第32話「やること」
「は、羽咲さん!? 何でそんな泣いてるんですか?」
「うっ……だってっ………深奈君が………」
(……あ、まずい)
そこで俺は察する。
今、俺は身体中動かすことのできないほどの怪我を負ってる。今はかろうじて麻酔が効いてて楽ではあるけど無理に動かすと雷に打たれたような激痛が全身を走るのは変わらない。
そんなボロボロの身体が今、正面から抱きつかれていていつでもぽっくり逝ってしまえるような状態だ。
さらに、それに加えて羽咲さん激情モード。
おそらくこの人は感情が昂ると自分で力をコントロールできなくなるタイプの人間だと思う。ゴリラと対峙した時のように。
イコーーーール
俺の最期。
俺はブワッと冷や汗を浮かべる。
(まずいまずいまずい……!!このままだと羽咲さんに殺される!)
ミシミシと抱きついている力が強くなっていく。
(落ち着け。まだだ。まだ焦るときじゃない)
「は、羽咲さーん。あの僕は平気ですので、一回離れませんかー?」
「うっ、うぅぅ、ズッ、うあぁぁぁぁ……!!」
ますます抱きつく力が強まる。
ミシミシミシミシ
「羽咲さん!離れましょ!そろそろいいんじゃないですかー!」
「うぁぁっ、うっ、ぅうう……………うぁぁぁぁぁよがっだぁぁぁぁぁ」
ミシミシぎしぎしぎしギシギシギシギシ!!
「痛い!!痛いです羽咲さん!!!ちょっ、先生ーーーーーー!」
必死に保健室の先生に助けを呼ぶ。
すると颯爽と姿を表し羽咲さんの頭をチョップで叩いた。
「あいだっっ!!」
「ばか、やりすぎよ」
それから落ち着いた羽咲さんは俺に謝った後現在の状況を教えてくれた。
破壊された建物は回復しており、想像以上に速く復興予定らしい。
また、ゴリラにやられた先生たちや戦いで怪我を負った先生たちは皆んな今は元気にやっているらしい。
よって俺だけが今の今まで寝ていたと言うことだ。なんとも恥ずかしい。
また相手が学園長のいない時を狙って来ていたみたいで、この事は学園長が言い始めたらしく、何処か確信を持っていたらしい。
また、学園長が出張から帰って来た時は誰もが震え上がるほどの殺気を放っていたらしい。怖い。
「——まあこんなところかな。言えないことは流石に言わないよ」
「それは言わなくて良いです。ありがとうございました」
何かと抜けているこの人だから、何でも言ってしまいそうでこわいので止める。
「でも本当に良かった。あの巨体の男、深奈君からしたらかなり強く感じたはずよ? ここに来てからまだ一ヶ月しか経ってないのに、よく生きてたと思う」
考えてみれば確かに。
「でもあの時皆んなが来てくれなかったら間違いなく連れ去られてましたよ」
「全く………」
と、そこで保健室にまた新たな客人が現れた。
「失礼します。深奈さんが目を覚ましたと聞いて参ったのですが、お取り込み中でしたか?」
来たのは佐々木さん。すごく低姿勢で礼儀正しいのだろうと思わせるほど華麗な登場。
「いや、そんな大事な話はしてないので大丈夫ですよ」
「そうですか、では入らせてもらいますね」
「佐々木さん!そういえばあれからまだ会ってなかった。ずっとお礼を言いたかったんですよ!」
「はいはい、お礼は受け取りました。では本題に入りますね」
「軽く受け流された!?」
この二人は仲がいいのだろうか。
そういえば羽咲さんの過去について聞いたことなかった。今度聞いてみよう。
「本題と言ってもそこまで重要では無いので気楽に聞いてください。すぐ終わりますので」
「分かりました」
「では。明日の午後一時ごろに私がまたここに来ます。その時はあなたに聞きたいことを聞きにきます。ですのでそれまでにあの日の出来事、会話など思い出せるところは思い出しておいてください」
なるほど。つまり情報提供的なことか。
「了解です」
と言っても思い出せるか分からないけど。
「それとこの後おそらく学園長が来ます。すごく心配なさっていましたよ? 先日も会いに行こうとしてましたが学校が半壊状態なことや怪我人などの処理で手一杯だったのでなかなか来れていませんでした。というか私が止めました」
そうだったのか。心配させたこと、学園長にも謝っとかないと。
「ただ、心配してたのは本当ですが、怒っている部分もありましたよ」
「怒っ……」
まっずい。怒り具合は分からないけど、絶対怖い。
学園最強の逆鱗に触れた男とかで学内新聞に載りそう。
「まあ私からしたらそこはどうでもいいんですけど」
「そうでしょうね!」
だって関係ないもん。
「と言うことで、私は帰らせてもらいますね」
仕事が早いな。まあ他にも仕事があるんだろうけど。
(あ、そういえば!)
帰ろうとドアに手をかけた佐々木さんを呼び止める。
「あ、あの!」
「?」
「最後助けてくれたんですよね、本当にありがとうございました!」
「へ? あ、はい。ど、どういたしまして」
感謝されるのが慣れていないのか、目を丸くして返してくる。
「深奈くん激レアよ!あの常に冷静で物静かな佐々木さんが照れてる!こんなところ今まで見たことあだっっ!!」
佐々木さんが羽咲さんの頭を叩く。
「う、る、さ、い」
「はい、すいませんでした」
佐々木さんが帰った後、急にドッと疲れがきた。
「深奈くん大丈夫?久しぶりに話したから疲れちゃった?」
「すいません。まだ体力が戻ってなくて、久々にこんな話したので疲れたんだと思います」
「麻酔の副作用もあるわね。もう寝なさい。明日も佐々木さんが来るんでしょ?」
「そうします」
そう言い俺はベットに横たわり、布団を自分でかけようとしたとき、羽咲さんの手が俺の手を止める。
「腕もまだ治ってないんだから、私がかけます」
「いや、そんなに今は痛くないので大丈っ——!?」
大丈夫と言おうとした瞬間、羽崎さんの布団を持っている手とは逆の手の指で俺の唇を抑えて黙らせる。
そのまま少し態勢を前に動かし、息がかかるほどの距離で言ってきた。
「——心配なの」
「っ……!」
頭が思考停止している間に羽咲さんが布団をかけてくれた。
全く。我ながら単純な男だなと思わせられる。
「だ、大丈夫?」
「え、あ、すいません。大丈夫です。ありがとうございます」
「また明日様子見に来るから」
「はい。面倒だとは思いますがよろしくお願いします」
そう言うとニコッと笑い、羽咲さんはこの部屋から出ていった。
______________________
あとがき
仕事始まってかつ他の作品の構想練っていたら疲れとストレスがたまって最近だとめまいがします。
だずげで
拉致から始まった裏社会学校生活 飛翔 @riku789
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。拉致から始まった裏社会学校生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます