美人で孤高な銀髪碧眼クラスメイトが、実はお喋りな変態だった件。

３２ 変態にも気の合うお方が見つかったようです

「お邪魔しまーす」

　来たのは可愛らしい女の子。この子がどうやらひなちゃん、らしい。

「ひなちゃんこっちこっち！」

　柚葉の嬉しそうな顔を見ると二人の関係性がよくわかる。

　相当仲のいい友人なのだろう。

　……挨拶くらいしておくか。

「こんにちは。柚葉の兄の司です。妹がいつもお世話になってます」

「司さんこんにちは。今日はよろしくお願いしますね！」

　ショートカットでとても愛嬌があり、それでいて本当に中学生かと疑いたくなるほどにスタイルがいい。

　うん、それに声もかわいいし。

　こりゃあ将来が楽しみ……じゃなくてだな。

　妹の友人に欲情するなんて兄として恥だ。

　紳士的にいかないと。

「あら、ロリ巨乳ちゃんね柚葉ちゃんのお友達」

「お前中学生に向かってなんてことを！」

　そうだ忘れていた。

　このバーベキューには変態が一匹紛れ込んでいたんだ。

「お前は喋るな」

「ヤダん、もっかい言って」

「お願いちょっと大人しくしてて……」

「あの子、貴方と初対面？」

「ん、多分そうだと思うけど」

「ふーん」

　桐島がひなちゃんとやらを舐めまわすように観察し始めた。

　何か引っかかる点でもあるのか？

「おい、あんまり見るなよ」

「どこかで見たことある気がするのよねぇ。それに声も」

「気のせいだろ。それより準備手伝え」

「いらなくなったパンツも一緒に燃やしていいかしら？」

「ダメ！」

　ダメ、断じてダメです！

「ていうか部屋のパンツ、そろそろ持って帰ってくれよ。あれがあると」

「あれがあるとついつい嗅いでしまいそうになるから？いいのよ、じっくり堪能してくれて」

「ぐぬっ……そ、そうじゃなくてダナ。邪魔なんだよ」

「なんか語尾が変よ？もしかして嗅いでくれた？」

「そ、そんなわけないじゃないか、あは、あはは」

　い、いかん墓穴を掘りそうだ。

　ついつい誘惑に負けそうだから未練を残さないように始末してほしいと、そう思っている心が見透かされそうだ。

「ま、いいわ。それよりひなちゃんって子とちょっと話してきていいかしら」

「いいけど変なこと言うなよ？」

「大丈夫、トレンドの話をするだけよ」

「ヒモパンだろそれ！」

　俺のツッコミはあっさりと受け流されて変態はロリ巨乳ちゃんのところへ。

　しかしいつまでも構ってはいられず、俺は詩と柚葉と三人で火をおこすことに。

　まぁ、みんなが近くにいるから問題はないかもだけど……なんか嫌な予感がする。

♥

　ここからは私、桐島イリアがお送りするわ。

　というのも、ちょっと気になるのよねあの子。

　……直球勝負といこうかしら。

「初めまして、私桐島イリアです」

「わー、綺麗な人！ゆずちゃんから訊いてた通りだ。私高宮ひなたです。ひなでいいですよ」

「そう、ひなちゃんね。ところでひなちゃん、あなたは随分と男の子にブリーフを穿かせたがるのね」

「え？な、なんのこと、でしょうか……」

「誤魔化せないわよ。あなた、あのエロ漫画家のタムッチ先生よね」

「ありゃ、バレてました？」

　ビンゴ。

　この子、あのタムッチ先生だったわ。

「なんで今日は来たの？近々会うって彼から聞いたけど」

「いえいえ、ツカサ先生が最近いい感じの女性がいると話していたのでどんな方なのか見にきたんです」

「ふーん。ということはあなたも志門君を狙ってるってこと？」

「はい、だって先生カッコいいじゃないですか！」

「ふむ」

　ライバル、というわけね。

　まぁ志門君を好きというなら悪い気はしないけど、若い芽は早いうちに摘んでおくべき、かしら。

「でも、私は志門君の奴隷になるつもりだからその辺よろしく」

「あら、私はツカサ先生を奴隷にしたくて仕方ないんですよ？」

「なんと！？」

　こ、この子もしかして……変態？

　いえ、志門君から訊いている限りではタムッチ先生は良識ある人物だと……

　試してみましょうか。

「私は志門君にパンツをバンバン渡して咥えさせたりしてるわ。彼も大喜びよ」

「私はツカサ先生と仲良くなったら私のパンツで目隠しプレイしようと毎日考えてますから、そのくらいでちょうどいいです」

「オウ……」

　見誤った？

　私のライバルはてっきり詩ちゃんかと思っていたけどもっと身近なところにいたなんて。

「でも、志門君はあなたすっごく常識人とか言ってたけど無理してない？」

「いいえ、むしろそう思っててくれてよかったです。あまりのギャップに落胆する彼を見るのが今からたまらなくゾクゾクしてますから」

　ひなちゃん、否、タムッチ先生はニタリと笑った。

　なによこのいかにも悪党な面は。

　……真正のドＳ？

「ほら、火がつきましたよ。今日はバーベキュー楽しみましょうノーパンさん」

「……あなたとはいつか決着をつけないといけないようね」

「えへへ。私、ツカサ先生のファン一号ですから。ぽっと出の変態さんには負けません」

　タムッチ先生は愛くるしい笑顔でそう言った。

　……ちょっとおもしろそうだから志門君には黙っておこう。

　うん、私も彼が驚く姿をちょっと見てみたい。

　変態同士、気が合うかも？

◆

「おい桐島、ひなちゃんと随分話してたけどなんだったんだ？」

「いえ、趣味が合うみたいなのよあの子」

「趣味が？お前と？いやいやないだろ」

「ふっ、貴方が思うほど世の中広くないということね」

「どういうことだよ」

「それより、早く食べましょ」

　桐島は何か隠している。なぜかそれはピンときた。

　しかしだ、いちいち女子同士の会話を詮索するのも野暮だし今はそっとしておこう。

「お兄さん！お肉焼けてますよ！」

「あ、ありがとうひなちゃん」

「ふふっ、今日はお誘いありがとうございます。楽しいですね」

「う、うんそうだね」

　ひなちゃんって、なんて言うか人懐っこいよな。

　それによく見るとすんごく可愛い。

　それに、その胸はけしからん。リアクションをとるたびにバインバインと揺れておる。

　うーむ、これでまだ中学生だと？けしからん。

「どうしたんですかー？」

「え、いやいやなんでも。ささ、食べよう」

　ダメダメ、いくら体が大人でも相手は妹の同級生だぞ。

　そんな目で見てるのが柚葉にバレたら殺される。

　んー……我慢だ！

「志門君、彼女のおっぱいたっぷたぷね」

「今それを言うな！」

　クソ、桐島の奴め。俺を陥れるつもりだな。

　しかしそうはいかん。今日は平和に平凡にただバーベキューを楽しむのだ。

「お兄さんお兄さん」

「どうしたんだいひなちゃん」

「お兄さんは桐島さんとお付き合いしてるんですかー？」

「へ？い、いやなんでそんなことを君が」

「だってー、仲良さそうだから。違うんですか？」

「そ、それはだね」

　はっきり違うと、一言そう答えたくても答えにくいのには訳がある。

　詩と柚葉がこっちをじっと睨みつけて、はっきり言えよこの野郎と言わんばかりに訴えかけてくるのだ。

　でも、はっきりと「付き合っていない」なんて言えば袋叩きにされそうだ。

　だからと言って「付き合っている」と言えばそれが公認されてしまう。

　これは困った。

「……ええとねひなちゃん。まぁこういうことは当人間の問題だから、なんというか」

「言ってくださいよー」

「いやだからね」

「言わないとパンツ食わすぞ」

「え？」

「言わないとこの熱々のお肉あーんしますよー♪」

「あ、あははそれはやだなぁ……」

　気のせいだろうか。

　今とんでもないことを言われたような……

　それに、彼女の目が一瞬だけどとてつもなく恐ろしい目つきになってたような。

「あの、ひなちゃん？」

「はい、なんですかー？」

「い、いや……」

　気のせい、か。

　そうだよな。多分俺は疲れてるんだ。

　変態の相手をしすぎて目や耳がおかしくなってるに違いない。

　そう言い聞かせて、気を取り直してお肉をとろうとしたその時、背後からドス黒い声で

「今日はこの辺にしといたげる」

　と聞こえた。

　慌てて振り返ったが、そこにはニコニコと笑うひなちゃんがいるだけ。

　はふはふと、お肉を美味しそうに食べていた。

　……疲れてるんだな。

　今日は早く寝よう。