第48話 勇者パーティ時代の話(昔話)
~今から5年前~
「ふぉっふぉっふぉ、いかに魔王の四天王・SSランク炎帝スザクの自爆奥義と言えど、このワシの全力の防御結界をそうやすやすと抜けると思うでないぞ?」
激しい爆発が巻き起こった瞬間、エルフの大仙人ストラスブールが持てる全ての力を使って構築した強力な防御結界が発動した。
「助かったよストラスブール!」
危機一髪、すんでのところで結界の中に逃げ込んできた勇者クロウが、ふぅと小さく息をはく。
「ふぉっふぉっふぉ、無事で何よりじゃよ。敵も魔王の四天王、ただでは死なんということじゃの。敵ながらあっぱれ、おかげで力がすっからかんになってしもうたわい」
そんな勇者クロウをねぎらうように、大仙人ストラスブールが独特の笑い声とともに優しく微笑む。
つい先ほど、勇者クロウは四天王である炎帝スザクを見事に討ち取った。
しかし勝負を決めた渾身の一撃がほんのわずかに浅く、わずかに残った力を振り絞った炎帝スザクに、大爆発する自爆奥義を使われてしまったのだ。
それをエルフの大仙人ストラスブールが、全力の結界を張ることでなんとか防御してくれたのだった。
そんな風にホッと一安心していたクロウに、
「ちょっとクロウ、あなた最後ミスったでしょ。ちゃんと一撃で仕留めておけば自爆奥義を使われることもなかったわよね? おかげでこの私の美しい前髪が少し焦げちゃったじゃない、どうしてくれるのよ?」
先に結界の中に逃げ込んでいた符術師リヨン――『符』と言われる特殊な文字を書き込んだ紙を使って戦う妙齢の女性だ――が、美しい黒髪の前髪をいじりながら文句を言った。
「悪いリヨン、ほんのちょっと踏み込みが浅かったみたいでさ……」
勇者クロウは剣を持っていない左手をあげて、符術師リヨンにごめんなさいをする。
「ふぉっふぉっふぉ、全員大きな怪我をすることもなく、四天王最強と言われる炎帝スザクに勝利したのだ。少々髪が焦げたくらいよいではないかリヨン殿」
「何を言うのストラスブール、髪は女の命なのよ。つまり私は今、命の危機にあったわけ。1000年も生きてきて大仙人なんて呼ばれているのに、あなたはそんなこともわからないのかしら?」
「長く生きてわからんということはつまり、リヨン殿が思うほどには大事なことではないのではないかの?」
「開き直ったわね? 無知は恥と知りなさいな。無知であることを自慢するようになったらおしまいよ」
「ふむ、無知の知というやつじゃの。いやはや、これは一本取られたわい。さすがはリヨン殿じゃ。このストラスブール、心より感服しましたぞ」
「あなた褒めてるようで実は馬鹿にしてるでしょ」
「はて、なんのことだかの? リヨン殿の頭の回転が速すぎて、ワシのような老いぼれにはなかなかついていけぬ。やれやれ年は取りたくないものよのぅ」
「ああ言えばすぐこう言うくせに、よく言うわね。ほんとまったく食えない爺さんなんだから」
「まぁまぁ、次はちゃんと上手くやるからさ。とりあえずは勝ってよかったってことで」
いつものように飽きもせず口喧嘩(?)を始めた大仙人ストラスブールと符術師リヨンに、勇者クロウが取りなすように割って入った。
「ともあれこれで残るは魔王だけだ。俺たちの宿願はもうすぐそこだ。魔王はSSSランク、よりいっそう慎重を期して戦おう」
さらに今まで我関せずで黙ってやり取りを見ていた戦士ダグラスが、『星降りの剣』を鞘に納めながら涼しい顔で話をまとめた。
1000年の長き時を生きるエルフの大仙人ストラスブール。
ちょっと口が悪いけれど実はとても仲間思いな符術師リヨン。
凄腕の戦士ダグラス。
そして人類の希望である勇者クロウ。
5年前、4人の英雄たちは勇者クロウを中心に勇者パーティを結成し、世界を滅ぼさんとする魔王に挑み、ついにこれを討伐したのだった――。
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