第63話 SSSランク vs SSSランク
勇者の力で強化された俺の視力ですらかろうじて視認するのがやっとの、ものすごいスピードで迫りくる超越魔竜イビルナーク。
俺はその突撃をギリギリで回避すると、
「おおおおおおっっっっ! ジャスティス・ラグナロク・ブレイク!」
その首元にカウンターで必殺技を強烈に叩き込んだ。
『破邪の聖剣』から放たれた光の柱が、超越魔竜イビルナークに直撃して爆発する。
文句なしに完ぺきにとらえた一撃。
しかし。
そこにはまるでダメージを受けた気配のない、ケロッとした様子の超越魔竜イビルナークがいた。
「ったく、さすがはSSSランクだな、超至近距離で必殺技を喰らってもまったく意に介しないってか。だったら――!」
超越魔竜イビルナークの更なる攻撃――巨大な爪や太い尻尾、無数に生えた大きな牙による噛みつき、さらには巨体による体当たりなどなど――それらの一撃必殺の攻撃をかわしながら、俺は舞い踊るように戦い、勇者の力をさらに一段上へと高めはじめた。
「勇者スキル『破邪の神楽』発動!」
神に奉納する神楽を踊るがごとく舞うことで、勇者の力そのものにかかっているリミッターを外す儀式演武を開始したのだ!
俺の力がさらに膨大に膨れ上がっていく――!
『破邪の神楽』によってスピードとパワーを増した俺の攻撃が、超越魔竜イビルナークに次第に通り始めた。
超越魔竜イビルナークの身体を覆う強固な黒い竜の鱗。
それを破壊は出来なくとも、欠けさせ、ヒビを入れ、さらにはその内部に少しずつダメージを通していく。
グルグギャァァァァッッ!!
超越魔竜イビルナークは俺の猛烈な攻撃を嫌がるように巨体を暴れさせると、怒りに吠え叫びながらその巨大な翼をはためかせて天空へと飛び上がった。
だが――!
「人間相手なら空を飛べば逃げられるとでも思ったか? だったら悪いがそいつは考え違いだぜ! あまり勇者を舐めてんじゃねえぞ――!」
俺は超越魔竜イビルナークを追って、一気に空へと飛翔した。
そしてまるで地上にいるかのごとく、超越魔竜イビルナークと空中戦を戦い始めたのだ!
「覚えておけ! 勇者は空中でも何不自由なく戦闘機動がとれるってことをな!」
ここに来て超越魔竜イビルナークが初めて驚いたような顔を見せた。
まさか翼のない人間である俺が、自由自在で空を飛んで戦えるとは思ってもいなかったのだろう。
その凶悪な真紅の瞳が大きく見開かられる。
ここだ――!
俺は超越魔竜イビルナークが動揺している今この瞬間こそがチャンスと見て、
俺は自分の出せる限界まで力を高めると、嵐のような乱打で超越魔竜イビルナークをこれでもかと滅多打ちにしていく。
「おおおおおおおらぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
一瞬の隙を見て強烈に振り抜かれた『破邪の聖剣』が、ついに超越魔竜イビルナークの硬い竜鱗を砕き、その身体を深くえぐった。
グギャァァァァァァァッッッ!!
超越魔竜イビルナークが悲鳴のような甲高い咆哮をあげ身体をよじる。
「効いているっ!」
フルパワーでぶち込めば、竜鱗で守られた超越魔竜イビルナークの強固な防御も貫ける!
俺はさらに何度かその身体をえぐり刻むと、怒りと痛みに暴れ狂う超越魔竜イビルナークの上方に舞い上がった。
そして、
「堕ちろ――っ!!」
今日一番の渾身の力を込めた一刀をその背中へと叩きつけた!
そのまま一気に加速し、超越魔竜イビルナークの巨体を大地に向かって叩きつける!
勇者パワーを注ぎ込まれ
ドグォォォォォンッッ!!
天から打ち落とされた巨体が轟音とともに大地を砕いてクレーターを作り、周囲にもうもうと土煙が立ち込める。
俺は超越魔竜イビルナークの背中から飛び降りると、少し距離をとって様子をうかがった。
「ハァ、ハァ……どうだ? ハァ、やったか――くっ!」
その瞬間、俺は両足に勇者パワーを注ぎ込んで一気に右に飛びのいた。
その直後だった。
超越魔竜イビルナークから一直線に放たれた禍々しい漆黒の光の柱が、俺に向かって轟音とともに大地を抉りながら向かってきたのは――!
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