アリス～紅の華～

おわりに

　ハートの女王（じょうおう）を夢（ゆめ）の世界（せかい）から助（たす）け出（だ）す事（こと）ができたアリス達（たち）はしばらくの間穏（あいだおだ）やかな生活（せいかつ）をしていた。

「アリス。わたくし変（へん）じゃないかしら？」

「大丈夫（だいじょうぶ）よ。ウェディングドレスとっても素敵（すてき）よ。自信（じしん）もって」

真（ま）っ白（しろ）なドレスに身（み）を包（つつ）んだハートの女王（じょうおう）が頬（ほほ）を赤（あか）らめながら尋（たず）ねる。それにアリスはにこりと笑（わら）い答（こた）えた。

「女王様急（じょうおうさまいそ）いでください。もうダイヤの王様（おうさま）は式場（しきじょう）に向（む）かわれましたよ」

「あら、もうそんな時間（じかん）なの。アリス、また後（あと）でね」

「うん」

メイドの言葉（ことば）に彼女（かのじょ）は慌（あわ）てて支度（したく）をすませるとアリスにそう言（い）って部屋（へや）から出（で）ていく。その後（うし）ろ姿（すがた）をおかしそうに見送（みおく）るとアリスも部屋（へや）から出（で）た。

「いよいよダイヤの王様（おうさま）との結婚式（けっこんしき）が始（はじ）まるんだねぇ」

「そうね。招待状（しょうたいじょう）を送（おく）った人達（ひとたち）ちゃんと来（き）てくれるといいのだけれど」

式場（しきじょう）になるダイヤの国（くに）の王宮（おうきゅう）へとアリスがやって来（く）ると先（さき）に着（き）て準備（じゅんび）をしていたいもむしが嬉（うれ）しそうに話（はな）す。

彼女（かのじょ）はそれに答（こた）えると不安（ふあん）そうに道（みち）の先（さき）を見詰（みつ）めた。

「心配（しんぱい）はいらないんじゃない。ほら」

「あれはクローバーの国（くに）の国旗（こっき）。それにスペードの国（くに）の国旗（こっき）も見（み）える」

心配（しんぱい）する彼女（かのじょ）へと耳（みみ）をぴくぴく動（うご）かしながら時計（とけい）うさぎが言（い）って遠（とお）くへと指（ゆび）さす。

よく見（み）える目（め）でチェシャネコが二国（ふたこく）の国旗（こっき）を捉（とら）えるとそう伝（つた）えた。

「お嬢様良（じょうさまよ）かったですね。スペードの国（くに）の女王様（じょうおうさま）とクローバーの国（くに）の王様（おうさま）。それに皆（みな）さんがちゃんといらしてくださって」

「ええ」

見（み）えてきた行列（ぎょうれつ）の先（さき）にはスペードの国（くに）の女王（じょうおう）に仕（つか）える四天王達（してんのうたち）の姿（すがた）や小（ちい）さな輿（こし）に乗（の）って興味深（きょうみぶか）げにあたりを見回（みまわ）す魔女（まじょ）ちゃまと魔法使（まほうつかい）いちゃまの姿（すがた）もあった。

クローバーの国（くに）の魔導士達（まどうしたち）やアリス達（たち）を窮地（きゅうち）に追（お）いやったあの凄腕（すごうで）の傭兵（ようへい）の姿（すがた）もちゃんとあり招待（しょうたい）した人全員（ひとぜんいん）が来（き）てくれた様子（ようす）にアリスは嬉（うれ）しくて微笑（ほほえ）む。

それからすぐに結婚式（けっこんしき）は始（はじ）まり白（しろ）のタキシード姿（すがた）に身（み）を包（つつ）んだダイヤの王（おう）に手（て）を引（ひ）かれながらハートの女王（じょうおう）は厳（おごそ）かにバージンロードを歩（ある）く。

アリス達（たち）に祝福（しゅくふく）され二人（ふたり）は新（あら）たな門出（かどで）をむかえる。ダイヤとハートの国（くに）は国（くに）としてはそのままでお互（たが）い国主（こくしゅ）として生活（せいかつ）しながら徐々（じょじょ）に混合（こんごう）していくという形（かたち）をとることとなった。

さらにスペードとクローバーの国（くに）の王（おう）と女王（じょうおう）も新（あたら）しい家族（かぞく）の形（かたち）として男同士（おとこどうし）だが結婚（けっこん）し国同士（くにどうし）は融合（ゆうごう）することとなたようで、その知（し）らせを聞（き）いたアリス達（たち）は驚（おどろ）いたのは言（い）うまでもない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おわり