第17話 異世界ダンジョンー17

「よくぞここまでたどり着きました。」


次の階は、敵では無くてマリ――アリア様が中心に立っていた。よくぞここまでって言われても、大した階層を進んでないような気がするんでだけど。


「もう終わりですか?」

「終わりというわけではありませんが、少しイレギュラーな事態が起こってしまったようで、急遽短縮いたしました。本当はもう少しデータ――いえ、経験を積んでもらいたかったのですが、仕方ありません。」


……トランとフォルムの実戦データが欲しかったんだろうな。だが、イレギュラーな事態って何だろう? ここにはまったく情報が入ってこないし。


「って、あれ? そういえばメィルは?」

「え? ご主人様気づいていなかったの? 結構前から居ないよ。」

「どこ行ったんだよ、一体。」

「急用ができたから、それじゃ! って言ってたよ。」

「あいつ、なんで俺には一言も無いんだよ……。」


まあ、もともと居ても居なくても変わらなかったし別にいいんだけど。


「恐らく、メィルにも連絡が入ったのでしょう。自分の担当を放置するのは感心できませんが、事態が事態ですので仕方がないかもしれません。」

「一体、何が起こったんですか?」

「それは、あなたも本体へ戻れば分かる事ですので伝える必要性を感じません。それよりも、これで試練は終わりです。」

「ま、待ってください! まだ全然強く成れていません!」


ここへは経験値を稼ぎに来たのだが、まったくとは言わないが稼げていない。この程度の強さでは、ダンジョン攻略の足しになるとは思えないし、悪魔と全く戦える気がしない。


「ああ、そうでしたね。本来は、勇者の様に地道に強く成っていただかなければならないのですが、私も忙しくなりますし、特例としてボーナスモンスターを出現させますね。これを倒してください。」


アリア様がそう言うと、アリア様の前に魔法陣が出現する。そして、一体の金色の塊が召喚された。


「キングゴールドボーナススライムです。」

「名前の適当感が!」

「メタルを付けると、何故か勇者が良く持っているメタルキラーとかいうものであっさりと倒されてしまいますので……。」

「そうなんだ……。とりあえず、鑑定するか。」


キングゴールドボーナススライム(鉱物):HP30000、MP0、攻撃力0、防御力100万、素早さ1、魔0、装備:なし スキル:???


「HPはともかくとして、防御力がやたら高いんですけど! 下手な女神より強いんじゃないですか?」

「強いかと言われれば、戦闘力自体はありませんのでなんとも言えませんが……倒せば下手な女神よりは強く成れますよ。」

「倒せと言われても、これ、防御力高すぎません? まあ、魔力が0だから魔法で倒せばいいのか」


魔法はさっき山ほど手に入れた。何が効くか分からないから、石、火、水、闇と適当に撃ってみる。すると、それはスライムの直前で打ち消された。


「あ、ちなみに魔法は効きませんよ。魔法を防御力で受けるスキルが付与されていますので、魔力が100万以上じゃ無いとダメージを与えられません。」

「なんでボーナスにそんなもの付与してんの!?」


つっても、防御力も通常攻撃では全くダメージを与えられる気がしない。勇者の様にメタルキラーも無い。ああ、あってもこいつには効かないんだったか。じゃあ、なんでボーナスなんだよ……。


そうぐちぐちと言っていたら、俺の袖を引っ張るものが居た。見ると、フォルムだった。


「ご主人様、ほら、ボクの新しいスキル。」

「ああ、それはこのためだったのか。」


そういえば、直前にそんなスキルが付与されていたな。あんまり意味が無いと思っていたけど、こいつのためだったのか。ちらりとトランの方を見たが、トランは悔しそうな顔をしてフォルムを見ていた。うん、攻撃能力の無いこのスライム相手にトランの出番は無いからな。


「それじゃあ、ガトリング砲でいくか。」

「うん!」


ほぼ動かないスライム相手なら、固定砲台の方が楽だ。連射速度が毎秒100発、つまり毎分6000発。これだけ硬いスライムでも、5分あれば倒すことが出来る。


こうして、俺の試練は終わった。完全燃焼には程遠いが、目標の経験を得る事が出来たと思う。また、トランとフォルムもそのまま俺の物になった。イレギュラーな事態、俺はそれに対応する事が出来るのだろうか?

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ダンジョンクリアで女神に昇進!-別次元編- 斉藤一 @majiku77

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