おかわりはブラックで

まっきー。

おかわりはブラックで

本作は、ネット通話・ライブ配信利用時、無料の声劇に使用する台本を想定して書いております。(事前連絡不要です。)


その他用途での利用はお断りします。無断転載もご遠慮ください。


当台本を利用し偶然発生した利益、不利益に対しても当方は一切関与、責任を負いません。


読み手様の自由に表現できるよう、細かいト書きや感嘆符(!)はあえて使用しておりません。

全役、一人称・言い回し等は言いやすく変更してご利用頂いて結構です。



柿本(カキモト)(不問):常連客

睦美(ムツミ)(不問):喫茶店の店主


※Mはモノローグの略です。読んでいただいて結構です。






睦美:いらっしゃいませっ.........柿本さん?久しぶりじゃないですか。

   お元気でしたか。


柿本:......久しぶりです。睦美さん。


睦美:今日はお仕事、お休みですか?


柿本:ええ、仕事が一段落つきましてね。久しぶりに寄ってみたんです。


睦美:それはお疲れさまです。こちらはご覧の通り、まったり営業中です。


柿本:それはそれは。


睦美:今日は柿本さんが一番目のお客様ですよ。


柿本:ゆっくりくつろげそうで何より。


睦美:お、嫌味ですか?趣味でやっているから良いんですけどね。


柿本:睦美さんは変わらずお元気そうで何よりです。


睦美:柿本さんこそお変わりないようで。以前もおっしゃっていましたよね。

   「この静かな雰囲気が落ち着くから良い」って。


柿本:....そうですね。


睦美:ご注文は何になさいますか?


柿本:ブレンドを一つ。ミルクと砂糖は多めで。


睦美:かしこまりました。只今おれいたしますね。





柿本M:コーヒーの香ばしいかおりと、静かに流れるピアノジャズの音色が、

    私を街の喧騒けんそうから隔離かくりさせる。

    この空間が好きだった。

    睦美さんとは気が付いたら話をするようになった。

    店の雰囲気によく似合う上品な方で、笑顔が素敵な人だ。

    いつも話し相手になってくれる、優しい人。

    その優しさが、私にとって、とても暖かかった。






睦美:お待たせしました。お手元失礼いたします。


柿本:ありがとう。


睦美:相変わらずの甘党ですね。


柿本:実はこれしか飲んだことがなくて。


睦美:それでしたら、今度は何も入れないで飲まれてみてはいかがですか?

   結構いけますよ。


柿本:...そうだね、覚えていたら。


睦美:何事もはじめの一歩は勇気が必要です。


柿本:相変わらずのお節介焼せっかいやきですね。


睦美:面倒見めんどうみが良いんですよ。


柿本:はいはい。.....ところで、ここってまだ吸えます?


睦美:ええ、灰皿お持ちしますね。


柿本:ありがとうございます。....ふぅ~。


睦美:ふふっ。


柿本:なんですか突然。


睦美:なんだか懐かしいなと。昔もよくこうして話してたなって思い出してました。


柿本:そうですね。毎回私の話し相手になってくれてましたね。


睦美:ええ、もう三年くらい経ちましたかね。


柿本:そんなに経ちましたか。


睦美:ですから今日久しぶりにいらっしゃって、少し驚きました。


柿本:しばら県外けんがいしてたものですから。

   先週帰ってきて、久しぶりに立ち寄りました。


睦美:覚えていてくれて嬉しいです。


柿本:もちろん覚えていますよ。


睦美:それは何よりです。...お客様がいらっしゃったので行ってきますね。

   どうぞごゆっくりお過ごしください。


柿本:ん、ありがとう。





睦美M:久しぶりに再会した柿本さんは、昔と変わらず、

    甘いコーヒーとタバコの煙をまとわせて、

    ぼんやり外の景色を眺めていた。

    その姿を、最初はただ見ているのが好きだった。

    けれどいつしか話をするようになり、その人柄が分かってきた。

    柿本さんは寂しい人だ。

    何かに悩んでいて、それを表に出そうとしない。

    私は、あの人の話を聞いてコーヒーを淹れるだけ。

    でもその距離感が丁度いいのかもしれない。





柿本:....他のお客さんが帰ったからってまた戻ってこなくても良いんですよ。


睦美:お話するのも趣味ですので問題ありません。


柿本:はいはい、分かりましたよ。


睦美:お分かりいただけて何よりです。


柿本:......さっきの。


睦美:はい?


柿本:さっきの、「はじめの一歩は勇気が必要」って話ですけど。

   睦美さんは一歩を踏み出したことがありますか?


睦美:.....ありますよ。


柿本:どんな時でしたか?


睦美:.....抽象的ちゅうしょうてきになりますが、

   誰かの人生に自分が関わる時、です。


柿本:誰かの人生に自分が関わる時...。


睦美:ええ。大袈裟おおげさかもしれませんが、

   相手の居場所に土足で入ってしまうのが怖くて不安になります。

   一歩踏み出さず、現状維持が良いのでは、不幸にならないのでは、と。


柿本:.....。


睦美:ごめんなさい。変なことを話しましたね。


柿本:いえ、こちらこそ不躾ぶしつけな事を聞きました。


睦美:....でも、それでも私は一歩踏み出してよかったと思います。

   今までも、これからも。だって.....


柿本:ん?


睦美:だって、柿本さんと知り合えましたから。


柿本:....。


睦美:ごめんなさい。他のお客様がいらっしゃったので行ってきます。


柿本:睦美さん...。


睦美:さっき話した事は忘れてください。


柿本:睦美さん。


睦美:はい...。


柿本:コーヒー、おかわりいただけますか?


睦美:かしこまりました。少々お待ちください。


柿本:あの。


睦美:はい、なんでしょう。


柿本:おかわりはブラックでお願いします。


睦美:...ふふ。かしこまりました。少しお待ちくださいね。



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おかわりはブラックで まっきー。 @mackydayon

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