第45話  二人の未来へ~ダブル・ジグザグの道

 桐哉さんが立ち上がって、窓辺に向かった。そして、景色を見つめながら私を手招きした。そっと私は歩いて行って、彼に寄り添った。いつの間にか太陽は西に傾いていた。夕焼けを見ながら、私は桐哉さんのベストの模様を指でなぞった。

「素敵なアラン。模様はダブル・ジグザグですね」

「そう。アラン諸島の断崖を表しています。意味は……」

「夫婦が一緒に素敵な人生を歩む」

 同時につぶやいた、アランの意味。桐哉さんが私を引き寄せた。私は桐哉さんの胸の中に包まれた。彼は、これまで私が聞いた中でもっとも優しい声でささやいた。

「愛しているよ、結」

 いつまでも私たちは窓辺で抱き合っていた。夕空の向こうには、秋の透明な月、そして二人の久遠が待っていた。

(了)


【あとがき】

 ここまで読んでいただきありがとうございました。結と桐哉の恋愛を楽しんでいただきましたら幸いです。

 結はきっと、この後留学して腕を磨き、桐哉というパートナーを得て、オリジナルブランドを立ち上げるのでしょう。それは、日常の何気ない「好きなこと」「趣味」から始まったシンデレラ・ストーリーでした。

 好きなことを地道にやっていると、不思議と素敵なご縁に恵まれるものです。そして、桐哉の言うように、チャンスの女神は前髪しかなく、自分でつかみにいかねば納得できる素敵な人生は訪れない。独自の編み物哲学を持つ結には、その覚悟がありました。

 自分の未来に絶対に必要な人が現れたなら、それは男女問わず、恋愛友情問わず大事にしたいものです。そんなメッセージを込めています。

 重ねて、あなたとのよい出会いに感謝申し上げます。


猫野 みずき 拝

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Marriage Knot 猫野みずき @nekono-mizuki

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