第2話

 あれは帰り道、文芸サークルの出店が終わった冬。一冊も手に取ってもらえなかった。大学で文芸サークルに所属すると、必ず一人一冊作品を発表する決まりになっている。自信作だった。けれど見向きもしない。結局そのまま出店は終了。余りの悔しさに神頼みしたのだ。名前も知らぬさびれた神社で。


「神様、どうか俺に物書きの才能をください」


そのせいでこいつが憑くことになってしまったのだ。疫病神のようについて回ってくる。小説を書けと何でも催促してくる。確かに小説をうまくなりたいという気持ちはあるが、鬱陶しい。


「ああ、あんたが何考えているかなんてお見通しよ。どうせ厄介な奴だなー、って思っているんでしょうけどご生憎様。残念ながらあなたは書くしかないのよ。それしか生きる道は残されていないわ」


そうなんということだろうか。実はあの日お祈りした神社は曰くつきの呪い付き神社だったのだ。そこでお願い事をしようものなら、稀に願いが叶うらしいが、ほとんどは不幸に見舞われると街で噂だ。嘘だと思って無視していたら、一週間不幸な目にあい続けた。そんな調子で信じるしかなくなったのだ。

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幽霊に小説を書く話 @amabesayo

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