幽霊に小説を書く話
@amabesayo
第1話
『うららかな日差しの中、風が花を散らす。新芽の香りが鼻をくすぐる。まだ冬が明けきらず肌寒い四月上旬、』
「あー、もうつまらなそうだよ」
そういって真上から青白い手が伸びてくる。書いていた原稿用紙を取り上げビリビリに引き裂いた。
「おい、ちょっと。まだ書いている途中でしょうが」
「いや、なんでお決まりのように季節の描写から始まっちゃうのよ。そんなありきたりな小説らしいものなんて読みたくないんですー。だいたい、いつもいつもそういう書き出しする奴って自分の作品を芸術か何かと勘違いしているのよね。」
「う、うるせぇ…。こっちだって好きでこんな書き出しにしているわけじゃねえよ」
「じゃあ、単に才能がないだけね」
「そう非道いこと言うなって…。そんな読者をひきつけるような掴みなんてそう簡単に書けねえよ」
「それはあんたが何も考えてないからでしょうが。端から諦めて駄文を書き連ねるつもりでしょう。だいたいプロなら簡単に書きだすことができるだろうって考えが透けて見えて嫌だわ。彼らだってあれこれと考え抜いているのに、才能だけじゃなくて努力する気概も足りてないわね」
頭上から透き通った声で散々罵られる。これで何度目だろうか。出だしから書いては消し、書いては破られ。それもこれもこいつのせいだ。あの時あんなことをお祈りしなければ…
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