最終話

残暑が終わり、冬に近づいてきたころ、美結が妊娠したことが分かった。最近、漫画を描くようになり、小説を書いていた時にお世話になった人に見てもらったら、これなら、出せるから、紹介してもらった、辻本さんが漫画の担当らしい。

辻本さんは、女の子でまだ若いが、子供が好きらしく、朱那と洸が来て邪魔しても、遊んでくれたり、お菓子をくれたり申し訳ないぐらいだが、入院するまでは一生懸命頑張るつもりだが、少し貯めておいて、徐々に出そうかということになった。

それから数か月が経ち、ついに出産の日を迎え、無事元気な男の子が生まれた。

名前は颯と名付けられ、朱那と洸はこの日を待ちわびていたのでとっても喜んでいた。

それから一週間後無事颯と退院し、わが家へと帰ってきた。

両親は親戚の法事により、出産のときに立ち合いができなかったため、一週間ほどだが、こちらに来てくれていた。美結が自宅に戻ってから、一週間ご両親は畑を、一緒にしてる人に任せて、こちらに来てくれた。

朱那と洸はおじいちゃんとおばあちゃんに生まれた直後と、テレビ電話でしかあったことがなかったが、最初は緊張していたものの、あっという間になれて行った。

美結は颯が生まれた直後だから、一緒に出掛けることができないため、朱那と洸はおじいちゃんとおばあちゃんと謙介で動物園に連れて行ってもらうことになり、


7日後、両親が帰る日の朝。

美結母「よく頑張ったわ。お父さんも楽しみにしていたのよ。」

美結「知ってる、謙介さんが、お父さんが泣いてたよ、って言ってくれてたもの。」

美結母「美希さんたちには伝えたの?」

美結「もちろん、佳代さんに電話で伝えたら、お見舞いに来てくれた。たくさんもらったから、お返し何がいいかな。」

美結母「美結が作ったっものならなんでも喜んでくれそうね。あのマドレーヌ私も食べたいわ。また今度作ってね。食べに来るから。」

と笑いながら言っていたが、母は本気だと思う。

美結「まあ、今は無理だから、落ち着いたら、作るよ。それより北海道に行って良かったと思う?」

美結母「そりゃ、最初は大変だったけど、住めば都だしね。雪かきは相変わらず大変だけど、近所の若者も手伝ってくれるし、何とかなるわよ、あの人と一緒だもの。」

美結「そうね。ケガしないように、気を付けて、こどもがもう少し大きくなったら、連れて行くから。」

美結母「わかった。美結たちも気を付けて。」

美結「忙しいのに来てくれてありがとう。」

美結母「来るに決まっているでしょ。」

美結「うん。」

朱那「ばあば帰るの?」

美結母「ええ、また来るわ。いい子にしてママとパパのいうことをちゃんと聞くのよ。」

朱那「うん。ばあば大好き。」

美結母「ばあばも朱那のことが大好きよ。」

謙介「二人を空港まで送ってくるよ。」

美結「ありがとう。運転気を付けてね。」

洸「洸も一緒に行きたい。」

朱那「朱那はいい子だからママとお留守番する。」

洸「パパ、ダメ?」

謙介「いいけど、結構、遠いから、飽きると思うぞ。」

美結「朱那はママとお留守番してくれるのよね。」

謙介「じゃあ、行ってくるよ。」

美結「うん。お父さん、体に気を付けてね。」

美結父「わかってるさ。美結も謙介君と仲良くな。」

美結「うん。本当に気を付けて。」

美結母「またね。」

車に乗った4人は空港に向けて、出発した。

家に戻り、朱那は、颯の面倒を見てくれていて、いつの間にか、一緒に寝ていた。

しばらくすると、謙介から空港に着いたと連絡が入り、洸はじいじにおもちゃを買ってもらったらしく、朱那にもだが、出発の時間まで、ゆっくりするとのことだった。

美結は今のうちに洗濯ものや、家事をして、一息入れていたら、謙介から電話が来た。

謙介『無事にお義母さん達、帰っていったよ。これから洸と帰るよ。』

美結「わかった。ありがとう。気を付けてね。」

謙介『大丈夫、洸は飛行機を見て興奮していたけど、少し眠そうにしていたから、そのうち寝ると思う。」

美結「わかった、こっちはもう起きると思うから、渋滞してたら、また、教えて。」

謙介『わかった。じゃあ。』

謙介と電話を終え、案の定、颯が泣き始めた。

颯をあやしていると、朱那が起き、トイレというので、颯を抱っこしながら、朱那を連れて行った。

美結「朱那、おトイレ上手にできたね。」

朱那「お姉ちゃんだから、お漏らししないもん。」

美結「そうね。お手て洗ったら、おやつにしようか。」

朱那「うん。」

それから手を洗いに洗面所まで行った。

朱那「お手て洗えたよ。」

美結「よくできました。おやつにするから、リビングで待っていてね。」

朱那「はーい。」

その後姿を見ながら、佐々木さんに声をかけた。

美結「落ち着いたら、一息入れてください。リビングに来てください。」

佐々木「かしこまりました。ありがとうございます。」

美結「いいのよ、佐々木さんにはだいぶお世話になっているもの。朱那たちが生まれる前からよ。」

佐々木「お言葉に甘えさせていただきます。」

美結「どうぞ。」

ふたりで、リビングに向かった。

美結「佐々木さんは座ってて、ジュース自分でできる?」

朱那「できる。」

美結「ここに置いておくから、コップに注いで、佐々木さんに渡してね。」

朱那「はーい。」

それからキッチンより少し低めの台にコップを三つ置き、リンゴジュースを注いでいた。

朱那「ふぅ、こぼさなかった。」

美結「偉いね、じゃあ佐々木さんに最初に渡してね。」

朱那「はい、さしゃきさん、どうぞ」

佐々木「ありがとうございます。朱那ちゃん。」

朱那「どういたちまちて。ママできた。」

美結「朱那、よくできました。佐々木さんよかったら召し上がってください。」

さっき作っておいた、マフィンをテーブルに出し、みんなで食べた。

食べ終わりそうなころ、玄関から物音がした。

美結が颯を抱っこしたまま、玄関へ向かうと、謙介が寝ている洸を抱っこしていた。小さな声で

美結「おかえり、布団向こうに敷いてあるから、おろしておいで。」

謙介「ただいま。わかった。寝て一時間ぐらいかな。」

美結「わかった。」

それから、謙介は布団の上に洸を下し、手を洗ってから、リビングに来た。

佐々木「おかえりなさいませ。旦那様。」と立ち上がろうとしたので、

謙介「気にしなくていいから、そのままでいいよ。」

佐々木「すみません。」

美結「いいのよ、気にしないで。」

謙介「家族みたいなもんだろ、少なくとも、俺と美結は家族に思っているから、遠慮せずそのままでいて。」

佐々木「いいのですか、奥様。」

美結「もちろんです。」

佐々木「ありがとうございます。」

美結「お母さんたち余計なこと言ってなかった?」

謙介「大丈夫。」

美結「そう。ならいいけど。」

颯をベビーベッドに下し、みんなで、またおやつを食べ終えた。

それから、佐々木さんは仕事に戻り、今日の夕食はオムライスと野菜スープ、デザートにみかんゼリーを作ってくれていた。

佐々木さんは5時までなので、お土産に先ほどのたくさん作っておいた、マフィンを持たせ、帰っていった。

6時になりみんなで食卓を囲む、美結は結婚したくないと思っていた昔の自分に教えてあげたいなと、結婚は自分ひとりじゃなくて、相手とどうなりたいか、自分たちで、家族を作り上げ、幸せにするんじゃなくて、幸せだって思える人に出会うことが大切なんだと。

謙介さんに出会って、人生が180度変わった。まさか結婚して、子供も三人も設けるとは思いもしないだろう。謙介さんに、佳代さんに両親に、みんなに感謝して、これからも幸せに暮らしていきたいと思う、美結であった。



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結婚したくない女と結婚したい男 おかか @tousyun313

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