【それでも俺は】積年の腰痛が原因で国とパーティを追放された勇者、行き倒れていたところを美少女エルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する。「ありがとう、これで俺はまた戦える――!」【世界を救う】
第62話「勇者クロウ=アサミヤ、いざ参る――!」
第62話「勇者クロウ=アサミヤ、いざ参る――!」
俺はまだ50メートルほど距離のある地点で足を止めると、
「みんなはここで待っていてくれ。ここからは俺の――勇者の仕事だ」
仲間たちにそう告げた。
「クロウに言われなくても、もう私の呪符はすっからかんよ。魔王を討伐して以来5年間、書き溜めた『符』は全部使っちゃったわ。他でもないあなたのためにね。一応、帰り道の分はほんのちょっとだけ残してるけど」
「ありがとうリヨン。ここまで俺が完全に力を温存できたのは、ひとえに君のおかげだ」
「だったらわかってるわよね、絶対に勝ってきなさい。私の5年の努力を無駄な努力にしたら一生許さないんだから」
「もちろんだとも」
俺はそう言うと、いつもの毒舌がすっかり鳴りを潜めたデレ100%なリヨンの肩を、安心させるように軽く叩いた。
「ふぉっふぉっふぉ、頼んだぞクロウよ。ワシは防御結界を張ってリヨン殿やお嬢ちゃんたちを守らねばならんからの。援護までは手が回らん」
「こっちこそ頼んだよストラスブール。正直、回りを気にして戦ってはいられないだろうからさ」
「ふぉっふぉっふぉ、後ろは気にせず思う存分戦ってくるがよい」
ストラスブールがいつものヘンテコな笑いで後顧の憂いを絶ってくれる。
「勇者様、どうぞご無事で」
「ありがとうフィオナ。そこで俺の戦いを見届けてくれよな」
俺はフィオナを引き寄せるとそっと軽くその肩を抱いた。
「はい」
俺の腕の中でフィオナがこくんと頷いた。
そして俺は最後にアリスベルに向き直った。
「アリスベル、ちょっと行ってくるからな」
「うん」
「応援してくれな」
「当然だし」
「ああそうだ、それと約束を忘れないでくれよ?」
「え? 約束? 一体なんの話だっけ?」
「お、おい。これが終わったら結婚するって約束だよ、昨日の夜しただろ!?」
「あはは冗談だってば、ちゃんと覚えてる覚えてる」
いたずら成功って感じで、上目づかいで小悪魔っぽく笑うアリスベル。
なんだこいつ可愛すぎだろ。
「そんな、あ、あの、私も勇者様と結婚をしたいです……」
俺とアリスベルのやりとりを聞いて、フィオナがおろおろと不安そうな顔で口を挟んできた。
「もちろんフィオナさんと3人で結婚だよー」
「ほっ……」
それを聞いてフィオナが安堵の表情を浮かべた。
「ふふっ、おにーさんの甲斐性が試されるね」
「任せておけ、こう見えて俺は勇者だからな」
「それ関係ある?」
前にもやったことがある他愛ないやり取りに、思わず2人で噴き出してしまう。
とまぁそんな風に最後にアリスベルと軽口を言い合ってから、俺はフゥっと大きく一度息を吐くと、力強く宣言した。
「勇者クロウ=アサミヤ、いざ参る――!」
『破邪の聖剣』を抜くと、俺の戦意に反応してその刃がうっすらと白銀色の光を帯び始める。
仲間と恋人たちのいる場所から古代神殿遺跡へ。
その前にたたずむ巨大な黒竜――超越魔竜イビルナークの待つ場所へと、俺は薄銀に輝く『破邪の聖剣』を片手に一歩一歩進んでいった。
俺の中でSSSランクの強大な力が高まっていくとともに、超越魔竜イビルナークの視線が「なんだこいつは?」と見下ろすように俺を捉える。
俺の勇者パワーの高まりに反応した『破邪の聖剣』が、邪悪なる者たちが嫌う波動をゴリゴリと放出しているからだ。
俺はさらに『破邪の聖剣』の力を解放する。
「アンチ・バースト・システムを解除、全リミッター開放。『破邪の聖剣』ファイナル・ラグナロク・モード発動」
これまで静かな輝きを湛えていた『破邪の聖剣』が、まぶしい程の猛烈な光を帯びはじめ、それを見た超越魔竜イビルナークの真紅の瞳が、凶悪な敵意に彩られていく。
「SSSランクを相手にするんだ、こっちも最初から全力で行かないとな!」
事ここに至って、超越魔竜イビルナークは完全に俺を敵と認識したようだった。
「ははっ、ものすごい敵意だな。視線を向けられただけでビリビリ来るぜ。さすが超越魔竜イビルナーク、神話を終わらせた黒き邪竜だ。相手にとって不足はない、さあ、どっちが上か決めようぜ?」
俺はあと15メートルほどの位置から一気に駆けだした。
応じるように超越魔竜イビルナークも翼を広げて猛烈に加速すると、その巨大な身体ごと突っ込んでくる。
最強存在たるSSSランク同士の雌雄を決する戦いが、今ここに幕を開けた――!
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