はじめまして、サポート妖精のサポヨさん - 2

 プレイヤーは最初の数日で、すっかり来なくなった。

 できたばかりの初心者ダンジョン、報酬もしょぼいのはわかっているし、割に合わないというのだろう。

 いくら罠もなく、敵もほとんどないと判明しても、僕だってこんなダンジョンに入りたくはない。


 しかしながらだ。


「サポヨさん」

「何です、小森さん」

「僕、AIとしてのお仕事、全然してない気がするんですけど」

「あー、まぁ……」


 そもそもダンジョンマスターがAIとしてプレイヤーと対峙するのは、プレイヤーが最奥まで攻めてきてからのラストバトルだ。

 そうなれば低レベルダンジョンマスターの僕は、わりと簡単に殺される。

 死ねば職を失うので、プレイヤーが来ないのは望ましい。

 つまり、AIとしてのお仕事をしていないのは、望ましいことなんだけど。


「これでお金貰ってもいいんですかね」

「うーん、まぁ実際、小森さんは契約通りにお仕事してくれただけですしね」


 それはそうなんだけど。


「私もここのサポート担当の業務は、グータラできて助かりますし」


 そう言ってもらえるなら、良いことにした。


 ダンジョンは放置すると成長するということで、ほとんどお客の来ない僕のダンジョンでも、何ヶ月も経てば改装増築用のポイントが溜まってくる。


 階層を増やしたり、環境を火山帯や雪山なんかにするのは高コストだけど、ダンジョンマスター用の娯楽施設や嗜好品はそれなり程度のポイントで購入できる。

 週に数回やってくるサポヨさんは、特にダメージもないのに医療ポッドを利用したり(感覚が癖になるらしい)、運営が版権を持っている旧式のアーケードゲームで遊んだり。

 端数ポイントで買ったお菓子やお酒を献上すると喜んでくれた。


「ゲームで遊んでいたらお給料が出るなんて、最高のお仕事ですねぇ」


 ニコニコしながら、スナック菓子の油でギトギトの手でレトロなSTGシューティングをプレイするサポヨさんは、たぶん、僕の業務内容については忘れている気がする。


 このお仕事を長く続けられるよう、僕は数時間走っても行き止まりしかないハズレルートに向け、低価格な罠を仕掛けていく作業に戻った。

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