第6話 クラス状況
教室に戻ってからは特に変わったことはなく、普通に授業を受けていた。
現在は四時間目の社会であり、四十代ぐらいの先生が教科書に書いている出来事についてより詳しく語っていた。
こういった話に対する生徒の反応は様々だ、興味を持って聞く生徒、詰らないので寝始める生徒、この時間を使用して別の事をやり始める生徒などがいる。
大抵の生徒は後者であることが多い、自分にとって有益なことを優先させるのは当然で、歴史を知ることの大切さや楽しさといったことを分かる人は少ない。
僕は前者の方で過去に起きた出来事について詳しく知ることが出来るのは自身にとって大きな価値であり学べることが多いので聞くようにしている。
歴史は人の歩みであり記録だ。様々な人物が考え行動しその結果が乗っている。そこからどんな考えでいるのかなどを知ることが出来る。
一見無価値のように見えるが、それは違うと僕は考えている。環境や技術など様々な点で違うが、問題に対する心構えなどの心に関することは現在でも通じることが多い。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」といった、ひと昔の前の人物が言った言葉が現在の僕たちが聞いても共感できるように長期的な視点で見た時に役に立つのだ。
まあ今している話は僕は詳しく知っているので聞いていないのだが。
自分の記憶が正しければ今話している内容を語るならある程度の時間が必要だ。先生も一度しゃべりだすと止まらないのでそこそこの時間を他のことが出来るということになる。
僕はこの時間で宇野さんの事を考える。僕は宇野さんと別れた後、誠から宇野さん関連の情報を聞き出した。
宇野さんの情報を集めている理由は昼の話し合いの為だ。
宇野さんは沙耶ばあが言った条件についてと言っていたのでそこら辺の細かい打ち合わせをすると考えられる。
宇野さんの性格からある程度の案をすでに考えているだろうから、その案に賛同しておけば考える必要はないが、それはあまりにも人任せであり不安が大きい。
才色兼備の完璧美少女というイメージから大丈夫だろうと考えてはいけない、ミスをしない人はいない。
だから一人に任せず、しっかりミス等をカバーできるようにしておくことが大切だ。
宇野さんに関わることにおいて重要なことはその影響力だ。
宇野さんは非常に影響力が強いので下手に関わると面倒な事が起きるかもしれない。それを回避するためにも宇野さんの立ち位置などを明確にしておくべきだろう。
僕は誠から聞いた話と、現在のクラスの状態などを頭でまとめる。
まず、現状のグループを確認する。
今のクラスは大体3グループに分けれる。
最初に男子グループ、基本は複数のグループに分かれているがクラスなどの全体に関することを決める時にみんなで集まり決めているなどグループの境目があまりない。
男子グループの中心人物は三人いる。
一人目は誠が言っていた全国模試一位を争うほどの天才、
容姿は質実剛健といったイメージを抱いてしまうほど真面目そうであり、がたいがいいため一見近づきにくいイメージがあるが、コミュニケーション能力が高く、様々な所で気を使えるなど人望は高い。
二人目は将来を有望視されているバスケットボール選手である、
身長は186㎝で明るくイケメンで誰にでも平等に接してくれるため、幅広く人望を得ている。また、カリスマ性なども兼ね備えており、特に弱くも強くもなかったバスケットボール部を一年で強豪校に変えるなど行動力などもすごい。
その実力は中学の時から注目されており多くの所からスポーツ推薦が来ていたらしいが、彼はすべて断ってこちらに来たらしい。
どうして断ったか、その理由について様々な噂がある。どこかで聞いた話だと断る際に彼は「俺にはやらないといけないことがある」といったとか言っていないとかだ。
三人目は
身長は170㎝後半とスタイル抜群であり、宮沢同様にコミュニケーション能力が非常に高く、何より幅広い分野での話が出来るため、勉強やスポーツの話が多くなりがちな二人に対応しながらゲームなどの話も出来ることからクラスの中では一番人望を得ている。
二人と比べると特にこういった特徴はないが、能力は全体的に高く、このようなクラスになっていなければ彼がクラスの中心人物になっていただろう。
男子グループはこの三人を中心としているため、比較的に平和だ。もし、宇野さんとの関係がバレても一部の男子が少しの間騒ぐだけであり、こちらに特に影響がないと考えてもいい。
女子のグループは二つにはっきり分かれている。
一つはバランスがしっかり取れていて万人向きといったグループ。
そのグループの中心人物は
スタイル抜群で元気で明るく天真爛漫な人でほかの人を引っ張っていくタイプであり、行動力がすごい。
そのことからも人望が厚く、現在は生徒会の会計をしている。
みんなが楽しめることを目標としており、その為ならばどんなことでもやってのける。
ちなみに彼女とは部活が一緒でたまに話している。部活の先輩が彼女と幼馴染らしく先輩からよく話を聞かされている。
そんな彼女だが一年の後半から空気を読むようになったのか前までの行動力がなくなったと部活の先輩が嘆いていた。
そんな彼女を支えるのが
見た目は地味で眼鏡をしている。いつもは本などを読んでいるが、林田が何かをしようとした時に最初に頼る人物であり、細かいツールの用意など割と何でもできる人だ。
もう一つはギャル系みたいなグループ。僕的にはあまり関わりたくないところだ。
そのグループの中心人物は
スタイルはいいが、服装などは怒られない程度のギリギリの範囲であり、真面目とは程遠い人物だ。
グループ内のメンバーには優しく、頼れる存在らしく信頼を得ている。度胸もあり、どんな相手でも噛みつくタイプ。
誠の情報からだと渡辺のグループ内でいい子ぶっている宇野さんの事が気に入らないと思っているらしい。
そのことについてさらに詳しいことを誠から聞くと、どうやら男女でのイザコザがあったらしく逆恨みに近いようだ。
このことからも考えると現在一番厄介なことになりそうなのは渡辺グループになるだろう。
宇野さんが攻撃されないか注意しておくべき項目の一つとして記憶しておく。
他に考えるとしたら特定のグループに所属しないで転々としている人物の中で影響力が強い人だろう。
その条件で考えた時に当て嵌まる人物は二人いる。
一人目は天才女優である
彼女は男女関係なく全体的に関係を築いている。特に深い関係は作らずある程度の線引きをしているように感じると誠は言っていた。
僕から見るに彼女は普通にこだわっているように見える。
まあ、幼い頃から天才など多くの人から期待されるなど、大変な人生を歩んできたのだろう。
そんな彼女が普通の生活を憧れるのも無理はない、そういったことから行動自体に不自然なことはない。
もう一人は
スタイルが良く、容姿は大和撫子を彷彿させるもので誰にでも優しく、元気で明かるためクラスからの人望も高い。
運動神経も良く、頭もいい、人付き合いもいいなど隙のない人物だ。
誠からは物語から飛び出してきた完璧ヒロインだと言う。
宇野さんがこの二人と仲が悪いということも聞いていないのでそこまで注意する必要はないと僕は判断する。
ちなみに宇野さんはこの分類になる。宇野さんはいつも固定の人とは過ごさず幅広く関わりを持っている。
宇野さんの背景などを考えると話が合う相手がいないのだろう。これも持っているからこその苦難というものなのだろうか。
そういう意味なら宇野さんと柴田さんは似ているかもしれない。
それにしても宇野さんとのどうやって関わっていこうか、今まではその場限りだと思っていたので適当に言葉を言っていた。しかし、今は違う宇野さんからの信頼がなくなるような事があればとても困る。
宇野さんを変えるとしても今の僕の言葉では彼女に響かない。言葉の重みとは人によって変わる。
長年諦めずに夢を追いかけ夢を叶えた人と何もしていない人が「夢は諦めなければ叶う」と言ったらどちらの方が心に来るか、それは当然前者だ。
言葉には人を動かす力がある。ただ、言葉だけに人を動かすほどの力はない。
言葉の力はその人物の姿勢、行動、実績など相手にその言葉を信じるに値するものを示さなければならない。
今の僕はその信じるに値するものを宇野さんに示していない。そんな僕が何を言っても無駄だ。
ならどうするべきか、そのことを考えていると授業の終わりを知らせるチャイムが聞こえてくる。
授業が終わり、昼休みとなるので皆各々に動き始める。
僕は弁当を持って教室から出る。そのまま下の教室に向かう。
この学校は学年が上がるほどに下に行くようになっている。つまり、三階は一年生、二階は二年生、一階は三年生となる。
そして、今僕が向かうのは一階である。僕が指定した場所の鍵は先輩が持っているため、それを借り為だ。
本来そういったものは教員などが管理しているものだが、先輩は自由人のためいつでも部室に入れるように鍵を勝手にもう一つ作成している。
ちなみにこのことは部活の顧問だけ知っている。話したときは怒っていたが先輩が少し話し合いをしましょうと別に部屋に入っていた顧問は部屋から出た後は頭を抱えたようにしながらこのことを黙認した。
一体どんな話をしたか気にはなるが怖いので聞かなかった。
先輩によるとほかの先生にバレることはないとのこと。部室付近の仕事はすべて顧問に行くようにしたので大丈夫らしい。
目的の教室に到着し、中を覗くと先輩が誰かに数学を教えていた、いつまでやっているのか分からないので近くの人に呼ぶように頼む。
すると先輩は教えている人に何やら喋った後こちらに向かってくる。
「なんだよ優、俺に何か用か?」
落ち着いた声で僕に聞いてきた人が僕の部活の部長である
松本先輩は正真正銘の天才だ。何をやってもすぐにでき、頭の回転を異常に早く度々かなり先の未来を見ての発言があるなど、本気の松本先輩に敵う人はほとんどいない。
松本先輩の今の容姿は知的でイケメン、雰囲気からとても大人びているイメージが受け取れる。
最近聞く先輩の評判についてもいいものばかりであり、人望が厚くなっている。
「部室の鍵を借りに、それにしても松本先輩も大分雰囲気が変わりましたね」
僕は先輩の変わり様に驚くように言う。
元々松本先輩はアニメとかで出てくる表では明るく振舞い裏では主人公を支えるようなタイプだ。
少なくとも他人の評価を気にするような人ではないし、雰囲気も知的で大人びたものではなく気軽な先輩みたいなものだった。
「ああ、これは後々必要になるからやっているだけだ」
「後々・・・・・・必要になる?何か物騒なことをしようとしてません?」
どうやら松本先輩の視点からだと、遠くない未来に危機的状況に陥るような事が起きるらしい。
そのための備えとして今のような人の評価を高めるようなことをしているということ。
「優、安心しろ今すぐではない。まあ、優も必ず巻き込むことになるがな」
「いや、まったく安心できませんが、それに巻き込まないでください」
松本先輩の冗談だと思いたいが、その目を見るとそうなると確信しているものだった。
松本先輩はパケットから何か取り出すとこちらに投げ渡す。
僕はそれを受け取ると部室の鍵だった。
「うまくやれよー」
松本先輩は棒読みでいって、席に戻っていく。
「全く・・・・・・分かっているなら要件など言わせず渡してくださいよ」
松本先輩は普段、部室の鍵と言ったものはバックの中に入れている。僕が部室の鍵を取りに来たことを知らなければ一度鍵を取りに行くはずだ。
しかし、先輩はポケットの中から取り出した。つまり僕が部室の鍵を取りに来ることを知っていたことになる。
一体どうしてわかったのか、それは松本先輩しか分からない。天才はすごいなと思いながら僕は部室に向かうのだった。
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