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後ろの席の後野
「スリランカの首都」
「スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ」
まあ、これくらいは答えられるか。
小学生の時に、みんな覚えたしね。
「じゃあブルネイ・ダルサラームの首都は?」
「……バンダル・スリ・ブガワン」
うろ覚えだけど、それだった気がする。
「ピカソのフルネームは?」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ……デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス……クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ……サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」
私は全く覚えてないけど、この子が言うんだから、そうなんだろう。
そういうの覚えるの、昔から得意だし。
続けてもう一つ、自分が全く覚えてないのを聞いてみた。
「寿限無のフルネームは?」
「寿限無寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末……食う寝る所に住む所、ヤブラコージのブラコージ、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助くん」
くん、が可愛い。
「恵比寿駅の両隣は?」
「あー……渋谷と目黒」
そうなの? 乗ったことないけど。
「マウンテンゴリラの学名は?」
「ゴリラ・ゴリラ……ベリンゲイ?」
……あーっ!
そっか、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラは違うゴリラか!
知らずに引っ掛け問題を産み出してしまった……!
後何かあるかな。覚えにくいやつ。
「真!超絶竜巻真空斬のコマンドは?」
「6321463214+P……あ、ごめん。どの?」
どの? って何?
「ねぇ前野、これ、何?」
まだ眠いのか、薄目を開けた後野が問い掛けてくる。
何、ってこともないんだけど。
「逆に聞くけど、何なら覚えてないの?」
「歴代徳川将軍とか、トム・ハンクス主演映画を10個言えとか、あとあれ、2bc分のナントカみたいなやつ」
「すらすら出てくるなぁ」
意外と簡単に言えそうなのから、私も普通に言えないやつまで、バリエーションも豊かだ。
でも、これは後野が寝惚けていようが、はっきり覚醒していようが、変わらず答えられない質問なんだろう。
「覚えてなかった、ってのは覚えてるから」
何か名言みたいな、普通のことを言い出したので、私は鼻を鳴らしてみせた。
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