第15話
「それで、なにか強力な宝札はないの…!?」
私は感情的に、リュウゲンに詰め寄る。あの地獄に匹敵する苦しみを、何としても与えてやらなければ。
「う~ん…これとかどうかな」
リュウゲンは一枚の宝札を見せる。
「それは?」
「可視光反転の宝札だ。これを使われた人間は、青色を赤色に、赤色を青色に認識してしまう」
「…それ、何の役に立つの?」
「そうだなぁ…例えば、トイレのマークは青と赤だろう?それが逆に認識されるから…」
いやいやいや地味すぎる。間違って男子便所に入りやすくなるだけの宝札じゃないか。
「…他には?」
「う~ん、これなんかどうかな」
リュウゲンは懐から、新たに宝札を取り出す。
「水上歩きの宝札だ」
お、なんかよさそう。
「トイレとかが水浸しで、その上を素足で立ったら、なんかこう全身がビクッと震えるだろう?あの感覚が」
いやいやいや本っっ当に地味すぎる。本人何のダメージもないじゃないか。
「じゃあこれ!リンスとシャンプーが反対に」
「ああああああああああああ」
私の絶叫に怯んだのか、リュウゲンはひっくり返る。一流の浄霊師のくせに、どうしてこうも地味な宝札しか作れないのか、この男は。
「もういいわありがとう。あとは自分で何とかする」
私は背を向け、ここを後にしようとする。その時、リュウゲンが私に待ったをかけた。
「…仕方ない。これは自分が使うつもりだったから取っておいたんだけど、君に譲るよ…」
リュウゲンは同時に、宝札の説明を行う。説明を聞いた私の心が躍る。これだ、これならいける。
私はリュウゲンに駆け寄り、手から宝札を受け取ろうとする。しかし私の手を、リュウゲンは払った。
「これ作るの苦労したし、タダってわけには…」
「…触ったら、また蹴飛ばすわよ?」
「それでもいいんだけど…そうだなぁ」
リュウゲンは腕を組み、対価を考えているようだ。私は内心、何を言われるのかハラハラしていた。
「じゃあ触らないから、ちょっと上向いて」
「上?」
言われるがまま、私は上を見上げる。何の変哲もない、部屋の天井が目に入るだけだ。
「ぐへ。ぐへへへ。なるほどねぇぇ」
横から聞こえてくる気持ちの悪い声に身震いし、思わず視線を落とす。付近を見渡した時、私は絶句した。
いつの間にか床が全て、鏡ばりになっているではないか。そしてリュウゲンの視線は、鏡を通じて私のスカートの中部分に。
「なるほどねえぇ。青なんだヴァッハッ」
顔面目掛けてかかと落としをお見舞いし、地に叩きつける。釣り上げられた魚のようにピクピクしているが、命あるだけありがたく思ってもらおう。
私は床に転がり落ちていた宝札を手に取り、ここを後にした。
義妹に毒を盛られたので、きちんとお返しをしてあげようと思います 大舟 @Daisen0926
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます