ビデオレコーダー
@momonohana_
第1話
深夜、自分の手元すらよく見えないほど暗い時間。女は一人部屋でたそがれていた。今日彼女は三年付き合った男に振られた。理由は、他に好きな人ができたから。
何がいけなかったのだろうとぼんやりと考えていた。
惰性だけで息をしていた。すると、女の家にあるビデオレコーダーが音を立て始めた。電源など入れないのに。
不思議だと思ったが、それ以上にその音が心地よかった。無機質な機械の一定のリズム、母親の鼓動のような温かな音、そこで女はふと気がついた。
このビデオレコーダーは愛を語りかけていた。
彼女はこれまで、何度か口説かれたことがあったがビデオレコーダーに愛を語られたの初めてのことだった。
咄嗟に、何かを言わなければと思ったが果たしてビデオレコーダーに自分の言葉は通じるのだろうか。女は思いとどまり、ただずっとビデオレコーダーが掻き立てる愛の言葉を聞き続けた。
目が覚めると朝で、ふんわりとした朝日が部屋を照らしていた。
ビデオレコーダーは静まりかえっていて、女は「私の言葉でも通じたのかもしれない」と思った。
ビデオレコーダー @momonohana_
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