル9999になったので、全力でスローライフに活かします〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます