第136話 不正な馬車業を営むビッグモード編!
俺は日々強化される3王妃からの監視と警戒の手から逃れ、今日も今日とてお城を抜け出して城下に繰り出していた。
「うまっ!? なにこれ、うまっ!? さすが話題になってるだけのことはあるな!」
人気の団子屋の話題の新作串団子をほおばりながら、復興事業によって綺麗に整備されたばかりの、大きな広場のある目抜き通りを特に目的もなく――おっとと、城下の特別視察をしながらブラつく。
「それにしても、さすがストラスブールだよな」
お城を抜け出すための最大の障壁だったフィオナの精霊探知は、ストラスブールに融通してもらった『精霊探知ジャマー』という精霊の知覚を欺く特殊な魔法アイテムによって無効化している。
先だってストラスブールに、超越魔竜イビルナークによって瓦礫と化していた宝物庫の調査と復旧、及び目録の作成をお願いしたんだけど、その時に偶然このアイテムを発見してくれたのだ。
ちなみに見かけは古めかしい儀礼用の短刀なので、勇者であり国王でもある俺が持っていても全然不思議ではないのが、実に都合がよかった。
「まさかこんないいものを見つけてくれるなんてな。しかもちょっと触っただけで使い方まで理解するんだから、ストラスブール様様(さまさま)だよ」
もしストラスブール以外の人間が責任者だったら、その価値に気が付かずに、ただの『いわくありげな短刀』として処理したことだろう。
持つべきものは1000年の時を生きると言われる博識の仲間である。
みんなも1000年生きる友人は大切にするんだぞ?
もちろんこのアイテムの存在がばれると没収されること間違いないので、アリスベルたちには言っていない。
俺は秘密のある男なのだ。
「まさか高位存在である精霊への対策がこうも早く完了しているとは、精霊を使役するフィオナも、直感力の鋭いアリスベルも、天才のリヨンも思うまいて。ふふふ、もはや今の俺は最強に無敵だ」
『精霊探知ジャマー』という新たな武器を手にした俺は、それはもう気分よく歩いていたんだけど、
「あれ? なんでこの店の前だけ街路樹も植え込みも生えてないんだ?」
街並の中の光景に、ふと違和感を覚えて足を止めた。
ビッグモードというお店の前だけ、街路樹も植え込みも綺麗さっぱりなくなっていたのだ。
「この広場周辺の道沿いは、全て景観のための街路樹を植えてあるはずだよな?」
俺はつい先日の、愛しの3王妃たちとの会話を思い出す。
以下、回想――。
その日も毎日のように大量の書類にひたすらハンコを押す作業に飽きた俺が、気分転換にリヨンの執務室に遊びに行ったところ。
ちょうどアリスベルとフィオナも居て、王都復興に伴う区画整理について、木を植えるだの植えないだのあーだこーだ議論をしていたのだ。
せっかくなので議論に参加してみる俺。
『木なんか後で植えたらいいだろ? とりあえず住むための家をたくさん立てようぜ』
俺が素人意見で適当なことを言ったら、アリスベルが苦笑しながら言った。
『まぁそーなんだけどね? でもまとめてセットで整備した方が、かなり安くつくんだよねぇ』
『おいおい、アリスベルらしくないな。お金よりも庶民の生活再建の方が今は大事だろ?』
『まぁそーなんだけどね? でもセントフィリア王国の国家財政は今、真っ赤っかだから、ケチれるところは徹底してケチらないと、そもそも国家運営が成り立たないんだよねぇ』
『これはケチったらいけないとこだろ?』
『ちなみにその場合、費用捻出のために勇者様のお小遣いは、長期間に渡ってさらに減額ということになってしまいますね』
『え? ええっ?』
『さすがクロウね。自らの身銭を切って国民に奉仕したいだなんて、まさに国王の鏡だわ。じゃあさっそく来月からお小遣いを減らしましょう。いえ、もういっそのことゼロにしたらいいんじゃない? お金がなければ、城を抜け出して遊び歩くこともないでしょうし』
『待て待て待てぇい!(;-ω-)ノ 今のなし! これ以上減らされたら、さすがに困るから! あとリヨン、さらっとゼロにしろとか言うなよな!? 泣くぞ!?』
『あら、泣くだけで済ませてくれるんだ。ならさっさとゼロにしましょう。ほら好きなだけ泣きなさい。ほら泣け早く』
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