第47話 ~アリスベル&フィオナSIDE~ 女子会

「ねぇねぇフィオナさんって、おにーさんのどこが好きなの?」


 アリスベルがフィオナに尋ねた。


 場所はフィオナの家で、パジャマ姿で二人きりというシチュエーションである。


 フィオナは普段は騎士団の兵舎で生活しているのだが、帰宅許可をもらったので親睦を深めるために、アリスベルとお泊り女子会を開催したのだった。


 当然クロウは男なのでいない。

 アリスベルの家で一人で留守番をしている。


『男女平等が俺のモットーだ! 俺は勇者だからどんな差別もしない、させない、もちこませない!』

 とかなんとかもっともらしいことを言って、クロウは一緒にお泊まりしたそうにしていたけれど、


『女子会だって言ってるでしょ、おにーさんはノーサンキューだから』

 アリスベルは容赦なく置いてきたのだった。


 特に心配はしていなかった。

 食材はちゃんと置いてあるので、適当に料理を作って食べているはずだから。


 ああ見えてクロウは勇者パーティで長く旅をしていただけあって、料理も洗濯も片付けも皿洗いも割と上手なのだ。

 アリスベルが接骨院で仕事をしている間も、いろいろと家事を代わりにやってくれているし。


 それはさておき。


「敢えてどこがと言われると困るのですが……おおむね全部でしょうか」


 フィオナが少し照れたようにはにかみながら言って、


「そーゆうふんわりとした答えはこの場ではノーサンキューです、腹を割って話しましょう。そういうわけなので、おにーさんの特にいいと思うところを具体的にお願いしますね」


 アリスベルはすかさずダメ出しをした。


 ちなみにアリスベルから見ても、はにかむフィオナはとても可愛らしかった。


 普段は物静かでクールな表情をしているフィオナが、ふとした拍子にポロっと表情を崩すとそのギャップに胸がきゅーんと来てしまうのだ。


 これはさぞかしモテるだろうなと、同性であるアリスベルからみても納得のフィオナの可愛さなのだった。


「そうですね……一番はやはり正義を愛する心でしょうか。当たり前のように人助けをする精神性は、騎士として畏敬の念を抱かずにはいられません。これが勇者の在り方なのかと、その気高い生き方に惚れ惚れしてしまいます」


「おにーさんが気高いかどうかは正直微妙なところだけど、フィオナさんの言うとおり、おにーさんはどこに出しても恥ずかしくない正義の人だよね。誰かのために自分の力を使うことにまったく疑問を感じてないっていうか」


「はい、まさに理想を絵に描いたような勇者の在り方で、とても素敵だと思います」


「まぁ一部を除いてそうだよね……それで他には?」


 ちなみに一部とはもちろんえっちっちなところである。

 あれはどこに出してもダメなやつだった。


「他には、やはりものすごく強いところでしょうか。先日もSSランク4体を同時に相手して勝ってしまいましたし」


「SSランクって強いの?」

 アリスベルが小首を傾げる。


 アリスベルは戦闘に関してはずぶの素人なので、SSランクと言われてもイマイチピンとこないのだった。


「SSランクといえば、魔王の四天王と同レベルの相手です」


「魔王の四天王!? 強そう!」


「はい強いんです。そしてそんなSSランクを4体も同時に相手にして、第一騎士団の精鋭部隊が簡単に壊滅させられるような相手だというのに勝ってしまうんですから、それはもう本当に強いんですよ」


「アタシは戦いのことはわからないんだけど、やっぱり騎士の人から見てもおにーさんって別格に強いんだ。セントフィリア王国で俺は一番強いんだって、なんか自分で言ってたけど」


「もう強いという言葉で評するのが失礼に思えるくらいに、圧倒的に強いですね。おそらく勇者様がその気になれば、セントフィリア王国を滅ぼすくらいは余裕でできるのではないかと」


「うわっ、そこまでなんだ……」


「それをしないのはひとえに勇者の力を正しく使うことを、勇者様自身が厳しく律しているからだと思います」


「普段の言動からは全然そうは見えないのにね……」


 アリスベルの中のクロウは品行方正な勇者というよりかは、人がマッサージをしてあげているというのに、あろうことかちん〇んをオッ立てて、しかも見せつけてくるようなえっちっちな変態であった。


「はい、それほどの比類なき力を持ちながら、普段はまったく偉ぶるところがないのが、勇者様のこれまた素晴らしい魅力だと思います」


「フィオナさんはおにーさんにぞっこんなんだねー♪」


「そういうアリスベルさんは、勇者様のどこが好きなのでしょうか?」


「うーん、それはもちろん全部かな?」


「……その答えはずるいです、アリスベルさん風に言うとふんわりしていてノーサンキューです」


「冗談だってば。おにーさんのこと全部好きなのはほんとだけど、一番好きなところはやっぱり――」


 同じ相手を好きになった二人による赤裸々な女子会は、深夜のハイテンションも相まって未明まで大いに盛り上がったのだった。


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