第25話 今年のクリスマスも疲れたぜ!帰るぞ!終わりじゃ!
「あの
いつの間にか、もの
「そう。死んだあと、
「天、すなわち、
「ああ。そこに、
「虹の橋で、どういう風に暮らしているのですか?」
「
「忙しい?」
「ああ。世界中で、毎日、
「なるほど。そうですね。日本だけでも、全国
もの知り猫リューは得意げに続けた。
「全国
さらには唄うように、
「
しまいには自分の知識に酔いつつ、
「インドやネパールのホーリー
ショーが「もういいから」と
「そうした中、クリスマスの日は、サンタクロースを手伝うんだけど、サンタは、イヴとクリスマスの二日間で、世界
「一日あたり十億人ということは、もし仮に、二万人のサンタがいたとすると、一人当たり、一日で十万人もの子供たちへ
「そういう計算になるね」
「でも、一時間に四千人ちょっとの子供たちへ配るなんて、不可能ですよ」
「普通に考えれば、そうだね」
「仮に、一億人のサンタがいれば、可能かも知れませんが、移動時間まで含めると、まずもって不可能です」
「大丈夫。サンタには
「実体が無いいいい?」
「だから、世界各国の子供たちに一斉にプレゼントを渡せる」
「二日で二十億人の前に現れることができる……」
「一日で十億人でもいいんだろうけど、イブって前夜祭があるから」
「あんさん、そらぁ」
と、いつの間にか、ぼやき猫のモンクーがいた。
「
「そう。
「ひえー」
「だから、私たちの姿は、人間に見えないんだよ」
道理で、あたしの姿が、人間には見えないわけだ。
そういえば、おととい、この島へ
「もしかして、お化け?」
とか、
「出たあ!」
と
もの知り猫のリューが、人差し指を立てて説明した。
「千七百年前に
「その、聖ニコラウスが亡くなって、サンタクロースになったんだよ」
とショーが
「ほなら、サンタクロースは、聖ニコラウスの
「そうだよ。そのサンタクロースが、人間の子供たちへ、プレゼントを配るのに手一杯だから、猫には猫のサンタクロースを
「三毛猫ミーはんも、それで一緒に来たんやな?」
「一緒じゃないよ。三毛猫ミーが先」
「なんでや?なんで一緒やないねん?」
「サンタクロースが言ってた。おてんばな三毛猫ミーは、何か事件を見つけては首を突っ込み、プレゼントを配る使命なんか忘れるだろうから、お前がサポートしてやれって」
お
そのショーが、
「もうすぐ十二時になる。サンタクロースが迎えに来る時間だ。さあ、草原でサンタを待とう」
と言って歩き出した。あたしも続いて歩く。そのあとを、黒猫クーも、もの知りリューも、ぼやき猫モンクーも付いてくる。
いつしか
草原が、
「みんな、元気でね」
と、
「また来てや」
と、
「ミーはんから
「うん」
鐘の音が五回、六回、鳴った。
もの知りリューも、別れを
「
「そうだよ。あたしたちは、いつも、虹の橋にいる」
「いつか僕も、虹の橋に行くでしょう」
「
「そこで
「もちろんさ。待ってる」
鐘の音が七つ、八つと鳴った。
黒猫クーが、鼻声で、
「また会えるよね?」
と言った。黒毛の上に雪が落ちた。
「大丈夫。きっと会える」
「きっと?きっとだよ?」
「約束する。あたし、約束は守るよ」
鐘の音が九つ、十と鳴った。
「さあ、もう行こう」
とショーが
「零時だ」
しかし、サンタクロースは現れない。日付は二十六日になった。
「あれ?」
ショーは、不思議そうに、夜空を見つめて首をかしげた。
「どうしたんだろう?」
「もしかして、このまま猫ヶ島に?」
黒猫クーが言った。
「それもいいんじゃない?」
「帰れないってこと?」
「もう二十六日だよ?」
「サンタさん、どうしちゃったんだろう」
と、猫たちが口々に騒いでいると、夜の
金色に
赤いソリは、
ソリに乗っているサンタクロースが、
「いやあ、悪い、悪い。
とソリから
早くも一杯ひっかけたように顔が赤い。それを
「もしかして、もう飲んでる?」
「あれ?バレちゃった?」
「もう、クリスマスは終わったよ?」
「バーカ。だから飲むんじゃよ。今年の仕事は、昨日で終わりじゃ」
とサンタは
「ほれ、帰るぞ」
とソリへ乗り込んだ。
「今年のクリスマスも
と、
「ほれほれ。ミーとショーも、さっさと、乗った乗った。うぃ」
「みんなー、さよーならー」
と手を
「さよーならー」
と手を振っている。
「また来てねーっ!」
「また会おうねーっ!」
みんなと過ごした昨日と今日が、幻となって消え入りそうな寂しさに
ソリの中で
「独りじゃないんだ。もう泣かないで」
あたしが泣きべそ顔を上げると、ショーは、
「私のことに、まだ気づかないのかな?」
と
「ずいぶんと冷たいねえ」
と、わざと怒った顔つきで、
「私は、君の夫だったアメリカンショートヘアのショーだよ」
「え!」
「サンタは、それを知っていたから、私を遣わしたんだ」
「それが本当なら、初対面の時、どうして、名前を訊いたの?知っていたはずなのに」
「教えていないのに、知っていたら、おかしいと思うだろう?だから、知っていても、知らんふりして、
「どうして、
「虹の橋といっても、広いからね。それに、君が虹の橋に来たのは、つい
「つい先日って?」
「今日のクリスマスから
「知っていたの?」
「サンタから訊いた。虹の橋に、
「本当?本当に、ショーなのね?」
「また会えたね」
「こんなところで
「だから“あたしの心”を受け取る必要がないって言ったじゃないか。もう
「そういうことだったの」
「それにしても、私とは気づかず、他のアメショーに“あたしの心”を差し出すなんて」
「姿かたちから名前まで一緒だもの、同一人物だと思った」
と、あたしはショーに
「これからは、虹の橋で、ずっと一緒だね」
「うん。そうだね」
「あ、忘れてた」
「なに?」
「一日
三毛猫ミーのクリスマス~猫の島で起きた小さな奇跡 おしょう @dodoitsu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます