第7話【帰ってきたのは若き騎士】
ゴーリキの襲撃を受けてから早数日は経った。それからもゲンムの襲撃はなく、僕も皆も仕事やギルドの依頼をこなす日々を送っていた。もちろんその合間合間にはミサトさんとの稽古だってある。
例え平和であっても忙しい日常を送っている事には変わらない。そんなある日の事…………。
「それで………姫さんのお抱えの凄腕の騎士様って言うのが今日王都に帰ってくると……」
「うん、昨日来たオリヴィアさんの使いの人がくれた手紙にはそう書いてあったよ」
この日は朝の稽古を終えた後は珍しく仕事の依頼も無く、僕もシン
無論、いつゲンムが襲ってくるか分からないものの思いつめてばかりいても何も始まらないし何より休める時にしっかり休んで置くものだと爺ちゃんが昔言っていた事もありこうして体を休めているのだ。
「手紙にはその騎士さんが僕達に協力してくれる様に話はつけてるって書いてあったよ」
「そうか………しかしその騎士は一体どんな奴だか」
「オリヴィアさんも大分信頼してるみたいだし、きっと良い人じゃないかな」
と、僕は考えている。なんでもオリヴィアさんが言うには騎士としての位は低いけれども剣をひとたび手に取れば誰よりも強く、人柄も良く最も頼りになれる人だそうな。
そんな人が帰ってくるのであれば今頃城の方ではお迎えの準備とかしているのかなと思った。
「ところでナオ、今日はこの後何か予定とかあるのか?」
「ん?特にないからアレだったら買い物にでも行くか行かないかってとこだけど………」
「それだったら釣りにでも行かないか?偶には男同士で出掛けるのも悪くないだろ」
「いいね!だったらすぐに行く支度しよう」
と、言うことでシン
そしてすぐに支度を済ませてシン
シン
「シン
「それもそうだな………じゃあここいらで引き上げるとするか」
「了解!」
僕が道具の片付けをし始めたその時だった。
「お、帰るのですか?」
先程から僕らの近くで釣りをしていた黒い長髪の男性が声を掛けてきた。とりあえず軽く返しておこう。
「ええっ、それなりには釣れたので………そちらどうですか?」
「いやぁ、こちら全然ですよ」
「そうですか、それじゃあ失礼します」
軽く会話を交わしてから僕とシン
「ナオ、さっき釣り場で話しかけてきた奴の事だが何か気づかなかったか?」
帰りの途中でシン
「釣り場にいたあの人の事だよね………確かにこの辺りでは見かけない人だし物腰の柔らかそうな人みたいだったけど何か凄みと言うか引っ掛かりを感じたかな」
「やっぱりお前もそう思ったか」
「と言うと?」
「俺もあいつにはただならぬ殺気みたい物を薄々感じていた、もしかしたらまた"ゲンム"の手先かもな」
「確かに………、その可能性も十分にあり得なくないかも………」
僕はまさかそこまで………と、一瞬思ったけれどもこの前のゴーリキの件もあったのでシン
そしてそうこうしてるうちに僕らは家に到着したのだけど………
「………?誰だろう、あの人」
なんと僕達2人の家の前で見るからに旅の剣士の男の人がいた。見た感じはシン
ひとまず声を掛けてみようとしたがシン
「あの、コチラに何か御用でしょうか?」
「あ、実はこの家の鍛治師の腕が良いと聞きまして………」
「俺がその鍛治師ですが……」
「オォ、そうなのですか!」
「ここで立ち話もあれですし要件があるので中でお伺いしますよ」
シン
「此方は粗茶ですがどうぞ」
家に入った僕はすぐにお茶とお菓子を用意して旅の剣士さんにお出しした。
「これはどうも」
「ところで、旦那は何処のどちらさまで?」
と、シン
「自己紹介がまだでしたね、俺の名はレオン。ご覧の通りの旅の剣士です」
「そうですか………しかし、うちの店の事は一体誰からお聞きに?」
「はい、数日前に立ち寄ったユーフェス村でテビエというご隠居様からこの鍛冶屋は知り合いで腕が良いとお聞きしたもので………」
「爺ちゃんから!?」
レオンさんの口から爺ちゃんの名前が出たので思わず声を出して驚いてしまう。
「と、すると………君がテビエさんのお孫さんか……」
「はい!ナオ・クレイフといいます……それで爺ちゃんと婆ちゃんは元気でしたか!?」
僕はその場の勢いでつい質問してしまった。
「はは………テビエ殿もゴルテさん元気だったよ。もし王都に行って孫に会う事があったらよろしくと伝えてくれと頼まれていてね」
「そっかぁ………爺ちゃんも婆ちゃんも元気なんだ」
レオンさんから爺ちゃんと婆ちゃんが元気な事を聞いて何だか安心した。何しろこっちは色々と狙われてたりもしているから親類である爺ちゃんと婆ちゃんが狙われる可能性も十分あり得るからだ。
それは逆に言えばゲンムは間違いなく僕の周りにターゲットを絞っているとう事にもなる。ともあれいつ狙われるか分からないから気をつけなければ………そしてそうこうしてる内にいつのまにかレオンさんとシン
シン
「---なるほどなるほど、これは想像していた以上に良く出来ている。シンさん、もしよければ今度からこちらで武器の作成の注文をしても大丈夫かな?無論支払いはちゃんと払うしそちらがよければという前提だが………」
「それは別に構いませんが………こちらにしてもお得意様が1つ増えるとなると生活的には助かりますので」
「そうか、なら今後ともよろしく頼む!」
こうして、2人の間で商談が成立したのであった。
それから2日後程………。シン
そしてレオンさんの話をしたら興味を持ったミサトさんも護衛を兼ねて来る事になった。無論、敵が何処から襲って来るか分からない事もあってだが………。
「それにしてもレオンさんの住んでる屋敷………随分遠いね」
そう、地図が差しているレオンさんの屋敷の場所が王都から少々離れていた場所にあったのだ。お陰で運ぶのにも一苦労でもある。
「なぁに、向こうの家にも色々と事情があるんだろうさ。私の国でも似たような例があったさ」
「そうなんですか?」
ミサトさんはフォローに入る。
「そんなもんさ、それにこちとら伊達に一人旅で色々と見てきた訳じゃないしな」
なるほど、流石はミサトさんだと僕は感心した。そしてそんな時である。
「ーーーー!?」
シン
「2人とも!」
「皆まで言わなくとも分かってる………この気配はまた"奴ら"だな」
僕達はそれぞれ武器を取り出して戦闘体制に入った。そして辺りからゲンムの放った刺客達が僕らを取り囲む様に姿を現した。
「おいでなすったか………さてまずは私から行こうとしますか」
「待て!」
ミサトさんが前に出て先に仕掛け様としたとした時、ゲンムのうち1人が前に出て止めに入った。それは数日前に釣りへ出かけた時に出会った旅の剣士さんだった。
「あんたはあの時の剣士さんか………もしやと思っていたが案の定か!」
「我が名はゲンム四幹部の一人、黒騎士クレフ………貴公らに怨みは無いが我が組織の為此処で始末させてもらう!」
クレフは僕ら相手に堂々と啖呵を切った。
「シン………ナオ坊………あのクレフとかいう奴は間違いなく今までの奴らと違う……私があいつを抑えてる間に2人は雑魚を頼む」
「わかった。だが1人で大丈夫なのか?」
「さあな………恐らく互角ぐらだろう。だが間違いなくナオ坊の手に負える相手じゃない……シンは雑魚を頼む」
「わかった」
「ナオ坊は隙をみて魔封の笛を使え」
「うん、2人とも気をつけてね」
僕は大地の
「覚悟は出来ているようだな………それでは者共、行くぞ!」
クレフは部下に僕達を襲わせる様に指示をする。僕らも敵の攻撃に合わせて立ち向かう。だがその時、突然どこからともなく謎の集団が現れクレフ達の方に襲い掛かってきた。
「ーーーな、なんだ?」
謎の集団は僕らに目もくれずクレフ率いるゲンムと戦う。僕らは突然の事で戸惑うばかりだ。
「何とか間に合ったみたいだね」
「ーーーその声は………」
声のする方に振り向くとそこにはレオンさんがいた。
「レオンさん!?どうして此処に………」
「すまない。実は奴らを誘き出す為に君らを少々利用させてもらったんだ」
「えっ!?」
「だが俺達は君達の敵じゃない。それだけは覚えておいてくれ」
そう言ってレオンさんは自身の剣を抜きクレフの前に立ちはだかった。
「クレフとか言っていたいたな………彼らの代わりに俺が相手をしよう」
「いいだろう………だがその前に貴様の名は何という?」
「我が名はレオン・ラーハルト!マリフィス王国に仕える騎士の1人にして影の騎士団の団長を務める者なり!!」
「レオン・ラーハルトか………相手にとっては不足はない、行くぞ!」
そしてレオンさんとクレフの一騎討ちが始まった。両者とも、実力は互角で激しく互いの剣を斬り結ぶ。
「ナオ、ボケっとするな!」
シン
「シン
「気を抜くな、まだまだ来るぞ!」
「うん!」
僕らはレオンさんの仲間が捌ききれなかった相手と戦う。
「ハァハァ………レオンとか言ったな………まさかお前の様に腕の立つ相手がまだこの国にいるとは………」
「それはこっちの台詞だ。貴公みたい者がいるとは思わなかったぞ」
「と、するとお互い様という訳か………貴様との決着はまたの機会につけるとしよう。者共、撤退するぞ!」
クレフが撤退の命令を出し。この場にいたゲンムの者達は姿を消した。
「皆、無事か?」
レオンさんの所に配下の人達が集まる。どうやら死傷者は出なかったみたいだ。
「どうやら怪我人も出てない様だな………よし、皆は先に撤収してくれ。俺は彼らを屋敷までに案内する。ちょうど"姫様"も居られる事だしこれ以上待たせる訳にも行かないしな」
「了解!もし何かあればすぐに呼んでくださいな」
レオンさんの指示により配下の人達はこの場から撤収した。そしてレオンさんは一人でこっちの方へと来る。
「さてと………色々と言いたい事があると思うが改めて俺自らが屋敷まで案内する。それでいいかな?」
元々はレオンさんに依頼された品を届ける為にレオンさんの屋敷に向かう途中だったので断る理由もなく、当然ついて行く事にする。
レオンさんの屋敷で何が待ち受けているのか、この時の僕らには知る由もなかった。
召喚術師は笛を吹く クドウ @kodou_001
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